著者
大場 一郎 中里 弘道 Gennady Zinovjev 室谷 心 平野 哲文
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.258-269, 2011-04-05 (Released:2018-08-14)
参考文献数
51

本解説記事は構成が通常の解説記事と異なるため,編集委員会より簡単に説明する.並木美喜雄先生は2010年4月21日に84歳で他界されました.本解説は並木先生の追悼解説記事として,並木先生がその発展に大きく貢献された高エネルギーハドロン・原子核衝突における流体的描像の物理についての最近の発展を,並木先生の功績を交えながら紹介していただいた.第1章では,並木先生に教えを受けた大場氏と中里氏に並木先生の業績について解説していただいた.また,並木先生が1990年代初頭のソ連崩壊後,旧ソ連の物理学者の支援活動を精力的になさっていた関係で,旧ソ連の研究者から感謝の気持ちを伝えたいとのご意向が寄せられ,第2章では,旧ソ連の研究者を代表してZinovjev氏に寄稿していただいた.第3章では,クォークグルーオンプラズマ流体の物理を第一線で研究し,並木先生の教えも受けている,室谷氏,平野氏に解説記事をお願いした.このような構成のため,通常の解説記事よりページ数が多くなっている.
著者
今福 健太郎 大場 一郎
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:07272997)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.739-748, 1999-02-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
大師堂 経明 大場 一郎 相沢 洋二 小松 進一 小原 啓義
出版者
早稲田大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1989

この計画は総じて予算の割に目標が高いために、あちこちで資金難の問題にぶつかるが、とにかく直径20mφのパラボラアンテナ64台の働きをする装置が1億円強でできあがり、観測結果が出始めた。早稲田大学が開発したこの観測装置については、URSI(国際電波連合)総会(1990プラハ)の招待講演で報告し、各国の関係者はその安さに驚いていた。安く建設できた理由は、干渉計のデザインにあたって電磁波の基本的性質(エルゴ-ト的信号と非エルゴ-ト的信号)にまでたちもどって検討を行い、十分時間をかけて試験的研究をおこない、その成果をふまえて大型化するというプロセスをとったからである。手間をかけて開発し、アルゴリズムの最適化を行ったということである。広い視野を高い感度でマッピングするために小型のアンテナを多数、狭い範囲に配置する計画をカナダのドミニオン電波天文台、米国国立電波天文台/NRL、などがもっている。早稲田大学のプロジェクトと似た計画であるが、方式としては従来のフ-リエ合成干渉計のアルゴリズムを使うため100億円以上かかりそうで実現は簡単ではない。以下では1991年5月に提出した交付申請書(今年度の研究実施計画)のうち何が実現でき、何ができなかったかを記す。またできなかった部分についての対策と今後の見通しについて述べる。(*)位相を精密に測るためには、各アンテナに正確なロ-カル信号を送る必要がある。現在8台あるがそれぞれでは1次元像しか得られない。その装置を作る予算が足りないので、民間の財団などへ申請中である(本度の研究実施計画1991年5月)。→山田科学財団より600万円の研究助成が得られ、必要なロ-カル信号発信器64ー8=56台のうち半分ほどをつくるめどがついた。現時点でできる最善のことは、必要な56台全部をつくり、支払いのできない部分についてはメ-カ-から貸与を受け、後日支払を行うやりかたである。成果としては、まず1次元のうち2素子を使って天の川にある超新星の残骸カシオペアAの干渉じまが得られ、1991年10月の日本天文学会で発表した。この天体は、その膨張速度を逆算すると今から250年前にカシオペア座で爆発したはずであるが、世界のどこにもその記録が残っていない。引きつずき、カニ星雲(1054年に爆発した超新星の残骸で、藤原定家の名月記に記録がある)、はくちょう座A(銀河系の外にある電波銀河)、オリオンA(銀河系中の大きな電離水素領域)などの干渉縞が受信された。さらに2素子から8素子への拡張も比較的スム-ズに実現でき、1991年12月には8素子1次元大型アレイにより上記天体の微分像の直接合成に合功した。つまり毎秒2千万枚のカニ星雲やカシオペアA微分像が世界で初めて得られた。これらの結果はリストにあげた論文として報告した。また多くの新聞社、テレビ局の取材を受けた。(*)パルサ-サ-ベイ用の分散消去フィルタ-の概念設計を行う。→これは非エルゴ-ト的信号も観測できる早稲田大学干渉計でなければできないプロジェクトである。概念設計をすすめた結果、既存のパラボラアンテナをそのまま用い、既存のディジタルレンズのほぼ2倍の規模の処理システムでパ-クスを上回る感度でミリ秒パルサ-のサ-ベイが可能であることがわかった。すなわち空間・時間フ-リエ変換を行い、その結果を2乗積分した後に周波数・時間領域で2次元FFTを行う方法(2+1+2次元FFT)である。このシステムは移設が簡単であり、ワイヤ-をたらしただけの14mφの簡易球面アンテナを110m四方に64台展開するだけで、アレシボを上回る感度でパルサ-を捜すことができる。総経費は3億円で、現在、特別推進研究に応募している。これが実現すると世界最大の集光力をもつ電波望遠鏡となり、多くの連星ミリ秒パルサ-を捜していまだに実現されていない強重力場中での一般相対論の検証に貢献できるであろう。
著者
大場 一郎
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, 2010-08-05
被引用文献数
1