著者
福中 彩子 山崎 智弘 藤原 奈央子 増田 誠司
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.90-100, 2008-02-01 (Released:2010-12-24)
参考文献数
31

高等真核生物では,タンパク質をコードするmRNAは,核内で合成され,5' 末端のキャッピング,スプライシング,3' 末端のポリアデニル化といったプロセシングを受けることで,成熟したmRNAとなる.成熟mRNAは,核膜孔を通過して細胞質に移動し,タンパク質翻訳の鋳型となる.この際,mRNAに不都合があればタンパク質をつくることなく分解される.一方,翻訳の鋳型として働いたmRNAも,最後には役目を終えて分解される.これらの過程に関わる因子と,各過程を共役する因子が同定されたことによって,mRNAの生合成から分解までの全体像が少しずつ明らかになりつつある.遺伝情報の伝令役であるmRNAが生合成されてから分解されるまでを,最新の知見を織り交ぜて紹介する.
著者
永尾 雅哉 増田 誠司 佐々木 隆造 増田 誠司 永尾 雅哉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

エリスロポエチン(EPO)は赤血球の前駆細胞に作用して、その増殖・分化を促進することで赤血球量を調節するホルモンである。しかし、意外にも血管内皮細胞に作用して、その増殖を促進することが明らかになってきたため、性周期にともなう子宮内膜の肥厚の際に見られる生理的な血管形成にEPOが関与している可能生について検討した。そして実際にEPOが血管形成促進因子として機能することを突き止めた。そこで本研究では、子宮におけるEPOの発現制御機構に対して検討すると同時に、他の生殖器官におけるEPO産生についても検討した。以下に成果を列挙する。1.子宮におけるEPOの産生制御は主としてエストロゲンによって行われている。低酸素刺激のみでは産生は誘導されず、エストロゲン投与時にのみ低酸素による誘導が観察された。2.子宮ではエストロゲンによって一過的にEPOの産生誘導が見られるが、これはエストロゲン受容体がダウンレギュレーションされるためと考えられた。3.腎臓や脳においては、子宮とは異なり、エストロゲンではEPO mRNAは誘導されず、低酸素により誘導された。但し、腎臓では低酸素で一過的に誘導されるのに対して、脳では低酸素が続く限り、EPO mRNAは高レベルを維持した。この結果は、腎臓で産生されるEPOは赤血球量の調節に、脳のEPOは神経細胞死の防御に用いられるため、その機能を非常によく反映した制御機構であると理解できた。4.卵巣、卵管においてもエストロゲン依存的にEPOの産生が見られたが、特に卵管峡部で発現が高かった。5.精巣および精巣上体でも低酸素誘導性のEPOが産生が見られることを発見した。また、性成熟に伴い精巣上体でのEPO産生が劇的に上昇することが明らかになった。