著者
大八木 規夫
出版者
公益社団法人 日本地すべり学会
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.10-21, 2003-05-25 (Released:2010-03-16)
参考文献数
64
被引用文献数
1

1997年に発生した澄川地すべりの研究を契機として, 東北地方に見い出される大規模な地すべり地形はカルデラ火山に関係しているものが多いことが明らかになってきた。 東北地方には後期中新世から後期更新世にかけて形成されたカルデラが80箇所ほど存在している。 これらカルデラと大規模地すべり地形との関係をカルデラ火山の解体期における削剥過程に沿って次の3亜期に区分して概観した。 1) 後カルデラ火山体および外来火山岩削剥亜期では, 中小規模の地すべりや火山体の山頂部での変形がみられる。 2) 湖成堆積物削剥亜期では, 湖成堆積物の上位に残存している火山体には大規模な地すべり地形が認められ, また, グラーベンと放射状地すべりからなる変形がある。 湖成堆積物の地表面では中小規模の地すべりが多発して不規則な地形を示す。 3) カルデラ形成期の火砕流堆積物削剥亜期では, 崩壊や土石流の発生が著しく, 土砂災害としても注目される。 なお, 湖成堆積物は, その塑性変形をしやすい物性, 上位の後カルデラ期火山岩類とによるキャップロック構造の形成, 差別的侵食作用, 熱水作用の側方への拡大など, 地すべり形成に対して多面的に重要な素因となっている。
著者
大八木 規夫 井口 隆
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.436-445, 1985-12-25 (Released:2009-11-12)
被引用文献数
6 9

The main portion of Iwo-jima island consists of lava flows and pyroclastic rocks of trachy andesite, erupted and deposited in shallow sea, except the upper part of Suribachiyama, in 2600-2800 y.B.P. The island have been uplifting from about 800 y.B.P., followed by active faulting and change in coast lines.
著者
井口 隆 大八木 規夫 諸星 敏一 高橋 博
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.256-262_2, 1988-08-25 (Released:2011-02-17)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1
著者
遠藤 浩子 大八木 規夫
出版者
財団法人深田地質研究所
雑誌
財団法人深田地質研究所年報
巻号頁・発行日
vol.1, pp.73-96, 2000-07-10

鹿児島県出水市針原地区においt,梅雨に伴う大雨により1997年5月10日大規模な崩壊が発生し,21名が亡くなった。この崩壊源の規模は幅79m,奥行185m,深さ20m,体積12.4万m^3であった。崩壊源周囲の地質は矢筈岳火山岩類に属する鮮新世・更新世の火山岩類で,下位から火砕岩,淡灰色安山岩溶岩,暗灰色安山岩溶岩で構成されている。これらの安山岩類は著しく風化しており,崩壊源の側方崖や滑落崖では浅部は粘土質の赤褐色風化帯,その下位は玉葱状構造のよく発達した風化帯となっている。崩壊発生場所は凹状地形を呈し,1982年長崎災害の事例と類似した反復性後退崩壊の特徴をもった斜面であった。移送堆積域では,崩壊源脚部から450m下流右岸側に,玉葱状構造を残存した状態で運搬された高さ1m,幅3mのブロックを発見した。この位置は,他の機関が同様の堆積物を確認した位置よりも140m下流である。上のブロック発見位置は,空中写真判読によって小規模ながら流山の形態を示している。このような流山地形は上述のブロック発見位置よりも55m下流であった。この場所は災害後に土塊が擾乱されたが,玉葱状構造をある程度保存した礫を確認できた。したがって,崩壊源脚部から500m付近までは岩屑なだれの状態を保った部分があったと考える。また,移動体の移送の途中から流動性の高い部分も形成したと推定される堆積物も認められた。