著者
大井 智香子 Chikako OHI 中部学院大学
出版者
中部学院大学総合研究センター
雑誌
中部学院大学・中部学院大学短期大学部研究紀要 = Chubu Gakuin University Chubu Gakuin College the Journal (ISSN:1347328X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.11-22, 2008-03-01

現在日本で働く日系ブラジル人の多くは社会的な課題となっている不安定就労層に属しており、わが国の社会保障ならびに社会福祉サービスの狭間で最も深刻な生活不安にさらされている存在である。就労目的で来日した日系ブラジル人は特定地域に集住する傾向がある。彼らの就労は経済の動向に左右され、また少しでもよい条件の雇用を求める人たちは日本国内の移動を繰り返すこととなり、その滞在は長期化傾向にある。個々の日系ブラジル人が移動を繰り返しそこに住む人物が入れ替わり立ち代りであったとしても、集住地域と呼ばれる都市などを中心として、ホスト住民にとっては「日系ブラジル人たち」という存在がはっきりと見える存在となりつつある。日系ブラジル人を取り巻く生活課題を把握するための調査の過程で、地域社会のなかで起きている課題に対して、きっかけは不満や苦情であっても現状を打開するために行動に移し、次第に「同じ地域に暮らしていくもの同士」という認識を深めていく人たちの実態が明らかになった。興味深い点は、それらの活動が地縁組織とアソシエーション型組織の協働あるいは融合の可能性を持っていることである。本稿では、日系ブラジル人の集住都市である岐阜県可児市における住民組織の活動事例を手がかりとして、課題克服に向けて動く住民組織の変化とそれらの組織が果たした役割について整理し、成り立ちや動機の異なる組織のネットワークの可能性について考察する。
著者
三本松 政之 朝倉 美江 原 史子 大井 智香子 中尾 友紀 新田 さやか 福山 清蔵 永田 理香 門 美由紀
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

日本の外国人移住生活者への政策は総論的な検討に止まり具体的対応は基礎自治体に委ねられており、移住生活者の支援にはデニズンシップとしての実質化という視点が重要となる。韓国では人権をミッションとする市民団体が外国人労働者の労働環境改善、移住女性の生活改善策提案などのための政策担当局との折衝ルート等を活用し、政府への政策形成やデニズンシップの実質化に向けて一定の影響力をもっていることが見い出せた。
著者
大井 智香子
出版者
中部学院大学
雑誌
中部学院大学・中部学院大学短期大学部研究紀要 (ISSN:1347328X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-15, 2006-03

1995年1月の阪神・淡路大震災の被災地における救援・復興活動にボランティア活動や市民活動の果たした役割は大きく、その活躍を受け国の防災基本計画にもボランティア活動者の受け入れが位置づけられ、ほとんどの市町村が地域防災計画の中でボランティア活動者の受け入れについて触れるようになった。しかしながら、具体的な手順や地域住民との連携など具体策が講じられている地域は少ない。本稿では、2004年台風23号の被害により災害救援ボランティアセンターを立ち上げた3市(高山市、飛騨市、郡上市)における活動と後方支援を行なった県社協の活動を手がかりに、災害時のボランティアコーディネートをめぐる課題と社協の役割について検討する。