著者
高尾 和宏 大村 寛
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.190-193, 2008-06-01

刎橋が,江戸時代に静岡県北部,大井川の上流部に存在した。古文書の調査によれば,架橋当初の1607(慶長12)年から1692 (元禄5)年まで85年間の橋長は72.8m(40間)のままであった。ところが1692年に刎橋の10km上流で推定3,600haの森林が伐採され始め,1700(元禄13)年までの9年間に皆伐状態にされた。森林の伐採後,1702(元禄15)年に橋長は85.5m(47間)となり,以後,1729(享保14)年に91.0m(50間),1815(文致8)年に100.0m(55間)と,架け替えのたびに長くなっている。架橋場所は橋台を建設する場所の限定から,毎回同じ場所であった。橋長の延長は,大井川の川幅の拡大によるものであろう。すなわち,洪水により流失した刎橋は,拡大した川幅に併せて架け替えされたと推測される。さらに,洪水の原因は,上流部における大規模伐採で森林の保水機能が失われたことによるものと推測される。
著者
高尾 和宏 大村 寛
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.190-193, 2008 (Released:2008-12-09)
参考文献数
13

刎橋が,江戸時代に静岡県北部,大井川の上流部に存在した。古文書の調査によれば,架橋当初の1607(慶長12)年から1692(元禄5)年まで85年間の橋長は72.8 m(40間)のままであった。ところが1692年に刎橋の10 km上流で推定3,600 haの森林が伐採され始め,1700(元禄13)年までの9年間に皆伐状態にされた。森林の伐採後,1702(元禄15)年に橋長は85.5 m(47間)となり,以後,1729(享保14)年に91.0 m(50間),1815(文政8)年に100.0 m(55間)と,架け替えのたびに長くなっている。架橋場所は橋台を建設する場所の限定から,毎回同じ場所であった。橋長の延長は,大井川の川幅の拡大によるものであろう。すなわち,洪水により流失した刎橋は,拡大した川幅に併せて架け替えされたと推測される。さらに,洪水の原因は,上流部における大規模伐採で森林の保水機能が失われたことによるものと推測される。
著者
高尾 和宏 大村 寛
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.121-125, 2007 (Released:2008-05-21)
参考文献数
13

17世紀,江戸時代の元禄期に,江戸町人の紀伊国屋文左衛門と駿府町人の松木屋郷蔵は,共同で幕府御用材の伐採と運材を請け負った。御用材の伐採場所は,静岡県中央部に位置する大井川上流部の森林であった。その伐採期間は元禄5年(1692年)から元禄13年(1700年)までの9年間で,幕府へ納入した材積は6万尺締(20,160m3)である。御用材は,駿河湾まで大井川を管流され,駿河湾から江戸湾まで船輸送された。大井川での管流は,木材の損傷が大きく,材引取りの合格率は低かった。また,労務者の賃金が低かったことから,収入を得るために細い立木までも伐採をしたとされている。このため,推定3,600haの森林が皆伐状態にされた。御用材の伐採場所は,3,000m級の高山に囲まれた急峻な森林地域で,静岡県内でも降水量の多い地域である。
著者
大村 寛
出版者
公益社団法人 砂防学会
雑誌
砂防学会誌 (ISSN:02868385)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.17-24, 1975-07-05 (Released:2010-08-06)
参考文献数
7

1974年5月9日に発生した伊豆半島沖地震による山崩れを, 地震前後に撮影した二組の空中写真によって解析した。半島南部に生じた山崩れの8割は凝灰角礫岩からなる70°~90°の海蝕崖において, 残り2割はやや内陸側の蛇石噴出物からなる60°前後の斜面で見られた。これらの半数以上が過去の崩壊地であった。崩壊個数は震央から遠ざかるにつれて減衰する傾向にあるが明瞭ではなく, 最大振幅が27cm以下になる所で限界になる。また, 崩壊個数の方向性は非凸型斜面で北西を中心にして卓越するのに対し, 凸型斜面ではこれを90°回転した方向に卓越する。一方, 崩壊面積は西と南向き斜面で大きく, 凸型と非凸型の差は小さい。これらの事実を説明するのに傾斜やS波の震動方向は重要な因子ではない。地震 (断層) を生ぜしめた最大圧縮応力の方向に面した斜面が最も崩れやすいと考え, 地震後に確認されたN75°W方向の活断層とNS方向の共役断層からこの主応力方向を求めた。主応力を受ける面から角θ回転した斜面の崩れやすさがcosθに比例すると考えれば, 非凸型斜面での崩壊方向を説明することができる。主応力方向に振動が卓越すれば, 対応する断層に平行な割れ目群 (リニアーメント) のどれかが崩壊と結びつきやすい。また, 割れ目系に規制された地形系で凸型斜面の崩壊方向を理解でき, 割れ目で囲まれたブロックの大きさが崩壊面積の一因子になる。
著者
大村 寛
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.166-172, 1973-05-25

新聞の切り抜きを整理して, 降雨後, 山崩れにより人が死ぬまでのプロセスを調べた。その結果, 次のことがわかった。1.被害の大半は, 連続雨量が300mmに達するまでに, 標高100m未満の人口密度の低い所で発生している。2.被害をもたらした山崩れの大きさは500m^2(長さ25m×幅20m)前後であり, 崩れた土量が家屋の全壊率や, 死亡率に影響を及ぼす。3.救出に要する時間はできるだけ短い方がよい。現状では, 救出作業は機械化が必要。4.災害は夜に発生しやすく, 未成年者の死亡率は高い, 負傷は頭部と足に多い。5.前もって危険を予知し, 避難することが望ましい。