著者
岡村 益 壁谷沢 万里子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.217-221, 1973

1) 調査対象は主として中高年齢層で8年から10年の長期間勤続した例が多い.このことは, 対象地に主婦労働を必要とする企業が誘致されるとすぐに就職した生活困難な低所得層であると解される.夫もブルーカラーが大半で2人で働いてもなおかつ生活は楽でない.したがって夫は妻の就労に賛成であり, 経済的期待がかなり大きい.<BR>2) 生活に余裕がないことは, 勤めに出ている理由のうち経済的理由の占める率が高いこと, 生計費が県平均よりかなり低いこと, 住居に持家が少なく狭いこと, 貯蓄の仕方が不定期で安定性がないなどに表われている.<BR>3) 主婦の家事労働を助ける機器が必要であるのにあまり使われていない.家事労働軽減のための機器の使用は娯楽的耐久消費財よりむしろおくれている.これは生活水準の低いためと低い生活意識によるものと考えられる.<BR>4) 家庭内における役割構造については概して夫より妻の役割が大きいが, これは家族周期がやや後期段階にわたることと妻の就労によって妻の地位が高められたものと考えられる.また, 家事の役割を分担するという家族習慣が形成されていないことが明らかになった.<BR>5) 対象の多くは結婚後初めて就職したので働く意識は全般に低いが, これからの女性の就労観について「家事と職業両立型」に賛成しており, 職業志向を示しているのは長い間の就労により養われたものかと考えられる.<BR>なお, 労務系の共稼ぎ主婦の生活構造の全般的把握は機会を改めて行なう予定である.
著者
壁谷沢 万里子 長沢 由喜子 KABEYASAWA Mariko NAGASAWA Yukiko
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.p1141-1153, 1988-11

The purpose of this study is to grasp the actual conditions of the use of domestic services, to discover the use-factors, and to clarify the use-structure. Part 1 is a report on the factors which were extracted from the analysis of housewives in their use-tendency according to age, family type, occupation, and education. The results obtained were as follows : 1) Especially in the services relative to food, the controlling factors of use were at work in the older group. 2) The promoting factors of use which worked on the younger group were their tendency to convenience and evaluation of quality. 3) The peculiarities of use-tendency in the single or couple family type were recognized. 4) In the services relative to clothing, the tendency of those working full-time was remarkable. Evaluation of quality in these worked as the promoting factors of use and caused the use-fixation. 5) The economic condition of lower educated group worked as the controlling factor of use. 基本的属性との関連において家事サービスの利用傾向について分析を行った結果, 利用促進および利用抑制要因に関して得られた考察の要約は次のとおりである. 1) 食品関連項目のなかで, とくに新たな加工形態の食品 (冷凍食品・レトルト食品・半調理品など) は51歳以上の高年齢群に利用抑制が強くはたらく事実が確認された. 2) 高年齢群の利用拒否の根強さは, 利用動機からもうかがえ, 家事に対する保守性・利用に対するうしろめたさ・加齢に伴う食嗜好の変化などが抑制要因としてはたらくことによると推察される. 3) 若年齢群の利用促進要因としては, 第1に利便性志向が指摘され, 第2に他年齢群に比較して質評価が高いことがあげられ, とくに家族との外食において顕著である. 4) 高年齢群の単独・夫婦のみ世帯において, 家族人数・経済性・手軽さ・夫の好みなどの点により, 外食より出前を志向する傾向が認められた. 5) 核家族において, 家族との外食に利用促進要因が働く事実が確認され, 雰囲気としての楽しみを求める, 新たな価値意識に基づく質評価が利用定着を誘因している. 6) 勤務者の利用が衣生活関連サービスにおいてきわ立ち, 専業主婦でも質評価をしている場合には利用が高まる傾向が認められたことより, 質評価が時間的拘束度をしのいで利用促進要因として働くことが明らかとなった. 7) 質評価が高い場合には今後の利用意向が高く, 質家事サービスの利用要因に関する構造的分析 (第1報) 評価と利用定着との結びつきが確認され, とりわけこの傾向は高学歴群において顕著である. 8) 低学歴群における経済性が, 家族との外食およびセータークリーニングにおいて利用抑制要因として働くことが認められた. 以上「利用」および「非利用」に分けて利用傾向を検討することにより, 利用傾向の特異性をより鮮明にとらえることができた.基本的属性のなかではとくに年齢が利用と深くかかわっており, それに伴って生活意識とのかかわりの重要性が浮かび上がった.さらに外食の余暇化現象の確認, 高齢者世帯における外食サービスのあり方に関する示唆, 今後の利用を予測する上でのサービスの質と利便性評価のもつ役割など, 新たな生活様式形成予測の手がかりを若干でも得ることができたと考える.家事サービスの利用要因の一部をそのはたらきとしてとらえたにすぎないが, 生活意識との分析を重ねることで, より利用構造の把握に近づくことになろう. なお, 本研究は昭和60年度日本家政学会東北・北海道支部第30回研究発表会および昭和61年度日本家政学会第38回大会においてその概要を発表した.