著者
今村 昌平 大西 晃生 山本 辰紀 辻 貞俊 村井 由之
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.179-183, 1994-06-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
2 2

症例は35歳男. 明らかな先行症状はなく, 四肢遠位部優位の運動・感覚性末梢神経障害で発症し, 寛解と増悪を示す慢性の臨床経過を呈した. 増悪時期に, 急激な視力低下を伴う両側視神経炎が発症し, 同時に髄液の蛋白細胞解離, 末梢神経伝導検査異常および腓腹神経有髄線維の軸索変性および節性脱髄所見が認められた. 図形反転視覚誘発電位検査でP100潜時の延長は認められなかった. ステロイド投与により, 中心暗点の消失と視力の改善ならびに感覚障害, 深部反射異常, 末梢神経伝導検査異常および髄液蛋白高値の明らかな改善を認めた. それ故, 本例の視神経障害を慢性炎症性脱髄性多発根神経炎の一症状であると判断した. 本例は中枢神経系と末梢神経系の両方が障害された文献上比較的稀な1例である.
著者
大西 晃生 一井 貞明 大森 久光 永木 譲治
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.377-381, 1984-12-01

健康人(volunteers)8例の8腓腹神経の有髄および無髄神経線維の径と密度の定量的解析を, TGA-10 particle analyzer(Carl Zeiss社, West Germany)を用いて行った. 総有髄線維密度は, (7.4±1.3)×10^3/mm^2(平均値士標準偏差)であった. 小径有髄線維群と大径有髄線維群のborder diameterは5.4±0.5μmで, 小径有髄線維密度は(4.5±0.9)×10^3/mm^2, 大径有髄線維密度は(2.9±0.7)×10^3/mm^2であった.無髄線維密度は(27.9±5.8)×10^3/mm^2であった. 無髄線維直径分布のpeak diameterは0.88±0.15μmで, 線維直径の中間値は0.86±0.12μmであった. また8例の有髄線維および無髄線維の直径分布の平均直径分布ヒストグラムを明らかにした. これらの定量的解析所見は今後の末梢神経障害例の腓腹神経の組織定量的研究における比較対照所見として不可欠である.(1984年8月2日 受付)
著者
大西 晃生 山本 辰紀 村井 由之 池田 正人
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.235-240, 1992-09-01

末梢神経障害のない134(年齢11-87歳;男66,女68)名における四肢遠位部の冷覚および温覚弁別閾値を, Thermal Threshold Testerを用いて評価し, 患者の感覚障害の病態および重症度の把握に有用な基礎データを得ることを目的とした. 基礎データとして, 各年代毎に, 前腕遠位部(上肢)と足背部(下肢)における各弁別閾値の平均値およびその予測95%信頼限界の上限値を得た. 上・下肢のいずれの閾値も, 加齢とともに明らがな上昇を示した(P<0.0001). 感覚障害を呈する患者の感覚機能の評価には, 年齢に応じた正常対照値との比較検討が重要であると判断された. 6名の志願者(21-66歳)において, 各弁別闇値の評価を約3週間の間に6回繰り返し, 各人毎に繰り返し閾値評価のreliabilityが高い(級内相関係数0.78-0.96)ことを明らかにした.(1992年5月6日 受付,1992年6月15日 受理)