著者
上西 一弘 江澤 郁子 梶本 雅俊 土屋 文安
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.259-266, 1998-10-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
19
被引用文献数
9 10

健康な成人女性9名を対象に出納法による食品および食品別のカルシウム吸収比較試験を行った。被験者にカルシウム約200mgを含む基本食を3日間摂取させた後, 基本食にカルシウム約400mgを含む添加食を加えた試験食を4日間摂取させた。添加食は牛乳, 小魚, 野菜の3種類のいずれかであり, 1月経周期以上の間隔をおいてランダムに摂取させた。試験期間中は毎日, 採尿, 採便を行い, 尿中, 便中および食事中のカルシウム量を測定し, カルシウム出納を算出した。また, 各試験開始時と試験食移行時, 試験終了時に採血を行い, 血清のカルシウム関連物質を測定した。その結果, カルシウム出納は基本食摂取時にはマイナスとなったが, 試験食摂取時にはプラスとなった。各食品および食品群別のカルシウム吸収率は牛乳39.8%, 小魚32.9%, 野菜19.2%となった。牛乳は, 乳糖およびCPPがカルシウム吸収を促進し, 野菜は, 食物繊維やシュウ酸が吸収を阻害していると考えられる。血清のカルシウム関連物質では, 血清カルシウム, 副甲状腺ホルモン, カルシトニンには試験期間中変化はみられなかったが, 1,25(OH)2D3は基本食摂取後に上昇がみられ, 試験食摂取後には元に戻っていた。これは低カルシウム食に対する反応と考えられる。
著者
大野 公子 野澤 美樹 伊藤 早苗 佐藤 理恵子 石田 裕美 上西 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.57-65, 2020-04-01 (Released:2020-05-27)
参考文献数
23

【目的】中学1年生女子における鉄欠乏を横断的に把握し,鉄欠乏のリスク因子を明らかにして,鉄欠乏の予防に役立てることを目的とした。【方法】我々は,都内にある私立中高一貫校において,身体組成,血液検査等を継続して実施している。本研究の解析対象者は2012~2017年度に入学した中学1年生女子715名のうち,本研究で使用する全てのデータに不備のない493名である。調査項目は,身体組成,血液検査結果,食物摂取頻度調査,日常生活に関するアンケートとした。なお血清フェリチン 12 ng/ml未満を鉄欠乏群, 12 ng/ml以上を正常群として解析を行い,二項ロジスティック回帰分析を用いて鉄欠乏のリスク因子を検討した。【結果】正常群に比べ,鉄欠乏群は肥満度,体脂肪率,体脂肪量,初経発来者率が有意に高値で,初経後経過月数が有意に長かった(p<0.05)。正常群に比べ,鉄欠乏群は魚や肉を昼食に「食べない」と回答した者の割合が有意に高く,自分の体型に「満足している」と回答した者の割合が有意に低かった(p<0.05)。初経発来してない者に比べ,発来している者は鉄欠乏のリスクが9.44倍高く,魚や肉を昼食に「食べない」者に比べ,「普通に食べる」「たっぷり食べる」者は鉄欠乏のリスクが0.28倍,0.09倍それぞれ低かった(p<0.05)。【結論】中学1年生女子の鉄欠乏を予防するためには,体外への鉄損失量を食事で補うことが必要であり,鉄欠乏のリスクは,昼食に肉や魚を食べる者において低いことが示唆された。
著者
田中 清 上西 一弘
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.231-236, 2020 (Released:2020-12-26)
参考文献数
4

日本人の食事摂取基準2020年版におけるビタミン・ミネラルにつき, 変更点を中心に述べる。脂溶性ビタミンでは, ビタミンDの目安量の根拠は従来健康人摂取の中央値だったが, 近年ビタミンD欠乏/不足者の割合が非常に高いことが明らかとなり, 「骨折予防に必要な量-日照による産生量」に変更された。水溶性ビタミンでは, 葉酸に関して, 食事性葉酸と狭義の葉酸の区別が明記された。多量ミネラルでは, ナトリウム (食塩相当量) の目標量 (上限) は, 高血圧・慢性腎臓病の発症予防のため, 望ましい摂取量 (5 g/日) と日本人の摂取量の中間値に基づき, 男性 < 7.5 g/日, 女性 < 6.5 g/日とされ, 今回その重症化予防のための量 (< 6 g/日) も定められた。カリウムは目標量 (下限) が定められ, ナトリウム・カリウム比の重要性も記載された。微量ミネラルでは, 妊娠中期・後期での鉄の付加量が引き下げられた。策定栄養素には変更なく, クロムについてのみは必須性に関して再検討されているが, これらの必須性は既に確立され, 食品成分表と合わせた活用が重要である。ヒト対象のエビデンスは少なく, 日本人での研究が必要である。
著者
樫野 いく子 溝上 哲也 由田 克士 上西 一弘 長谷川 祐子 斉藤 裕子 青柳 清治 倉貫 早智 中村 丁次
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.445-450, 2018 (Released:2018-07-26)
参考文献数
12

国民一人ひとりが健康的な食品を特定し、選択することは容易ではない。近年、栄養素密度に基づき食品をランク付けする栄養プロファイリングモデルが各国で開発されている。しかし、わが国ではこのような概念による食品の評価は十分に行われていない。そこで、日本食品標準成分表2015年版に掲載された食品を対象に食品のランク付けを行った。積極的な摂取が推奨される9つの栄養素と、摂取量を制限すべき3つの栄養素を用いて高栄養素食品指数9.3 Nutrient-rich food index 9.3(NRF9.3)を各食品100kcal当たりで算出した。その結果、藻類、野菜類、きのこ類、豆類の食品群順にNRF9.3が高かった。また、同食品群内でも栄養価の高い食品と栄養価の低い食品を区別することができた。食品を購入する際に、栄養価のより高い食品を選択する、あるいは同食品群内で代替食品を選択するにあたり、本指数を参照することは有用であるかもしれない。
著者
渡辺 優奈 善方 裕美 石田 裕美 上西 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.89-97, 2016 (Released:2016-09-06)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

