著者
永尾 雅哉
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

Marrubium vulgareという植物の抽出液中に6-octadecynoic acid (6-ODA)という三重結合を有する珍しい脂肪酸見いだしたため、その機能について解析した。まず合成により量を確保した上で、核内受容体のPPARγのアゴニストとして機能し、前駆脂肪細胞の分化系を用いて、脂肪蓄積促進活性があることを確認した。また、GPR40という別の細胞膜に存在する受容体を介して、膵臓β細胞株であるMIN6において用量依存的にインスリンの分泌を促進することを見いだした。また、飽和脂肪酸であるパルミチン酸の脂肪毒性による小胞体ストレスの誘導に対して保護的な効果を示すことを見いだした。
著者
永尾 雅哉 増田 誠司 佐々木 隆造 増田 誠司 永尾 雅哉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

エリスロポエチン(EPO)は赤血球の前駆細胞に作用して、その増殖・分化を促進することで赤血球量を調節するホルモンである。しかし、意外にも血管内皮細胞に作用して、その増殖を促進することが明らかになってきたため、性周期にともなう子宮内膜の肥厚の際に見られる生理的な血管形成にEPOが関与している可能生について検討した。そして実際にEPOが血管形成促進因子として機能することを突き止めた。そこで本研究では、子宮におけるEPOの発現制御機構に対して検討すると同時に、他の生殖器官におけるEPO産生についても検討した。以下に成果を列挙する。1.子宮におけるEPOの産生制御は主としてエストロゲンによって行われている。低酸素刺激のみでは産生は誘導されず、エストロゲン投与時にのみ低酸素による誘導が観察された。2.子宮ではエストロゲンによって一過的にEPOの産生誘導が見られるが、これはエストロゲン受容体がダウンレギュレーションされるためと考えられた。3.腎臓や脳においては、子宮とは異なり、エストロゲンではEPO mRNAは誘導されず、低酸素により誘導された。但し、腎臓では低酸素で一過的に誘導されるのに対して、脳では低酸素が続く限り、EPO mRNAは高レベルを維持した。この結果は、腎臓で産生されるEPOは赤血球量の調節に、脳のEPOは神経細胞死の防御に用いられるため、その機能を非常によく反映した制御機構であると理解できた。4.卵巣、卵管においてもエストロゲン依存的にEPOの産生が見られたが、特に卵管峡部で発現が高かった。5.精巣および精巣上体でも低酸素誘導性のEPOが産生が見られることを発見した。また、性成熟に伴い精巣上体でのEPO産生が劇的に上昇することが明らかになった。
著者
永尾 雅哉
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1.可溶性エリスロポエチン受容体(_sEPO-R)をビオチン化し、6残基のランダムなペプチドを粒子表面に持つファージライブラリー液と混合後、ストレプトアビジンでコートしたプレート上にパニングして、_sEPO-Rに特異的に結合するものをスクリーニングしようとしたが、特異的に結合するファージは得られなかった。一方、_sEPO-Rを抗原として得られたモノクローナル抗体1G3をコートしたプレート上で同様にファージライブラリー液をパニングしたところ、特異的に結合するファージが濃縮されてきた。現在、このファージを精製し、_sEPO-Rのどの配列を有しているかを検討することにより、1G3の認識する配列を決定している。2.エリスロポエチン(EPO)は赤血球系に特異的に作用すると考えられてきたが、神経系にも作用することを明らかにした。先ずコリン作動性ニューロン株SN6や副腎髄質由来クロム親和性細胞PC12上にEPO受容体が存在することを発見した。そして、EPO添加によりPC12細胞内のカルシウム濃度の一過的上昇や、モノアミン含量の上昇を検出した。PC12細胞は神経成長因子を添加すると神経突起を伸展するが、EPO添加では変化せず、増殖も促進されなかった。これらの結果からEPOは神経系では栄養因子として作用すると考えられた。また、マウスの胎児発生過程の神経系の形成にEPOが作用するするのではないかと考えて、RT-PCR法または免疫組織化学的手法でEPOとEPO受容体の胚および胎児における発現について検討した。その結果、胎生7日目の原始線条、胎生8日目の神経褶にEPOおよびEPO受容体の存在が認められた。さらに胎生10日目になると神経上皮の辺縁側および脊髄の原基にEPOの存在が認められた。以上の結果は、胎児の神経系形成にEPOがオートクリンまたはパラクリン様式で作用することを示唆しており、現在EPOの神経系での生物学的機能についてさらに検討している。