著者
大橋 由美
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.591-603, 2008-09-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本稿の目的は, 循環型社会構築に向け注目を浴びている自治体レベルでの家庭系生ごみの堆肥化事業について, 今後, 事業を進めていくために何が重要であるかを明らかにすることである. この点を検討するために, 本稿では, これまで堆肥化事業に着手してきたすべての自治体から得られた終了要因と問題点を基に, 事業の終了と継続に関わる要因を考察した. 事業終了自治体では, 施設の老朽化が顕在化したところで, 取組みをやめる自治体が多く, 終了するか否かの決定には, 堆肥需要とコスト負担の問題が影響を与えていた. 需要を左右するのは堆肥の質であり, ここには分別の徹底や排出される生ごみの組成が日々変化するという家庭系生ごみ特有の問題が関係している. 近年, 多くの自治体が事業を開始しているが, これら自治体が施設の更新時期を迎えた時に, 事業を継続できるかは, 需要のあり方を左右する堆肥の質の問題をいかに克服できるかが重要となる.