著者
大西 新介 小野寺 良太 杉浦 岳 高橋 宏之 近藤 統 岡本 博之 大城 あき子 清水 隆文 森下 由香 奈良 理
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.469-474, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
8

目的:消防覚知段階の情報から墜落外傷のトリアージが可能か検討する。方法:2003年4月からの4年間に当院へ救急搬送された墜落外傷症例を導出コホート,検証コホートに分けて後方視的に調査した。まず墜落高の重症外傷(ISS≧25)予測能についてROC解析を行った。次に重症予測にかかわる因子の多変量解析を行い,スコアリングを作成し検証した。結果:導出コホート111例において墜落高の重症予測能はAUCが0.65であり,墜落高の閾値は4mとなった。多重ロジスティック解析では高所,高齢,受傷時の意識障害が独立した重症予測因子であった。それぞれの因子を1点としたスコアリングを用いるとAUCが0.76となった。検証コホート128例においてもAUCは0.77であった。結論:墜落外傷においては,墜落高だけではなく高齢,受傷時の意識障害の情報を付加することでより正確なトリアージが可能となる。
著者
丸藤 哲 亀上 隆 澤村 淳 早川 峰司 星野 弘勝 大城 あき子 久保田 信彦
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.9, pp.629-644, 2006-09-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
47
被引用文献数
7 7

外傷後にみられる血液凝固線溶系の変化とその制御方法に関する新知見を概説した。外傷後の凝固線溶系の変化は,止血・創傷治癒のための生理的凝固線溶反応と多臓器不全(multiple organ dysfunction syndrome; MODS)を惹起して症例を死に導く病的凝固線溶反応である播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation; DIC)に分類される。最近外傷後DICの病型に新しい概念が導入され(controlled overt DIC and uncontrolled overt DIC),その凝固線溶系反応の経時的推移も線溶亢進期と線溶抑制期に分類して論じられるようになった。外傷後凝固線溶系反応は低体温,重症代謝性アシドーシス,希釈等の影響を受けて重篤化し出血傾向が出現するために,これらの修飾因子発現予防が症例の予後改善のために必要である。もう一つの重要な予後規定因子であるDICでは炎症性サイトカインが高値となり全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome; SIRS)が持続するが,このDICと遷延性SIRSが相乗的に作用して虚血性微小循環障害と炎症性微小循環障害からMODSを引き起こす。外傷後凝固線溶系の制御は,MODS発症予防と大量出血の止血を目的として行われる。前者は凝固炎症反応連関の考え方に基づいたDIC/遷延性SIRSの予防と治療が主体となり,後者においては最近の外傷後凝固線溶系反応の病態生理解明の新知見に基づいた大規模ランダム化比較試験の実施や遺伝子組み換え活性化第VII因子製剤の臨床応用等が話題となっている。