著者
野田 昌宏 盛 真一郎 出先 亮介 馬場 研二 喜多 芳昭 柳田 茂寛 柳 政行 奥村 浩 石神 純也 夏越 祥次
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1107-1112, 2014-09-30 (Released:2015-02-04)
参考文献数
12

2012年1月から2013年12月までに当教室で経験したフルニエ壊疽6例を検討し,2008年から2013年までに検索しえた101例を加えた107例の検討を行った。自験例6例中Fournier’s gangrene severity index(以下,FGSI)およびUldag Fournier’s gangrene severity index(以下,UFGSI)が高値であった2例は周術期に死亡した。107例の検討では周術期死亡は10%であり,平均年齢59.3歳であった。84%に基礎疾患を有し,糖尿病が最多であった。嫌気性菌の関与が35%にみられ,混合感染も多く認められた。治療は適切なドレナージ,デブリードマンが最も重要であり,嫌気性菌をカバーした広域抗菌薬投与,全身管理,創部の適切な管理が必要である。FGSIと UFGSIは,フルニエ壊疽の重症度判定と予後予測に有用であった。
著者
野元 優貴 喜島 祐子 新田 吉陽 平田 宗嗣 吉中 平次 夏越 祥次
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.768-772, 2016 (Released:2016-10-31)
参考文献数
13

症例は57歳,女性.2011年3月に左乳癌に対して,胸筋温存乳房切除術(Bt + Ax + Ic)を施行した(pT2N3aM0 stage IIIC).術後補助療法として,2011年4月よりエピルビシン+シクロフォスファミド(EC)療法を4クール,同年7月よりパクリタキセル(PTX)療法を4クール施行した.2012年1月に腫瘍マーカーの上昇と多発肝転移を認め,再発1次治療としてEC療法を6クール施行した.投与中,腫瘍マーカーは低下傾向にあり,肝転移巣も縮小傾向にあった.再発一次治療終了直後より食思不振が出現し,近医に入院した.その後,急速にperformance status(PS)が低下し,頭部造影CTを施行したが異常所見は認められなかった.原因検索のため当院に転院となり,第20病日に髄液穿刺および頭部造影MRIにて髄膜播種の診断がついたが,第22病日に永眠された.急速に進行した乳癌髄膜播種症の症例を経験したので,文献考察を追加し,報告する.
著者
田中 貴子 有上 貴明 石神 純也 上之園 芳一 大久保 啓史 夏越 祥次
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.8, pp.1780-1784, 2017 (Released:2018-02-28)
参考文献数
9

症例は50歳,女性.胃十二指腸潰瘍に対する保存的治療の既往があり,上部消化管内視鏡検査で胃粘膜下腫瘍を指摘された.腹部造影CT検査では転移性肝腫瘍を指摘された.肝転移を伴う胃原発ガストリノーマの診断となり,幽門側胃切除術(D2リンパ節郭清,肝外側区域切除術)を施行した.手術直後,ガストリン値は著明に低下したが,術後4カ月から再上昇を認め,肝転移再発の診断となり,分子標的薬治療を施行した.ガストリノーマはガストリノーマトライアングル内に多く発生することが知られているが,異所性ガストリノーマの報告は少なく,胃原発ガストリノーマの報告は極めて稀である.肝転移を伴うガストリノーマの予後は極めて悪く,外科切除以外にも分子標的薬あるいは肝転移巣に対する局所療法として選択的肝動脈塞栓術などが有用という報告もある.当科で経験した肝転移を伴う胃原発ガストリノーマについて,文献的考察を加えて報告する.
著者
貴島 孝 白尾 一定 桑畑 太作 秦 洋一 田中 弘之 牛谷 義秀 夏越 祥次
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.9, pp.2569-2573, 2014 (Released:2015-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は63歳の女性.既往歴に9カ月前交通外傷にて頸椎捻挫症,腰痛症となり入院歴がある.腹痛を主訴に前医受診,腹部腫瘤性病変を認め腹膜炎疑いにて当科紹介受診となる.腹部CTにて横行結腸頭側脂肪織内に約3.8cmの腫瘤を認め,炎症性腫瘤の診断にて入院,抗菌薬治療となった.抗菌薬投与1週間後の腹部CTでは炎症性腫瘤に変化なく手術を施行した.横行結腸頭側に膿瘍が存在し,結腸,胃大弯側に巻き込んでいたため,膿瘍を含めた横行結腸・胃部分切除術を施行.術後経過は良好で第15病日に退院となった.病理組織検査では大網内に菌塊を認め,放線菌症と診断された.腹部放線菌症は稀な疾患であり大網原発例は僅かである.また,交通外傷時のシートベルトによる打撲の部位と大体一致して大網放線菌症による腸管狭窄をきたしていたことから,シートベルト損傷と腸管損傷,大網放線菌症の関係が示唆された.
著者
喜島 祐子 夏越 祥次 吉中 平次 石神 純也
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

基礎実験では,ラットを用いた大胸筋表面への FDFG 移植モデルを作成し,経時的な変化を観察できる FDFG 移植片を採取・固定・病理検索できることを明らかにした.このモデルを用いて経時的に IL-6, VEGF, CD31 発現を観測し,FDFG 生着には移植後早期の血管新生が関与し,より血流の多い部位からの血管新生によって FDFG のボリュームが維持されていることが推察された.