- 著者
-
大島 進
- 雑誌
- 全国大会講演論文集
- 巻号頁・発行日
- vol.42, pp.41-42, 1991-02-25
渡来洋書研究翻譯担った幕末徳川三機関の蕃所調所洋学所開成所など江戸幕府官府に蔵された其渡来洋書のほぼ全容は、国立国会図書館「江戸幕府旧蔵洋書目録」収載3630冊及静岡県立中央図書館葵文庫「江戸幕府旧蔵洋書目録」収載2325冊に知れる。蘭書佛書獨書英書露書等の此渡来洋書には兵書も多く含まれ駿府学問所や兵学寮また東京図書館の所蔵経て今日に伝わり,蕃所調所開成所陸軍所などの翻譯出版物三十余種の法律書語学辞書兵書等の現況が「江戸幕府刊行物」(福井保昭和60年)に記載有り其所在と書物要目が知れる。此江戸幕府刊行物である官府江戸幕府官刻は江戸市井刊行の私版に対し官版また官板と呼ばれ、幕府陸軍所は蘭譯渡来兵書を官版兵書として出版するに際し携帯の便を考慮し和紙黄表紙和綴の小型本としまた片假名まじり漢字文体とした。草創明治陸軍の官府も譯述兵書を同種装丁にして出版。今日、此幕末明治の譯述兵書を、「明治期刊行図書目録」含む国立国会図書館蔵書目録國立公文書館「國書分類目録」ほか防衛研究所図書館大阪府立総合図書館山口県萩市立図書館などに兵事之部として貴重な冊数残るを識る。なお明治官府所蔵渡来洋書は国立国会図書館「帝園書館洋書目録」に収載有、幕末諸藩の渡来兵書課本26種存在は「近世藩校に於ける出版書の研究」(笠井助治昭和37年)に知れる。<補記.江戸幕府|日蔵洋書と森鴎外「戦論」>「江戸幕府旧蔵洋書目録」一連番号411「OVER DEN OOR LOG; NAGELATEN WERK D00R DEN GENERAAL V0N CLAUSEWITZ; VERTAALD D00R E.H. BR0WER,2DLN,BREDA 1864」は「十二番天甲クラウセイッツヲーフルデンヲールロフ兵全一綱千八百四十六年安政己未」墨筆覚書及「蕃所調所朱印」を内表紙に付す蘭文濁逸兵書で,其濁文原書相当本は東京大学総合図書館「森鴎外文庫洋書之部」整理番号W2OO-28『CLAUSEWITZ CARL V0 N HINTERLASSE WERKE UBER KRIEG UNDKRIEGFUHRUNG.BE R.DUMMLER,1832-34」である。此蘭書目次「ZESDE BERIGT EN IN DEN OORLOG」と獨書目次「6.KAPTIELNACHRICHTENIN KRIEG」また蘭書31頁「DIE ONZEKERHEID VAN ALLE BERIGTEN EN ONDERSTELLINGEN」と書58頁「JENE UNSI CHERHEIT ALLER NACHRICHTEN UND VORAUSSETZUNGEN」は各々封応し,譯文原書相当本譯述森林太郎識「戦論」明治34年刊本(日本近代文学館蔵)当該箇所「六戦ノ情報」「彼ノ諸状報及ビ諸予想ノ」が更に重封応する識る。