著者
大西 好宣
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.39-53, 2000

ラオスは人口483万人という熱帯の小国である。国際的な注目度は低く、情報も少ない。だがこの国にとって日本は第一の援助供与国であり、人的資源開発への支援を通じて今後ますます関係が深まるだろう。本稿では、最も情報が手薄な分野のひとつであるラオスの教育とメディアについて、タイとの比較という観点から、筆者が首都ビエンチャンで実施した調査の結果を踏まえて報告したい。もともとラオスの教育は、成人識字率わずか58%という数字が表すように、大きな問題を孕んでいる。このような中でメディアがその役割を果たし、質の高い教育番組を提供できれば、学校・教員数の少なさは補完できる。国営テレビ局は、「ラオス人はタイのテレビばかり見ている」との風評とは裏腹に比較的健闘している。タイの番組に比較すれば視聴者の自家製番組の質に対する評価は総じて低いものの、ラオス国民のタイに対する複雑な感情が数字を通じて見えてくる。
著者
大西 好宣
出版者
千葉大学大学院人文公共学府
雑誌
千葉大学人文公共学研究論集 = Journal of studies on humanities and public affairs of Chiba University (ISSN:24332291)
巻号頁・発行日
no.35, pp.112-123, 2017-09

[要旨] 2014年3月、文部科学省による本邦大学国際化のためのプロジェクト「国際化拠点整備事業(通称グローバル30またはG30)」は、無事5年間の事業期間を終えた。東京大学や京都大学を始め、国内で最も威信が高いとされる13の大学が参加したこの事業は、その終了後、いずれの大学も所期の目標をほぼ達成したと公に評価された。しかし、事業の主要な目的のひとつである外国人留学生受け入れ促進について、比較的甘い評価が下されているなど、当該事業評価には幾つかの方法論上の問題がある。また、同評価で触れられていない事業終了後の課題が二つある。ひとつは、G30専任教員の質を含む、教育の質に関するより詳細な分析・検討がなされるべきであること。もうひとつは、G30の各プログラムを修了した学生の就職や進学に関するデータを収集・蓄積し、英語学位プログラムの出口戦略を再検討することである。
著者
大西 好宣
出版者
千葉大学大学院人文公共学府
雑誌
千葉大学人文公共学研究論集 = Journal of studies on humanities and public affairs of Chiba University (ISSN:24332291)
巻号頁・発行日
no.38, pp.277-291, 2019-03

[要旨] 1983 年、ハーバード大学の Howard Gardner は、言語的知能、論理数学的知能、音楽的知能など計 7 種類の知能から構成される多重知能理論を発表した。当該理論については、言葉の定義等を含め主として海外において様々な批判があるものの、さらなる研究及び同理論に基づいた教育実践が欧米及びアジアで広く展開されている。しかしながら、当該理論がもともと心理学を基盤としているためか、わが国の教育現場では現在に至るまで余り馴染みがなく、わが国の初等・中等教育特有の「教科」という強固な基盤をなかなか超えられないでいる。そこで本稿では、グローバル化のための諸政策を進める現代の日本において、多重知能に関する当該理論が果たしてどのような意味を持つのかについて改めて考察し、研究を進めるためのヒントを複数提示しつつ、演繹的アプローチによるもの、帰納的アプローチによるもの各々について研究のための具体的な提言を行う。
著者
大西 好宣
出版者
日本国際教養学会
雑誌
日本国際教養学会論集 = JAILA Journal (ISSN:21894183)
巻号頁・発行日
no.5, pp.51-62, 2019-03-10

[SUMMARY]Since 2010, the word "global talent," an educational slogan, has been booming in Japan. Expecting substantial educational effects of international education, the Japanese government has been strongly encouraging universities to send more students abroad to study by providing them with a huge amount of subsidies. As a result, the number of the Japanese students who go abroad to study has been increasing year by year, but more than 60% of them stay abroad less than a month. The purpose of this study is to clarify how less scientific and academic most existing research is when it comes to the educational effect of numerous study abroad programs, short-term ones in particular. This is because they are neither based on scientific evidence nor conducted using a scientific approach. This study also shows that the subsidies have been given to universities and students without economic rationality.
著者
大西 好宣
出版者
日本ラグビー学会
雑誌
ラグビーフォーラム : 日本ラグビー学会誌
巻号頁・発行日
no.11, pp.37-47, 2018-03

[Abstract] The first rugby team in the U.S. was formed at Harvard University in 1872, and its first match was with Canada's McGill University in May 1874. After that, rugby became very popular not only on the East Coast but also all over the U.S., particularly in the 1890s. However, with the rise of American football, rugby in the U.S. started to decline as early as the beginning of the 20th century, but we do not know much about what was behind this decline. This paper, therefore, focuses on the background of how rugby in the U.S. was replaced by American football. It also explains a similar situation in Japan in the late 1990s where rugby lost fans to a professional soccer league. The paper also stresses the importance of the U.S. as a future market for rugby fans in the world, though they are not necessarily familiar with U.S. rugby and its history.
著者
大西 好宣
出版者
千葉大学大学院人文公共学府
雑誌
千葉大学人文公共学研究論集 = Journal of studies on humanities and public affairs of Chiba University (ISSN:24332291)
巻号頁・発行日
no.36, pp.168-183, 2018-03

[要旨] 21世紀に入って以降、グローバル人材という用語が頻繁に用いられている。しかし、その意味するところは実に千差万別であり、人々がグローバル人材に期待するものも違う。そもそも、この用語が最初に登場した頃は、現在とは異なる意味合いで用いられていた。そこで本稿ではまず、これまでのグローバル人材の意味合いや用語に関する主要な定義、研究成果などをまとめて概観する。また他方で、現実の新聞記事に見るグローバル人材の報道内容がどのようなものかについても併せて比較検討する。その結果判明したことは、新聞が報じるグローバル人材は、英語や留学と関連づけたものが圧倒的に多く、従前の国際人に対するイメージと実は大差ない。教育関係者は本来、主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感といった21世紀型グローバル人材に必要な能力をいかに育てるかといった点に目を向けねばならないはずである。