著者
樋口 慧 松田 晋哉 大嶽 浩司
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.353-361, 2015 (Released:2015-11-21)
参考文献数
24

病院あたり手術数の手術アウトカムへの影響(volume-outcome relationship(VOR))については,手術数が多い病院ほどアウトカムが良いという報告が多いものの,関連がないとの報告もあり,その真偽ははっきりしない.本研究では,日本の診療報酬に用いられるDPC(Diagnosis Procedure Combination)データベースを用いて,大腸癌切除術に関して病院あたり手術数と在院死亡率,術後在院日数との相関を検証した.2007年,2008年の7月から12月までに大腸癌切除術を施行した患者51,878人を,病院あたり手術数の少ない順にlow群 (L群),medium-low群 (M-l群),medium-high群 (M-h群),high群 (H群)の4群に分類した.各群の患者数はほぼ同数となるよう手術数のカットラインを設定した.性別,年齢,既往歴の患者要因,術式と病院あたり手術数に関してχ2検定・分散分析を実施し,ロジスティック回帰分析・Cox比例ハザードモデルを用いて病院あたり手術数の在院死亡,術後在院日数への影響を検証した.患者要因・術式を調整してVORを見ると,L群と比較した場合,手術が多くなる順に在院死亡のオッズ比は低くなった(M-l群,M-h群,H群の順にOdds Ratio (OR) 0.87,0.73,0.53).術後在院日数は,L群からH群の順に,26.7日,22.7日,20.8日,18.3日となり,L群と比較するといずれの群も有意差を認めた(p<0.001).DPCデータを用いた本研究では,大腸癌切除術において病院あたり手術数が多いほど,有意に低い在院死亡率,短い術後在院日数が認められた.このメカニズムに関して,実践による学習効果,選択的に治療成績のよい病院に患者が集まることなどが示唆されている.本研究では診療報酬データベースの特性から患者要因と術式要因を充分に調整しきれていない可能性があり,さらなる検討の余地が残る.
著者
武冨 麻恵 信太 賢治 大嶽 浩司 泉山 舞 山元 俊憲 蜂須 貢 増田 豊 亀井 大輔
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.514-519, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
14

神経因性疼痛の治療にSSRIが有効であるという報告がある.加えて近年新しく臨床使用されているノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(noradrenergic and specific serotonergic antidepressant:NaSSA)であるミルタザピンは三環系抗うつ薬やSSRIと異なる機序により脳内でノルアドレナリンとセロトニン神経を活性化する抗うつ薬である.本研究の目的は帯状疱疹関連痛(zoster-associated pain:ZAP)に対するミルタザピンの除痛効果を明らかにすることである.2010年〜2013年にZAPによるアロデニアを発症している患者を前向きに調査した.SSRIであるフルボキサミンを50mg/日で一週間内服し,その後NaSSAのミルタザピンを15mg/日で一週間内服し効果を確認した.評価項目は視覚アナログスケール(visual analogue scale:VAS),嘔気,眠気の発生率とした.エントリー症例12例(男性8例.女性4例)の平均年齢は70歳(58〜79歳)であり,うちミルタザピンを7日間服用できたのは8例であった.ミルタザピンを内服中に中止となった3例はいずれも眠気とふらつきとが主な理由であり,7日間服用できた症例の中でも1例,眠気のため半量しか服用できなかった症例があった.ミルタザピン服用の8例中4例でVASは減少し,嘔気が問題となった症例はなかった.抗うつ薬にはさまざまな種類があり,どの薬を選択するかは難しいが,ミルタザピンは眠気の副作用があるもののフルボキサミン無効例にも効果があった.