著者
大池 真知子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

HIV/エイズに関する社会運動の一環として、アフリカで草の根の女たちが書いている文章を分析し、HIVの経験を女たちがいかにとらえ、書くことでいかに自己と社会を変革しているのかを考察した。ライフストーリーの聞き書き集では、語り手と書き手にギャップがあるため忠実な再現は困難であり、むしろ創作的な要素を含む「クリエイティブ・ノンフィクション」の手法が有効だと分かった。女たち自身が書くライフストーリーでは、母親が子どもに宛てて書く家族の記録「メモリーブック」が、家族が生き抜くのに有効であることが分かった。
著者
大池 真知子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究課題は、社会運動における小説の働きを、アフリカのHIV/エイズをめぐる社会運動を例に考察した。アフリカのHIV/エイズのキャンペーンでは、映画、演劇、テレビ・ラジオ・ドラマといった視聴覚を使う物語芸術が応用されている。これらは受け手の五感に作用して、主人公との一体化をもたらし、HIV/エイズ問題にたいする共感的な態度を熟成する。それに対し小説は、社会の異性愛主義言説を主人公が内面化していく過程を批判的に表象する。読み手は距離をもってその過程を追体験し、分析的かつ情緒的にエイズ問題を認識する。視聴覚に訴える映画等と言語のみを用いる小説という両物語芸術は、HIV/エイズの社会運動において補完的な働きをしている。