著者
大島 順子 久高 将和
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p> 2020年夏の世界自然遺産登録を目指す沖縄島北部(やんばる)では、横行する希少野生生物の密猟を防止するために、森林パトロール事業が実施されている。事業の発注者は、環境省および沖縄県で、パトロールに携わるのは地元の林業の担い手である。森林パトロールは、やんばる山地に生息する希少野生生物種の違法採集を抑止する取組みであるが、より効果的な対策を検討し、林業の担い手が森林パトロールを継続した事業として受入れていくための体制づくりが今後必要となる。野生動植物の生息域と人間の生活空間が重なるやんばるが世界自然遺産に登録されることは、やんばるにおける林業の大きな転換を意味し、自然環境保全をも目的とする持続可能な森林業を構築していくために、林業従事者の意識改革と能力開発を促す学習機会の創出が求められている。今回は、森林パトロールに携わる林業従事者に実施したアンケート結果から、林業従事者の森林パトロール事業に対する考えや役割、必要な知識や技術等を報告する。</p>
著者
高嶋 敦史 大島 順子
出版者
森林計画学会
雑誌
森林計画学会誌 (ISSN:09172017)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.59-65, 2019

<p>大径木は,亜熱帯性照葉樹林の保全において重要な指標であると考えられている。そこで本研究では,沖縄島やんばる地域に広がる約65年生の二次林において,大径木の分布と地形の関係を小流域レベルで調査した。その結果,胸高直径30cm以上の大径木の密度は全樹種合計で91.0本/haであり,そのうちイタジイが65.2%,イジュが20.9%,オキナワウラジロガシが6.4%を占めていた。やんばる地域の非皆伐成熟林を調査した既往の研究と比較すると,大径木の密度は半分以下に留まっていた。調査対象の小流域を尾根,中間斜面,谷の3つの地形に区分して大径木の密度やサイズを比較したところ,尾根では大径木の密度が谷や中間斜面の半分以下であった。また,イタジイやイジュは,尾根より谷でサイズが大きくなっていた。このように,やんばる地域の約65年生の二次林では,谷を中心にサイズの大きな幹が分布していた。また,谷から中間斜面にかけては過去の伐採を免れた老齢な大径木も僅かながら残っており,谷や中間斜面は二次林においても生態系管理や生物相保全の面で大きな役割を果たす重要な立地である可能性が示唆された。</p>
著者
大島 順子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.130, 2019

<p> 世界自然遺産登録を目指す「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が、2018年5月国際自然保護連合(IUCN)から登録延期の勧告を受け、日本政府が登録推薦を取り下げたことは記憶に新しい。行政が主導してきたこれまでの取組みに対し、多くの地域住民は登録に向けて様々な不安や危機感を持ち合わせている状況下にある。それは、「登録だけ」が目的にされ、そこに暮らす生活者の視点からの世界遺産の意義やその影響が具体的に語られないことも一因と言える。 筆者は、以前より地域の指導者と共にやんばるの森及びそこに生息する動植物の環境保全とその利活用において潜在的に地域が抱える課題について検討し、その解決に向けた取組みとして多様な学びの場を企画・運営している。今回は、やんばるの森の管理体系および林業に従事している人々に対する理解を深め、やんばるの森の活用の在り方を探ることを目的とした大学主催の公開講座の成果を報告する。世界自然遺産候補地の自然環境はそこに住む人々の生活の場でもあり、そこで林業に携わる人々と都市部に住む人々との間で体験型の学びの交流を通した再文脈化を図る学習の場としての機能を持ち合わせている。</p>