- 著者
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大久保 恒夫
宮田 剣
- 出版者
- 山形大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究では自然界の散逸構造形成を伴う自己組織化の中でも最も単純な系と考えられるコロイド分散液の自然乾燥の過程で発現する、対流、沈降、乾燥散逸パターンの徹底した調査を行った。特に、沈降パターンについて世界で初めて調査した。次の研究成果を得た。(1)コロイダルシリカ分散液等を用いたカバーガラスや時計皿、シャーレ中での実験によって、沈降パターンは基本的には「ブロードリング」であることを明らかにした。このパターンは対流による粒子のせり上がりと重力沈降との拮抗で形成されること、更には、粒子は容器底面から電気二重層で浮いた状態で拮抗し、パターンは温度や湿度などの外場およびそれらの因子の時間勾配に応答していることを明らかにした。(2)ほとんどあらゆる溶質(コロイド粒子、高分子、染料分子、低分子イオン、界面活性剤など)の乾燥パターンはブロードリングとスポークラインに代表されるマクロパターンとともに多彩なミクロパターンが階層的に構成されていることを明らかにした。また、基板の傾斜効果なども調査した。(3)加熱した墨汁液の対流パターンを詳細に調査した。更に、ポリメチルメタクリレート粒子分散液(コロイド結晶)の室温での対流パターンを直視観察することに成功した。スポークライン構造(寺田セル)の特性を明らかにした。また、種々の濃度の味噌汁の対流パターンを観察し、ブロードリング構造とともに変形したバナールセルを発見した。(4)流動場下でのパターン形成や理論的検討(特に、コンピュータシミュレーション)については残念ながら本研究期間内に実施出来なかった。今後も精力的な研究を続けたい。