著者
山口 佳寿博 大森 久光
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.59-65, 2012

喫煙に起因する疾患として最も重要なものはCOPDと肺癌である.近年施行された網羅的ゲノム解析(GWAS:genome-wide association study)の結果,両疾患には共通の疾患感受性遺伝子(促進,抑制)が存在することが明らかにされた.これらの事実は,FEV1.0を中心とする肺機能の測定は喫煙関連COPDの診断/管理に不可欠であるばかりではなく,COPDに合併する喫煙関連肺癌の発生を予測する臨床的に重要な指標を求めていることを意味する.しかしながら,肺機能の測定値をそのまま提示しても一般市民あるいは患者の理解を得ることが難しいことが指摘されている.この問題を解決するため,肺機能をわかりやすい年齢に変換して提示する"肺年齢"なる指標が導入された.しかしながら,現在使用されている肺年齢はFEV1.0の正常基準値を与える回帰式にFEV1.0(肺機能因子)と身長(体型因子)を代入し年齢を逆算するものであり,この方法には種々の問題が存在し肺機能の情報を正しく患者に伝達しているとはいいがたい.本稿では肺年齢がなぜ必要であるかの背景(COPDと肺癌の関連),その基礎的概念ならびに正しい評価法について理論的検討を加えた.
著者
矢田 浩紀 安部 博史 大森 久光 石田 康 加藤 貴彦
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.293-303, 2009
被引用文献数
1 8

精神科の看護者のストレス要因を明らかにし, 精神科急性期病棟と精神療養病棟の看護者のストレスの質と量の違いを比較することを目的とした. 調査には, 職業性ストレス簡易調査票と精神科看護師の特有のストレス項目およびストレスに暴露される時間量に関する質問票について精神科の看護師・准看護師36名(A病院精神科急性期病棟11名とB病院精神科療養病棟25名)から回答を得た. 各下位尺度で因子分析を行い, 因子得点と項目得点にて2要因分散分析を行った結果, 職業性ストレス簡易調査票における「仕事のストレス要因」の下位尺度「雰囲気」の因子得点と「精神科におけるストレス要因」における全因子「看護における知識と技術」「実際のケア」「暴力への恐れ」「仕事の方向性」の因子得点は, 急性期病棟より療養病棟の看護者の方が有意に高くストレスが高かった.
著者
石原 陽子 三宅 真美 大森 久光 長谷川 豪 中尾 元幸
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

北東アジアからの越境輸送物質の健康影響が問題視されている。本研究では、偏西風によってもたらされる越境輸送物質の発生源および通過地域のモンゴル、中国と久留米のPM2.5の大気及び個人暴露量とその成分及び健康影響について調査研究を行った。その結果、PM2.5の重量と成分には大気と個人暴露で相関性や地域特性を認め、黄砂飛来時には成人慢性呼吸器疾患有症者の呼吸器症状の増悪や精神生理的活動性の低下が見られた。従って、今後の疫学調査では、この点を加味した研究デザインが必要であることが示唆された。
著者
大西 晃生 一井 貞明 大森 久光 永木 譲治
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.377-381, 1984-12-01

健康人(volunteers)8例の8腓腹神経の有髄および無髄神経線維の径と密度の定量的解析を, TGA-10 particle analyzer(Carl Zeiss社, West Germany)を用いて行った. 総有髄線維密度は, (7.4±1.3)×10^3/mm^2(平均値士標準偏差)であった. 小径有髄線維群と大径有髄線維群のborder diameterは5.4±0.5μmで, 小径有髄線維密度は(4.5±0.9)×10^3/mm^2, 大径有髄線維密度は(2.9±0.7)×10^3/mm^2であった.無髄線維密度は(27.9±5.8)×10^3/mm^2であった. 無髄線維直径分布のpeak diameterは0.88±0.15μmで, 線維直径の中間値は0.86±0.12μmであった. また8例の有髄線維および無髄線維の直径分布の平均直径分布ヒストグラムを明らかにした. これらの定量的解析所見は今後の末梢神経障害例の腓腹神経の組織定量的研究における比較対照所見として不可欠である.(1984年8月2日 受付)