著者
長永 真明 大西 丈二 梅垣 宏行 葛谷 雅文
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.321-326, 2020-07-25 (Released:2020-09-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

IgG4関連疾患は高齢男性に多く,自己免疫異常や血中IgG4高値に加え,全身諸臓器の腫大や結節・肥厚性病変などを認める原因不明の疾患である.IgG4関連疾患ではしばしばリンパ節腫大を伴うが,臨床的に悪性リンパ腫との鑑別が求められる.今回我々はIgG4関連疾患に悪性リンパ腫を合併した超高齢者の症例を経験したので報告する.症例は85歳男性.X-6年に自己免疫性膵炎を指摘されていた.X-1年10月にIgG4関連下垂体炎と診断され,続発性副腎不全に対する補充療法としてヒドロコルチゾンが開始となった.X年2月に中枢性尿崩症を併発したためデスモプレシンが追加となった.X年11月発熱に加え,弾性硬で可動性のある圧痛のない全身性リンパ節腫脹を認めたため入院となった.入院後右腋窩リンパ節生検を施行し,病理所見よりびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断した.年齢やPerformance Statusなどを考慮した結果,積極的治療は行わず,症状緩和目的でのステロイド投与の方針となり,入院55日目転院となった.悪性リンパ腫とIgG4関連リンパ節症との鑑別は臨床経過,病理所見,血中IgG4値などの検査データ,他臓器病変の有無などを元に総合的に判断する必要がある.今までのIgG4関連疾患に悪性リンパ腫を合併した症例は概ね60~70歳台であり,本症例の85歳での報告は最高齢である.しかしIgG4関連疾患,悪性リンパ腫共に高齢者に多い疾患であり,一般内科医や老年内科医として知識を深めておく必要があると考えられる.
著者
大西 丈二 益田 雄一郎 鈴木 裕介 石川 美由紀 近藤 高明 井口 昭久
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.641-648, 2004-11-30
被引用文献数
5 1

加齢に伴いこれまで担ってきた家庭的・社会的役割を喪失することの多い高齢者では,活動性が低下しやすく,時に身体的・精神的機能低下を引き起こしてしまうこともある。地域で行われる余暇活動の開発は高齢者の活動性やQuality of Life (QOL) の維持・向上に役立つものと思われるが,こうした余暇活動の効果はまだあまり実証されていない。今回われわれは農村部に居住する424名の高齢住民 (平均年齢71.6±4.8SD歳) を対象に,余暇活動を楽しむことと幸福感等との関連を明らかにするため調査を行った。調査項目として生活環境や,日常生活動作 (ADL) などの身体状況,外出の頻度,余暇活動を楽しいと感じる程度およびPGC主観的幸福感を含めた。この結果,楽しいと思う活動は「入浴」,「食事」,「テレビ」の順であった。余暇活動の中では「食事」や「入浴」を楽しむことがPGC主観的幸福感と正の関連を持ち,逆に「パチンコや麻雀などの賭けごと」を楽しむことは負の関連を示した。「動物の相手」を楽しむ者は閉じこもりが少なかった。PGC主観的幸福感を従属変数とする回帰分析では,人間関係の悩み,「パチンコや麻雀などの賭けごと」を楽しむこと,基本的ADL,体の痛み,独居を予測値とした有意なモデルが構築された。これらの結果は今後地域で高齢者の余暇活動を促進していくにあたり,有用な知見を与えた。