著者
大宮 直記 下村 彰男 熊谷 洋一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.429-437, 1995-03-29
被引用文献数
3 6

本研究は,個人を越えて社会に共通する風景の捉え方の集合意識を「景」とし,その存在と近代以降の変遷の特徴について考察を行ったものである。分析対象として近代以降の東京の名所図会・百景を取り上げた。その結果,作品間に共通した風景の捉え方,つまり「景」の存在することを確認できた。その変遷は(1)明治前期(明治20年代まで),(2)明治後期・大正期,(3)昭和戦前期,(4)昭和戦後期の4期に区分された。変遷の特徴の流れは,対象選択における価値基準の共有から個人の嗜好への「個人化」と,対象の捉え方における観念的捉え方から,客体として視覚優位の捉え方へ,そしてさらに活動場所自体を風景とする捉え方へと変化する「場所化」の二点にまとめられた。
著者
大宮 直記
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.125-176, 1995

本研究は,今後の風景計画の検討に資するために,社会において共有される風景の捉え方の様式の存在を確認し,その近代から現代における変遷を明らかにして,変化の潮流について考察を行った。「序章」においては,背景,目的,対象,方法について述べた。近年まちづくりにおけるアメニティを考えるに際し,市民個々人の思い出や価値観を反映させた「景観づくり」,「風景づくり」の重要性が益々高まってきた。しかし一方で,そのような人それぞれの主観性に基づく風景論的立場では,普遍的結論へと帰納することが難しいともされてきた。しかしながら,デュルケムを中心とする社会学者らにより,個人を越え,集合的に共有される社会的意識である「集合意識」が提唱されており,風景の捉え方においても,そうした社会に共通する部分が存在することが明らかになれば,新しい風景計画に役立つと考え,研究を進めた。