著者
白尾 一定 前之原 茂穂 愛甲 孝
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.309-313, 1995-09-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
6

消化器外科に入院した患者84例を対象として, 栄養状態と虚実証の関連について検討した。虚実証の判定は, 大竹の虚実判定スコアーを用いて行った。癌患者の%理想体重は, 非癌患者より有意に低値であった (p<0.01)。癌患者と非癌患者の虚実証の頻度に差は認められなかった。虚実判定スコアーは握力 (r=0.6), %理想体重 (r=0.29), 血清アルブミン (r=0.27) との有意の相関が認められた (p<0.05~0.01)。とくに, 握力は一元配置分析にて虚証, 中間証と実証の3群間に有意差が認められた (p<0.01)。虚実判定スコアーは栄養評価の一つとして有用と思われた。
著者
白尾 一定 秦 洋一 立野 太郎 出先 亮介
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.937-940, 2012 (Released:2012-06-15)
参考文献数
5

当院における術前経口補水療法と術後早期経口摂取への試みについて報告する。術前経口補水療法は2009年12月から2011年1月までの52例に適応し、手術前2時間前まで経口補水液 (OS-1) を摂取した。OS-1は平均815mL飲料され、胃内溶液は平均21mLであった。80歳以上の高齢者においても平均871mLの服用が可能であった。アンケート調査の結果では、82%が飲みやすいと回答した。2010年3月から2011年1月まで胃切除6例、胃全摘9例、結腸切除5例に早期補水療法を行なった。早期補水、食事開始に伴う合併症は認められなかった。胃全摘について従来法と比較した。輸液終了日は、早期補水群で有意に短かった。術前OS-1による経口補水療法は、口渇感や移動、着替えなどの日常生活などの制限もなく、高齢者にも安全に服用できた。小規模なsample数で疾患を限定した消化器疾患に対する早期補水、経口摂取は施行可能であった。
著者
貴島 孝 白尾 一定 桑畑 太作 秦 洋一 田中 弘之 牛谷 義秀 夏越 祥次
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.9, pp.2569-2573, 2014 (Released:2015-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1

症例は63歳の女性.既往歴に9カ月前交通外傷にて頸椎捻挫症,腰痛症となり入院歴がある.腹痛を主訴に前医受診,腹部腫瘤性病変を認め腹膜炎疑いにて当科紹介受診となる.腹部CTにて横行結腸頭側脂肪織内に約3.8cmの腫瘤を認め,炎症性腫瘤の診断にて入院,抗菌薬治療となった.抗菌薬投与1週間後の腹部CTでは炎症性腫瘤に変化なく手術を施行した.横行結腸頭側に膿瘍が存在し,結腸,胃大弯側に巻き込んでいたため,膿瘍を含めた横行結腸・胃部分切除術を施行.術後経過は良好で第15病日に退院となった.病理組織検査では大網内に菌塊を認め,放線菌症と診断された.腹部放線菌症は稀な疾患であり大網原発例は僅かである.また,交通外傷時のシートベルトによる打撲の部位と大体一致して大網放線菌症による腸管狭窄をきたしていたことから,シートベルト損傷と腸管損傷,大網放線菌症の関係が示唆された.