著者
大野 公子 野澤 美樹 伊藤 早苗 佐藤 理恵子 石田 裕美 上西 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.57-65, 2020-04-01 (Released:2020-05-27)
参考文献数
23

【目的】中学1年生女子における鉄欠乏を横断的に把握し,鉄欠乏のリスク因子を明らかにして,鉄欠乏の予防に役立てることを目的とした。【方法】我々は,都内にある私立中高一貫校において,身体組成,血液検査等を継続して実施している。本研究の解析対象者は2012~2017年度に入学した中学1年生女子715名のうち,本研究で使用する全てのデータに不備のない493名である。調査項目は,身体組成,血液検査結果,食物摂取頻度調査,日常生活に関するアンケートとした。なお血清フェリチン 12 ng/ml未満を鉄欠乏群, 12 ng/ml以上を正常群として解析を行い,二項ロジスティック回帰分析を用いて鉄欠乏のリスク因子を検討した。【結果】正常群に比べ,鉄欠乏群は肥満度,体脂肪率,体脂肪量,初経発来者率が有意に高値で,初経後経過月数が有意に長かった(p<0.05)。正常群に比べ,鉄欠乏群は魚や肉を昼食に「食べない」と回答した者の割合が有意に高く,自分の体型に「満足している」と回答した者の割合が有意に低かった(p<0.05)。初経発来してない者に比べ,発来している者は鉄欠乏のリスクが9.44倍高く,魚や肉を昼食に「食べない」者に比べ,「普通に食べる」「たっぷり食べる」者は鉄欠乏のリスクが0.28倍,0.09倍それぞれ低かった(p<0.05)。【結論】中学1年生女子の鉄欠乏を予防するためには,体外への鉄損失量を食事で補うことが必要であり,鉄欠乏のリスクは,昼食に肉や魚を食べる者において低いことが示唆された。
著者
山井 麻衣子 寺田 優 大野 公子 千葉 一美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.43, 2007

はじめに〉消化管手術後の腸管運動促進はイレウス予防に重要である。当科では初回排ガスが72~96時間と遅延傾向にある。私達は、ガム咀嚼が術後の腸管運動促進に効果があることを知り、当科の消化管手術後の患者にも検討が可能ではないかと考えこの研究に取り組んだ。(研究方法)目的:ガム咀嚼が消化管手術後患者の腸管運動促進に有効か明らかにする期間:平成18年8月1日~12月31日対象:誤飲する危険がない、理解力のある消化管手術を受けた患者方法:術前にガムを噛むことに対して説明・同意を得られた患者で、術後1日目より水分開始まで、1日3回5分以上ガムを噛んでもらい、初回排ガス・排便時知らせてもらう。その後アンケート調査。〈結果〉症例数13例のうち5例は調査途中での中断となった。8例の平均時間は76.8時間。アンケートでは咀嚼の回数、時間、味、共に適当で、爽快感が得られたと回答があった。他に、初めてガムを噛んだ、食事変わりになって時間の意識が出来て良かったなどの意見が寄せられた。(考察)現段階では、症例数も少なく、効果的か判断するには至らなかった。しかし、アンケートの中で、爽快感を得た人が87.5%いた。これはガム咀嚼による神経活動によるものと考える。石山は、「咀嚼を行うことで感覚入力し脳を刺激すると、一時的に交感神経を亢進させるが、運動を休止させると、自律神経の相反支配により副交感神経が優位に作用する。」と述べている。その結果、ガム咀嚼後は精神的にもリラックス状態になる。アンケートの中で爽快感を得た人が87.5%となったのはこのことからと考える。味についてはミント味レモン味で行ったがレモン味の方が好まれる傾向にあった。一般的には柑橘系の香りには、リラクゼーション効果があると言われている。一回の咀嚼時間はもともとガムを噛む習慣のある人には苦痛はなかったが、初めて噛む人・痛み・嘔気のある人には苦痛だったようだ。今回の取り組み以降、消化管手術後の腸管運動促進の援助にガムを取り入れているが、好みの味で苦痛のない範囲で行っている。術後の禁飲食の続く中、認知症のある患者には食事代わりで時間の意識が出来て良いなどの意見も聞かれた。術後は痛みの為に口腔内の清潔・離床も、ときには後回しになりがちである。咀嚼運動による唾液分泌は、口腔内の乾燥・感染予防にも繋がったと思われる。今回、ガム咀嚼を取り入れることで、ギャッチアップがスムーズに進む手ごたえがあった。これは早期離床への援助効果があったと考えられる。(まとめ)1.ガム咀嚼は排ガス促進に明らかな効果は認められなかった。2.ガム咀嚼は爽快感が得られる。3.早期離床への援助効果があった。(おわり)今回の研究では症例数も少なく、ガム咀嚼が腸管運動促進に効果があるかを判断できるまでに至らなかった。しかし、方法、対象などを検討し、今後も追跡していこうと思う。
著者
大野 公子 野澤 美樹 伊藤 早苗 佐藤 理恵子 石田 裕美 上西 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.57-65, 2020

<p>【目的】中学1年生女子における鉄欠乏を横断的に把握し,鉄欠乏のリスク因子を明らかにして,鉄欠乏の予防に役立てることを目的とした。</p><p>【方法】我々は,都内にある私立中高一貫校において,身体組成,血液検査等を継続して実施している。本研究の解析対象者は2012~2017年度に入学した中学1年生女子715名のうち,本研究で使用する全てのデータに不備のない493名である。調査項目は,身体組成,血液検査結果,食物摂取頻度調査,日常生活に関するアンケートとした。なお血清フェリチン 12 ng/m<i>l</i>未満を鉄欠乏群, 12 ng/m<i>l</i>以上を正常群として解析を行い,二項ロジスティック回帰分析を用いて鉄欠乏のリスク因子を検討した。</p><p>【結果】正常群に比べ,鉄欠乏群は肥満度,体脂肪率,体脂肪量,初経発来者率が有意に高値で,初経後経過月数が有意に長かった(<i>p</i><0.05)。正常群に比べ,鉄欠乏群は魚や肉を昼食に「食べない」と回答した者の割合が有意に高く,自分の体型に「満足している」と回答した者の割合が有意に低かった(<i>p</i><0.05)。初経発来してない者に比べ,発来している者は鉄欠乏のリスクが9.44倍高く,魚や肉を昼食に「食べない」者に比べ,「普通に食べる」「たっぷり食べる」者は鉄欠乏のリスクが0.28倍,0.09倍それぞれ低かった(<i>p</i><0.05)。</p><p>【結論】中学1年生女子の鉄欠乏を予防するためには,体外への鉄損失量を食事で補うことが必要であり,鉄欠乏のリスクは,昼食に肉や魚を食べる者において低いことが示唆された。</p>