著者
伊藤 栄作 大平 寛典 斉藤 庸博 柳 舜仁 筒井 信浩 吉田 昌 柳澤 暁 山内 栄五郎 鈴木 裕
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.850-856, 2016-09-01 (Released:2016-09-22)
参考文献数
19
被引用文献数
1 3

症例は53歳の女性で,胃癌に対して腹腔鏡補助下胃全摘術を施行した.再建は機能的端々吻合によるRoux-en Y再建を行った.術後,食道空腸吻合部の屈曲による通過障害を発症し,内視鏡的な処置を繰り返し行ったが改善を認めず,術後1年の時点で磁石圧迫吻合術(山内法)を施行した.術後経過は良好で食事摂取可能となった.自験例での通過障害の原因としては,吻合部が縦隔内へ引き込まれたこと,盲端のステープルが挙上空腸へ癒着したこと,術後に食道が短縮したことなどが考えられた.山内法は磁石を用い管腔臓器を吸着し,挟まれた組織の壊死をじゃっ起し瘻孔を形成する治療法である.自験例は食道空腸吻合部が縦隔内に近い位置に存在するため再吻合術は困難が予想された.屈曲部に対する吻合を行う場合は吻合すべき腸管同士は近接しており,山内法による空腸-空腸吻合術は良い適応と考えられた.
著者
伊藤 栄作 大平 寛典 吉田 昌 柳澤 暁 山内 栄五郎 鈴木 裕
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.332-337, 2015 (Released:2015-08-31)
参考文献数
19

症例は幼少期から精神発達遅延が指摘されている16歳,女性.磁石誤飲と肛門内への磁石挿入後の下腹部痛を主訴に来院.直腸内に磁石を認めたが経肛門的に摘出困難であり,CTで磁石による小腸直腸瘻と診断した.自然排泄されることを期待し,保存加療を選択した.しかし,自然排泄されないため第20病日に腹腔鏡下に磁石摘出術を施行.2つの磁石が吸着し一塊となって小腸側粘膜下に存在し,直腸壁は治癒していたため小腸部分切除のみで磁石を摘出しえた.磁石誤飲はCT検査でhalationを起こすため位置の正確な評価は難しく,自然排泄されないことがあるため経過観察は慎重に選択しなければならない.今回は手術時期を遅らせたことにより小腸側に磁石が残っている状態で直腸壁は治癒,閉鎖していたため直腸損傷なく磁石を摘出することができた.