著者
大久保 恒夫
出版者
粉体工学会
雑誌
粉体工学会誌 (ISSN:03866157)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.371-379, 2000-05-10 (Released:2010-04-30)
参考文献数
75
著者
大久保 恒夫 宮田 剣
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では自然界の散逸構造形成を伴う自己組織化の中でも最も単純な系と考えられるコロイド分散液の自然乾燥の過程で発現する、対流、沈降、乾燥散逸パターンの徹底した調査を行った。特に、沈降パターンについて世界で初めて調査した。次の研究成果を得た。(1)コロイダルシリカ分散液等を用いたカバーガラスや時計皿、シャーレ中での実験によって、沈降パターンは基本的には「ブロードリング」であることを明らかにした。このパターンは対流による粒子のせり上がりと重力沈降との拮抗で形成されること、更には、粒子は容器底面から電気二重層で浮いた状態で拮抗し、パターンは温度や湿度などの外場およびそれらの因子の時間勾配に応答していることを明らかにした。(2)ほとんどあらゆる溶質(コロイド粒子、高分子、染料分子、低分子イオン、界面活性剤など)の乾燥パターンはブロードリングとスポークラインに代表されるマクロパターンとともに多彩なミクロパターンが階層的に構成されていることを明らかにした。また、基板の傾斜効果なども調査した。(3)加熱した墨汁液の対流パターンを詳細に調査した。更に、ポリメチルメタクリレート粒子分散液(コロイド結晶)の室温での対流パターンを直視観察することに成功した。スポークライン構造(寺田セル)の特性を明らかにした。また、種々の濃度の味噌汁の対流パターンを観察し、ブロードリング構造とともに変形したバナールセルを発見した。(4)流動場下でのパターン形成や理論的検討(特に、コンピュータシミュレーション)については残念ながら本研究期間内に実施出来なかった。今後も精力的な研究を続けたい。
著者
大久保 恒夫
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

当該課題に関して最終年度であるが所期の成果を挙げることができた。すなわち,(1)種々の大きさの2種のポリスチレン粒子の組み合わせからなる二元合金構造を沈降平衡下で発現させた。電気2重層を含む粒子の実効径の比に応じて種々の合金構造や超格子が発現した。また反射スペクトルのピ-ク波長の高さ依存性からコロイド合金の結晶弾性率が求められた。18〜108Paであった。(2)二元コロイド合金構造などの構造化コロイド分散液の粘度特性を明らかにした。合金構造を発現している分散液の比粘度は混合比のわずかな変化により大きく変化した。鋭いピ-クが1個ないし2個出現した。(3)高度な単分散性粒子を完全に脱塩することにより2〜8mmにも及び巨大なコロイド単結晶を発現させることに世界で初めて成功した。コロイド結晶の成長過程の速度論的解析やコロイド単結晶のモルホロジ-研究に道を拓くものである。(4)コロイド単結晶がクリスマスツリ-上のランプのように明滅する現象を初めて見い出した。これは,単結晶の回転のブラウン運動にもとずくことが判明した。(5)多種類のコロイド結晶系の弾性率の測定を完成し,定式化に成功した。(6)コロイド結晶の融解温度を測定した。実測値は湯川ポテンシャル(斥力)を用いた理論に良く一致した。また,コロイド結晶が融解する臨界濃度も脱塩が完全になるほど低濃度側へシフトした。(7)コロイド分散液の屈折率特性を明らかにした。(8)コロイド粒子の回転拡散定数をストップトフロ-法で決定し,顕微鏡法で粒子の並進拡散定数を直接決定した。電気二重層や粒子間の静電的斥力が重要であることを裏づける結果を得た。(9)中性高分子および高分子イオン溶液の特異的粘度挙動を通じて電気二重層の重要性が示された。(10)包接的会合反応などの高速反応の速度論的解析を行った。(11)その他,単分子膜内のアルカリ加水分解反応の解析を表面張力法で行うユニ-クな手法を開発した。