著者
西口 満 二村 典宏 大宮 泰徳 遠藤 真咲 三上 雅史 土岐 精一 小長谷 賢一 七里 吉彦 谷口 亨 丸山 E. 毅
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第130回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.131, 2019-05-27 (Released:2019-05-13)

スギ(Cryptomeria japonica)花粉症は、日本国民の約3割に広がっているとの報告もあり、深刻な社会問題となっている。花粉症対策の一つとして、花粉の形成機構を解明し阻害することができれば、花粉の飛散量を減らすことが可能となる。本研究では、ゲノム編集技術の一つであるCRISPR/Cas9法を用いて、スギの花粉形成に関わる遺伝子に変異を導入し、花粉形成への影響を調べた。スギの花粉形成関連遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9ベクターを構築し、アグロバクテリウム法により遺伝子組換えスギを作出した。遺伝子組換えスギのゲノムDNA中の標的遺伝子には欠失変異が見つかり、スギでもゲノム編集による遺伝子変異が生じることが分かった。夏季にジベレリンを散布し、遺伝子組換えスギの花芽形成を誘導した。標的遺伝子の両対立遺伝子に欠失変異が生じた遺伝子組換えスギでは雄花中に花粉が検出されなかったが、非組換えスギでは花粉が作られていた。従って、スギの花粉形成関連遺伝子に変異が起こることにより、無花粉になることが示された。本研究は、内閣府SIP次世代農林水産業創造技術により実施されました。
著者
國嶋 俊輔 鳥丸 猛 大宮 泰徳 赤田 辰治
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

白神山地には世界最大級のブナ林が分布しており、世界的にも希少な森林生態系が形成されているが、地球温暖化により現存のブナ林存続が危惧されている。本研究はブナの持つ環境適応能力を調べることにより、白神山地の環境保全に役立てることを目的としている。産地の異なるブナ実生の乾燥耐性を比較解析するため、青森県の白神山地、岩木山、鰺ヶ沢、岩手県の安比高原、山形県の戸沢村、鳥取県の大山など、合計7か所の異なる産地由来のブナ実生全90個体をコンテナ毎に9個体ずつ植え、対照区44個体、乾燥区46個体に分けて、樹高と幹直径の成長量と葉面積を比較解析した。その結果、乾燥区においては対照区に比べて肥大成長が遅延し、葉面積が減少する傾向が見られたが、個体数が限られていた為にどちらも有意な差としては検出されなかった。一方、乾燥ストレスにより強い発現誘導を示す<i>FcMYB1603</i>の機能解析を行うため、シロイヌナズナに遺伝子導入して恒常的に発現させたところ、長期の乾燥に対する強い抵抗性を示した。このシロイヌナズナ形質転換体を用いたマイクロアレイ解析によって、転写因子FcMYB1603の標的遺伝子を同定するための網羅的な探索を行っている。