著者
和泉 潔 大勝 孝司
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.105(1995-ICS-102), pp.7-12, 1995-11-07

本研究は,実際の経済現象の分析における人工市場アプローチの有効性を調べるために,外国為替市場を一つのケーススタディとして,人工市場アプローチによる新しいモデルを構築し,予測力と説明力の評価を行なった.その結果,予測力においては,既存の為替モデルに比べて10%以上,予測誤差を小さくすることが可能となった.また,説明力に関しては,市場参加者の予想の同調と完全な一致により,1988年から1991年の為替バブルの成長と崩壊がもたらされたことを示すことができた.これらの結果により,本研究は人工市場アプローチが現実の経済現象を定量的にも分析することの有効性を示すことができた.
著者
和泉 潔 植田 一博 中西 晶洋 大勝 孝司
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.416-417, 1997-09-24

「人間は複雑な社会システムの中で, いかに学習を行なうのか」という問題は, 認知科学や人工知能の分野で, 従来の方向性に対する反省として, 重大な課題となっている。また, 経済学の分野の方でも, 最近, 従来の経済理論における人間の学習に対する過度の理想化に対し強い批判が行なわれている。本研究の目的は, 上述の課題に対する解答への新しいアプローチを, 近年, 市場の激しい変動を経験した外国為替市場(以下, 外為市場)を一つのケーススタディとして, 提出することである。すなわち, 各々の市場参加者が相互作用しながら学習していくような新しい外為市場のモデルを構築する。本稿では既に我々が構築したモデルの概要と本モデルを用いて1995年の急激な円高の分析した結果を報告する。