著者
諏訪 兼位 星野 光雄 大崎 雅一
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.63, pp.17-26, 2003-12-20 (Released:2010-04-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1

砂漠における風蝕作用では, 火成岩構成鉱物の安定性は, ボーエンの反応系列での鉱物の晶出順序とは逆である。すなわち, 早期晶出鉱物である, かんらん石, 輝石, Caに富む斜長石などは, 風蝕作用ではきわめて不安定であり, 分解してしまう。一方, 晩期晶出鉱物である, 石英, カリ長石, 白雲母などは, 風蝕作用に対する抵抗性が強く, 容易には分解しない。とりわけ, 石英は, 風蝕作用に耐えて最後まで生き残る。本研究では, カラハリ砂漠の12の地点とナミブ砂漠の2つの地点から砂漠砂を採集し, それらの構成物質, 粒度分布, 円磨度に関する詳細な分析・記載を行った。さらに, これらの分析結果と上記の鉱物安定性とを合わせて, 砂漠砂それぞれの形成史を, 主として“砂漠砂の成熟度”という観点から検討した。カラハリ砂漠の10の地点の砂漠砂は, 石英が94.7%-99.7%と圧倒的に多く, 長石は0%-0.5%, 有色鉱物は0%-4.0%, 岩石砂は0.3%-2.0%であり, 風蝕作用が十分に行われた, 成熟した砂漠砂である。カラハリ砂漠の残りの2地点のうち, 1地点の砂漠砂は, 石英が72.7%, 長石は1.3%, 有色鉱物は2.3%, 岩石砂は23.7%である。他の1地点の砂漠砂は, 石英が100.0%を占めるが, 石英粒の円磨度は低い。これらは, 風蝕作用が十分には行われていない, 未成熟の砂漠砂である。ナミブ砂漠の1地点の砂漠砂は, 石英が98.5%, 長石は1.0%, 有色鉱物は0%, 岩石砂は0.5%であり, 成熟した砂漠砂である。ナミブ砂漠の他の1地点の砂漠砂は, 石英が58.9%, 長石は16.5%, 有色鉱物は13.1%, 岩石砂は11.5%であり, 未成熟の砂漠砂である。
著者
田中 二郎 ビーゼリー メガン 大野 仁美 中川 裕 大崎 雅一 菅原 和孝 BIESELE Megan 野中 健一 太田 至 早木 薫 池谷 和信 早木 仁成
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

1.生活史に刻印された変容の歴史、定住化に伴う産業の変遷、畑の請負い耕作やヤギの委託の変化、および、グイ語、ガナ語と隣接諸言語との接触史に関する資料の収集などにより、狩猟採集民サンとカラハリ族をはじめとする近隣農牧民の交渉史、共生関係の動態が明らかにされた。2.サンの年長男性の生活史を収集・分析し、過去の狩猟活動、婚外性関係、成人式、農牧民より取り入れた呪術的観念等の詳細が明らかにされた。3.サンの食用および物質分化としての昆虫利用を調査し、とくに昆虫食が食生活に占める質的重要性を明らかにした。さらに、哺乳類、取類、爬虫類を含む動物の形状や行動に関する精密な認知が予見、凶兆、習性や形態の起源神話といった象徴的解釈と密接に相関していることを明らかにした。4.グイ語とガナ語の言語構造と語彙に関する記述を精密化し、正書法を提案した。5.過去30年間に及ぶ人口調査のデータを用いて、サンの人口動態を解明した。6.サンとカラハリの儀礼の比較分析から、サンはいくつかの要素をカラハリからとりいれてきたにもかかわらず、呪術的要素は伴わなかったことを明らかにした。7.子供の言語・身体発達と社会化の過程を、狩猟採集の衰退、平等主義の変容、学校教育の導入など「近代化」の諸問題との関連において明らかにした。8.カラハリ砂漠の辺縁部植生移行帯では、ジャケツイバラ科落葉喬木モパネは家畜の飼料、物質文化として重要なばかりでなく、宗教儀礼などにおいても重要な象徴的役割をもつことが明らかにされ、さらに、この土地の利用権をめぐる民族間の争いがアイデンティティーの問題との関連で生起し、総選挙など国家レベルでの問題にも深く関わっていることが明らかになった。9.平成9年度には、ボツワナ政府主導のサンの移住という歴史的な事件が発生し、これに伴う諸問題の解明が急がれたが、多くは将来の課題となった。