著者
金子 直矢 伊東 孝紘 勝田 肇 渡辺 敏暢 岡田 和也 阿部 博 大西 亮吉
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2022-IOT-56, no.3, pp.1-8, 2022-02-28

自動車の遠隔運転では,従来運転者が車内で知覚していた車の視覚・聴覚情報を遠隔地にいる運転オペレータに対して安定的に伝送しなければならない.本研究は,移動体通信回線を備えた自動車から遠隔地のオペレータ端末への映像伝送に WebRTC を用いる環境を想定し,通信品質向上への MP-QUIC プロトコルの適用可能性検証を行う.WebRTC は,インターネットにおいて端末・サーバ間で P2P 通信路を確立し通信を行うため,遠隔運転に必要な低遅延な通信を実現できる可能性がある.しかし,移動する自動車からの通信は不安定になることもあり,遠隔運転の安全性を高めるためにより安定した通信方式を確立しなければならない.そこで,本研究では複数の異なる通信回線を利用して通信を行うマルチパス通信プロトコルの一つである MP-QUIC を採用することにより,WebRTC 通信の可用性および品質の向上を試みる.MP-QUIC は,ユーザランドで動作し低遅延なトランスポートプロトコルである QUIC を対象にマルチパス通信技術を導入しており,遠隔運転に必要な通信品質を安定的に提供できる可能性がある.評価では,WebRTC を用いた映像伝送システムに対して MP-QUIC の組み込み,市街地を走行する自動車から複数の移動体通信回線を用いた映像メディアの伝送を実施し,遅延および映像品質の計測を行う.
著者
金子 直矢 伊東 孝紘 渡辺 敏暢 阿部 博 大西 亮吉
雑誌
マルチメディア,分散協調とモバイルシンポジウム2021論文集
巻号頁・発行日
vol.2021, no.1, pp.1059-1067, 2021-06-23

本研究では,WebRTC を用いたアプリケーションにおいてマルチメディア伝送の可用性と柔軟性を向上するためにマルチパス技術を導入し,メディアストリームごとのポリシに基づき通信パスの利用形態を制御する手法を提案する.WebRTC を用いたアプリケーションとして車両やロボットの遠隔操作システ ムといった事例が存在する.遠隔操作システムは,操作に必要な環境情報を伝えるために複数のカメラや マイクを併用しており,操作者のニーズに応じて必要なメディアストリームを安定的に伝送する通信基盤 が重要である.そこで WebRTC を用いる遠隔車両運転システムをターゲットとして,以下の 3 手法を導入し組み合わせることを提案する.(1) IP ToS 値を用いたメディアストリームの識別による Web ブラウザとネットワーク制御の連携 (2) マルチパス通信技術の導入による通信の選択肢多様化 (3) 優先度・重要度 に基づくメディアストリームごとのパス利用形態制御.これらの手法を,遠隔車両運転システムが用いるモバイル通信サービスを利用して検証し,実現性と通信制御の柔軟性の向上に寄与することを示した.
著者
大西 亮吉 アルトゥンタシュ オヌル 吉岡 顕
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.184-195, 2016-01-15

非通信車両の混在環境における協調的な隊列走行の実現に向けて,隊列内の通信成否の確認を車間時間内に行うこと,そして通信成否の確認結果に基づき,隊列を適切に編成することの2つの課題の解決方法について述べる.前者の課題に対しては,隊列内の車両間のACKをまとめ送りする車群通信を提案する.一般的な車間時間1秒の場合の隊列の上限台数は単純にACKを送る方法で11台であったが,車群通信によって物理的な限界台数である60台まで拡張できることを示した.また短縮IDを利用することにより,24台まで1回のブロードキャストで隊列内のすべての車両間の通信成否を確認することができ,従来手法に対して効率的であることを示した.後者の課題に対しては,単純な行動指針を与えて,車群通信によって協調するマルチエージェント型のシステムを提案し,通信状況の変化,特に通信障害の発生や非通信車両の割込みに対して適切に隊列を編成できることを示した.Toward the realization of cooperative vehicle platooning in a mixed environment of non-communication vehicle, we focus on two issues: communication failure detection within a vehicle headway time and vehicle platoon organization adaptive to that detection. As a solution for the first issue, we propose a group communication to bundle multiple ACKs among vehicles in the platoon. During the typical headway time of one second, the platoon may only contain 11 vehicles in the naïve ACK fashion. Using the group communication, we show that it can be expanded up to 60 vehicles that is the physical limit number. Moreover up to 24 vehicles, by utilizing the short ID, it is possible to check the communication failure among all vehicles in the platoon in one broadcast time. For the second issue, we propose a multi-agent system to be coordinated based on simple action guidelines, using the group communication. We show that it is possible to adaptively organize vehicle platoon to the communication situation changes, especially of communication failure and of non-communication vehicle interruption.
著者
松本 直人 大西 亮吉 阿部 博
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2020-IOT-51, no.6, pp.1-6, 2020-08-27

近年,携帯電話網を通じたデバイスの常時接続が増加している.しかし携帯電話網では,デバイス通信に用いる IP アドレスを地域毎に細かく管理していない.このため全国に展開する大量のデバイスがサーバ接続した時,一般的なサーバ負荷分散処理を経由すると,多数のサーバに地域毎のデータが分散してしまう問題がある.本稿ではデバイス通信時のサーバリクエストにエリア属性を付与することにより,地域に閉じたデータ処理へ集約する仕組みについて考察する.