著者
小松 鮎子 鶴崎 俊哉 上原 ひろの 西村 陽央 多門 大介
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.300, 2010 (Released:2011-01-15)

【目的】近年,四つ這いをしない子どもが増加しているとの指摘が多く聞かれる.そこで,「ハイハイをしない」というキーワードでインターネット検索をしてみると,Yahooで約257,000件,Googleでは約10,400,000件が該当した.これらの多くは母親による相談の書き込みと,それに対する医師をはじめとした医療従事者・保育関係者によるアドバイスであった.この背景には「ハイハイをしない」ということが異常・障害ではないかと懸念する気持ちや発達に対する不安感があると考えられる.しかし,実際にはそれらの子どもの多くは正常に発達していく.つまり,正常発達の流れの中でも「ハイハイをしない」ということは十分にあり得ると考えられる.そこで本研究では乳児の自然な四つ這い動作を観察し,四つ這い動作を通して獲得されると思われる体幹の使い方について,月齢,四つ這い実施期間との関連性を検討した. 【方法】対象は,長崎市内の子育て支援センターを利用している神経学的・整形外科的な問題がない乳児の中から,本研究に関する説明を行い保護者より同意の得られた12組(男児7名,女児5名)の母子を対象とした.そのうちデジタルビデオカメラの撮影中に四つ這い動作がみられた8ヶ月から1歳1ヶ月までの10名(男児7名,女児3名)の画像について,体幹の動きに注目して動作分析を行った.また,動作分析の結果を比較する指標として,事前に母親に対して月齢と四つ這い開始月齢に関するインタビューを行った. 【結果】四つ這い動作時の体幹では,胸腰椎移行部が前彎している乳児と腰部がフラットである乳児の2パターンに分けられたが月齢および四つ這い実施期間との明確な関連性はなかった.また,四つ這いで前進する際に,股関節を固定し骨盤を側方傾斜させることで下肢を振り出す,股関節の屈伸と連動して骨盤の側方傾斜が生じる,一足下肢を足底接地するために骨盤に回旋が生じるなどのパターンが見られたが,月齢・四つ這いの実施期間ととの明確な関連性は見られなかった. 【考察】今回の研究では,脊柱の弯曲や骨盤の運動についてパターン化することは出来たが,これらの出現順序について月齢,四つ這い実施期間ともに関連性を見いだすことが出来なかった.この原因として,四つ這い開始時期に関する定義が曖昧なため母親から正確な情報が得られなかった可能性や四つ這いの開始時期に幅があり四つ這い以外の動作の中で体幹の運動を獲得していた可能性が考えられた.今後,横断的な研究としては対象者数を増やす必要があるが,平行して縦断的な研究を実施することで四つ這い動作の経時的な変化および体幹機能の獲得過程を明確にする必要性がある.また,四つ這い動作を促進する生活環境や四つ這い実施が立位アライメント・歩行等に与える影響についても検討していきたい.
著者
高尾 聡 浅居 悦子 小松 優子 桑原 陽子 福田 珠里 山根 主信 多門 大介 吉田 直之 工藤 翔二 上武 智樹 加藤 大輔
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.263-267, 2014-08-31 (Released:2015-11-13)
参考文献数
12

在宅酸素療法(home oxygen therapy: HOT)では携帯用酸素ボンベの使用時間を延長させるために,呼吸同調装置を併用して吸気時に酸素供給を行う同調式が一般的である.しかし,院内で使用される医療用酸素ボンベのような吸気,呼気に関係なく酸素が供給される連続式と比較すると,経皮的酸素飽和度(SpO2)の値が同調式で低くなることを経験する.今回,慢性呼吸器疾患患者20名に対し,携帯用酸素ボンベを使用しての6分間歩行試験(6 minutes walking test: 6MWT)を連続式と同調式で行った.その結果,同一酸素流量においてSpO2の平均値・最頻値・最高値・最低値が同調式で有意に低かった.HOTを処方する際には,呼吸同調装置を取り付けた携帯用酸素ボンベを用いたうえで労作時のSpO2の測定および酸素流量の設定を行うことが望ましい.