著者
山崎 義和 青野 逸志 大宅 辰夫 芝原 友幸 門田 耕一
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.149-153, 2002-02-25
参考文献数
18
被引用文献数
1

14歳齢で死亡した雌ピューマに胃・十二指腸腺癌と直腸腺腫が認められ, 胃ではヘリコバクター様細菌感染が, 直腸ではスピロヘータ感染を伴う慢性炎症がそれぞれ観察された.肉眼的には種々の大きさのポリープ状腫瘤が, 胃, 十二指腸, 直腸の粘膜面に散見された.組織学的には胃の腫瘍は腸型腺癌で, 腸間膜リンパ節, 脾臓および肺に転移を示した.十二指腸の癌細胞は粘膜内に留まり, 多くの腫瘍細胞が増殖細胞核抗原(PCNA)免疫染色に対し強陽性を示した.直腸の腺腫においてもPCNA陽性細胞は散見されたが, その数は癌組織に比べはるかに少なかった.以上の結果から, 今回認められた消化器腫瘍の発生と上記の細菌感染との間に何らかの因果関係があるものと推察した.
著者
大宅 辰夫 丸橋 敏広 伊藤 博哉
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1151-1155, 2000-11-25
参考文献数
23
被引用文献数
3 58

大腸菌O157は, 牛が主たる保菌動物であり, 糞便中に排菌されることが知られている.我々は, 大腸菌O157保菌牛の排菌阻止を目的とした生菌製剤を開発し, 実験感染牛への経口投与による予備的な排菌阻止試験を試みた.生菌製剤の試作には, 成牛糞便から分離した乳酸産生菌であるStreptococcus bovis LCB6株及びLactobacillus gallinarum LCB12株を用いた.4ヶ月齢のホルスタイン牛8頭に大腸菌O157を実験感染させ, 感染7日後に排菌を継続した4頭の保菌牛に生菌製剤を経口投与し, 大腸菌O157排除効果を調べた.生菌製剤の投与により, 糞便への大腸菌O157の排菌は完全に阻止され, 再排菌も認められなかった.実験期間中の糞便中VFA濃度を定量したところ, 排菌阻止は, 生菌剤投与をきっかけとした糞便中VFA, 特に酢酸濃度の急激な上昇と相関していた.また, 実験感染の過程で感染しなかった4頭の糞便中VFA濃度は, 感染した4頭に比べ, 有意に高く, 牛での大腸菌O157保菌には糞便中VFA濃度が一要因として関係していると考えられた.今回の成績は, 特定の条件下の牛を用いた予備的試験において得られたものではあるが, 生菌製剤の応用による大腸菌O157保菌牛の排菌阻止の可能性が示唆された.