著者
杉生 憲志 平松 匡文 徳永 浩司 菱川 朋人 大熊 佑 春間 純 清水 智久 伊達 勲
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.37-43, 2013 (Released:2013-01-25)
参考文献数
35
被引用文献数
4 4

硬膜動静脈瘻では脳・脊髄の硬膜上に動静脈短絡が形成され, その症状と予後は主として静脈側によって規定されることから, 静脈導出路の形態に基づく分類が臨床的にも重要である. 特に脳表静脈に逆流がみられる例では, 早急な治療が必要とされる. 治療は手術, 放射線, 血管内治療が単独, または併用で行われてきたが, 現在ではその中心的役割を担うのは血管内治療である. 一般に, 病変が静脈洞壁に存在するsinusal type (海綿静脈洞部や横静脈洞部など) では罹患静脈洞をコイルで閉塞する経静脈的塞栓術 (TVE) が, 静脈洞のない硬膜上に存在するnon-sinusal type (前頭蓋底やテント部, 脊髄など) では液体塞栓物質で瘻孔部を閉塞する経動脈的塞栓術 (TAE) が主流となる. 血管内治療で根治が困難な, あるいは治療リスクの高いnon-sinusal typeに対して, 手術による瘻孔閉塞 (静脈側の凝固切離), あるいは状況によっては定位的放射線治療が行われる.
著者
西堀 正洋 劉 克約 和氣 秀徳 大熊 佑
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

High mobility group box-1(HMGB1)は、組織障害に由来する炎症惹起物質として、今大きな注目を集めている。研究者は、これまで取り組んできた脳虚血や脳血管攣縮に対する抗 HMGB1抗体の治療効果に大きなヒントを得て、現在治療法のない交通事故や転落事故後の脳外傷に対する抗体治療の応用について検討した。 その結果、ラットの脳外傷後に局所の神経細胞の核から細胞外へと HMGB1 が放出されること、HMGB1 の活性を抗 HMGB1 抗体の投与で中和すると、血管-脳関門の破綻が抑制され、脳浮腫を著明に抑制できることを実験的に証明した。抗 HMGB1 抗体による脳外傷治療は有望である。