著者
大和田 春樹 大森 博雄 松本 淳
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.8, pp.534-541, 2005-07-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
14

黄土高原の降水は夏季集中型であり,7~8月に降水量が最大となる.5~9月の水蒸気輸送場解析によると,5月は低緯度側からの水蒸気輸送が黄土高原に達していないが,6月になると水蒸気輸送量が漸増し,7月に最大となる.8月には,中国南部からの水蒸気輸送は弱まり,東シナ海を経て南東方向から黄土高原東部に水蒸気が流入する.9月になると低緯度から黄土高原へ向かう水蒸気輸送量は減少する.この水蒸気輸送場の季節変化には,太平洋高気圧が関わっており,太平洋高気圧の西への張り出しが強まる7月は,華南~華北における東西方向の気圧傾度が増大し,ベンガル湾からの南西気流がより強く北方まで流入する.太平洋高気圧が北上する8月には,華南~華北における東西方向の気圧傾度が小さくなり,南西気流が中国大陸に流入しにくくなるが,北上した太平洋高気圧からの南東気流が黄土高原に流入する.黄土高原の降水量は,低緯度側からの水蒸気輸送量の増減に対応して季節変化するが,降水が極大となる7月と8月とでは水蒸気輸送場が大きく異なっている.