著者
井村 隆介 大木 公彦 青山 尚友 山本 琢也
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

霧島火山は,鹿児島・宮崎両県の県境に位置する第四紀の複成火山であり,歴史時代の噴火記録も多く残されている活火山である.現在は比較的静穏な状態にあるが,明治・大正期にはさかんに噴火していたことが知られている.しかし,その当時の噴火活動の実態についてはほとんど知られていなかった.本研究では,この明治・大正期における霧島火山の噴火資料収集と,それらを用いて当時の火山活動の実態解明を行うことを目的とした.当時の霧島火山の噴火に関する文書や画像資料を可能な限り収集し,データベース化した.これらの中にはこれまで知られていなかった貴重な資料が多数含まれていた.霧島火山の1800年代後半から1900年代前半の噴火の実態について,集められた写真,絵画,新聞記事,日記,目撃者の談話などから検証した.その結果,当時の霧島御鉢火山は爆発的な噴火を繰り返し,周辺の広い範囲に火山礫や火山灰を降らせていたことがわかった.これらの活動によって人的被害も生じていたが,それらは,登山客や猟師など火口に近いところに偶然いた人たちであった.御鉢火山には現在も多くの登山・観光客が訪れており,噴火の際には,まず,これらの人たちの速やかな避難が重要であることが明らかとなった.地域防災の啓蒙,教育のために宮崎県総合博物館で今回得られた資料の一部を展示・公開した.今後も明治・大正期の霧島噴火に関する展示を行い,活火山としての霧島火山を紹介して,噴火防災意識の向上に資することができた.
著者
内村 公大 鹿野 和彦 大木 公彦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.Supplement, pp.S127-S153, 2014-08-31 (Released:2014-12-26)
参考文献数
114
被引用文献数
6

鹿児島湾沿岸は現在もリフティングを続ける地域であるが,湾奥にあってマグマが集積して隆起している姶良カルデラ縁や,開析が進んだ姶良や国分の谷などで,リフトを充てんする火砕流堆積物と湖沼成堆積物,内湾~浅海堆積物が観察できる.このサクセッションは,鹿児島リフトのリフティングと火山活動,そして海水準変動とが連関したプロセスの中で形成されたもので,複雑な火山堆積システムをなしているように見える.いまだ未解明な点が多々あるが,島弧内リフトの火山堆積システムを紐解くひとつの事例として観察すると,思わぬことが見えてくる可能性がある.
著者
内村 公大 大木 公彦 古澤 明
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.95-112, 2007-03-15
被引用文献数
1 2

鹿児島県八重山地域の地質層序を明らかにするために詳細な地質調査を行い,点在する鮮新統湖成層(郡山層)の対比を試みた.その結果,この地域に12の地層単元が識別され,郡山層は下位より厚地泥岩部層,峠砂岩部層,湯屋泥岩部層,花尾凝灰角礫岩部層に分けられた.また,郡山層堆積時に貫入した安山岩類(茄子田安山岩類)が識別され,湯屋泥岩部層中に2枚の火砕流(草木段火砕流・宮脇火砕流)が認められた.宮脇火砕流からは2.5Ma前後のK-Ar年代測定値が得られた.一方,八重山地域に分布する郡山層の珪藻化石群集として,湯屋泥岩部層最下部からStephanodiscus astraea群集,湯屋泥岩部層下部ではCyclotella michiganiana群集,宮脇火砕流を挟在する湯屋泥岩部層上部ではAulacoseira ambigua群集が認められた.火砕流と珪藻化石群集の対比から八重山地域に点在する郡山層はほぼ同時代に堆積した湖成層であることが明らかになった.
著者
大木 公彦
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.99, no.12, pp.xxix-xxx, 1993-12-15
被引用文献数
1
著者
冨安 卓滋 松山 明人 井村 隆介 宮本 旬子 大木 公彦 穴澤 活郎 赤木 洋勝
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

イドリヤ川では鉱山地域周辺において、無機水銀の濃度は、鉱山からの距離に伴って減少するが、メチル水銀濃度は、流下に伴い一度上昇した後に低下することが明らかとなった。また、河川底質からの溶出実験により、河川水と底質を一緒に保存すると水中の総水銀濃度は数倍になる一方で、メチル水銀濃度は数百倍にまで上昇する現象が見られた。これは、河川水中メチル水銀の起源として、底質が重要な役割を担うことを示唆するものであった。また、周辺地域への水銀の拡散状況を調べるために、河川底質、川岸土壌、草原土壌、森林土壌表層中の水銀濃度を測定した結果、水銀鉱山に最も近い地点では、河川底質中の総水銀濃度が最も高かったが、下流地点では、草原土壌の総水銀濃度が最も高く、また、メチル水銀濃度は、川から離れるに連れて高くなる傾向が見られた。河川底質、周辺土壌に関して、蛍光X線分析をおこなった結果、河川沿岸土壌、周辺草原土壌は、森林土壌と河川底質の混合層として存在することが明らかとなってきている。これらをふまえて、今年度は水銀の周辺地域への拡散における川による運搬の影響、また、水銀の化学形を明らかにするために、水銀鉱山付近とその約2km下流の2地点において、川岸から山へ向かって約20mおきに各4点、採土器を用いて土壌を柱状に採取した。採取した試料は柱状図を記載し、層ごとに切り分け、石、根などを取り除いた後、チャック付きビニール袋に保存し日本に持ち帰った。現在下流地点の総水銀濃度の測定が終了、水平方向では川岸から2点目に最高水銀濃度が観察され、また、鉛直方向には層毎に大きく水銀濃度が変動することが確認された。これらは、河川の氾濫によって運搬された水銀汚染底質の堆積によるものと考えられる。