【目的】本研究は,1年以上授乳を続けた女性における,妊娠初期から授乳期および卒乳後までの鉄栄養状態の実態を明らかにすることで,妊婦,授乳婦への栄養指導に活用できる資料を得ることを目的とした。【方法】対象者は授乳期間が1年以上であった女性30名とし,妊娠初期(妊娠5~12週),出産時,産後1ヵ月,産後6ヵ月,産後1年,卒乳後(卒乳後3~6ヵ月)の6時点を解析対象とした。妊娠初期から卒乳後までの鉄関連指標(赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値,血清鉄濃度,フェリチン濃度)および鉄摂取量の推移,卒乳後フェリチン濃度に関連する指標の検討を行った。【結果】赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値および血清鉄濃度は,妊娠期に低下したが産後1ヵ月で回復し,卒乳後まで変化はみられなかった。妊娠期に低下したフェリチン濃度は,産後1年までに徐々に回復傾向を示したが,卒乳後には再び妊娠初期よりも低値となった。また,妊娠初期から卒乳後まで鉄摂取量に変動はなかった。卒乳後のフェリチン濃度は,月経再開からの期間と負の相関(r=-0.424,p=0.020),妊娠初期のフェリチン濃度とも正の相関(r=0.444,p=0.014)がみられた。【結論】フェリチン濃度は,妊娠期に低下し産後1ヵ月では回復しないが,授乳継続により,その間に漸次増加する傾向がみられた。これより,授乳期に積極的な鉄摂取を促すことで,産後の鉄貯蔵を増加させることが期待できる。
著者
渡辺 優奈 善方 裕美 石田 裕美 上西 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.Supplement1, pp.S26-S38, 2013 (Released:2013-05-24)
参考文献数
33
被引用文献数
4 1

【目的】妊娠期を通じた横断的および縦断的な鉄摂取量と鉄栄養状態の実態を明らかにし,妊娠期の鉄摂取基準の妥当性を検討した。【方法】妊娠5~12週の妊婦160名をリクルートし,妊娠初期,中期,末期,出産時,産後1ヵ月の調査で身体計測,出産時および新生児調査,鉄剤投与の有無,血液検査,食事記録調査のデータがすべてそろった103名に対し,鉄摂取量と鉄栄養状態を評価した。【結果】妊娠期の鉄摂取量において妊婦の鉄の推奨量を下回った者の割合は妊娠初期71.8%,中期98.1%であった。一方,鉄栄養状態は妊娠初期と比較して中期,末期では赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値および血清鉄濃度は有意に減少したが,産後1ヵ月までに初期と同様の値まで回復した。また妊娠貧血(Hb<11.0 g/dl,Ht<33.0%)の割合は妊娠初期4.9%,中期41.7%,末期53.4%であったが,MCV,MCHの中央値は基準範囲(MCV: 79.0~100.0 fl,MCH: 26.3~34.3 pg)の下限値を下回ることはなかった。なお,低出生体重児は3名,早産児は1名のみであった。【結論】本研究で明らかになった鉄の摂取量で十分であったとはいえないが,鉄需要の亢進にともなう鉄吸収の亢進の可能性が示唆され,現在の妊婦の鉄の摂取基準ほど多くの鉄を摂取せずに鉄栄養状態が維持された。また,鉄の吸収がどの程度亢進しているかまではわからず,体内の総鉄量も評価できなかった。今後は妊婦の体内総鉄量の動態を評価することなど,さらなる検討が必要である。
著者
大野 公子 野澤 美樹 伊藤 早苗 佐藤 理恵子 石田 裕美 上西 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.57-65, 2020

<p>【目的】中学1年生女子における鉄欠乏を横断的に把握し,鉄欠乏のリスク因子を明らかにして,鉄欠乏の予防に役立てることを目的とした。</p><p>【方法】我々は,都内にある私立中高一貫校において,身体組成,血液検査等を継続して実施している。本研究の解析対象者は2012~2017年度に入学した中学1年生女子715名のうち,本研究で使用する全てのデータに不備のない493名である。調査項目は,身体組成,血液検査結果,食物摂取頻度調査,日常生活に関するアンケートとした。なお血清フェリチン 12 ng/m<i>l</i>未満を鉄欠乏群, 12 ng/m<i>l</i>以上を正常群として解析を行い,二項ロジスティック回帰分析を用いて鉄欠乏のリスク因子を検討した。</p><p>【結果】正常群に比べ,鉄欠乏群は肥満度,体脂肪率,体脂肪量,初経発来者率が有意に高値で,初経後経過月数が有意に長かった(<i>p</i><0.05)。正常群に比べ,鉄欠乏群は魚や肉を昼食に「食べない」と回答した者の割合が有意に高く,自分の体型に「満足している」と回答した者の割合が有意に低かった(<i>p</i><0.05)。初経発来してない者に比べ,発来している者は鉄欠乏のリスクが9.44倍高く,魚や肉を昼食に「食べない」者に比べ,「普通に食べる」「たっぷり食べる」者は鉄欠乏のリスクが0.28倍,0.09倍それぞれ低かった(<i>p</i><0.05)。</p><p>【結論】中学1年生女子の鉄欠乏を予防するためには,体外への鉄損失量を食事で補うことが必要であり,鉄欠乏のリスクは,昼食に肉や魚を食べる者において低いことが示唆された。</p>
著者
縄田 敬子 石田 裕美 山下 直子 上西 一弘
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.176-182, 2006-09-20
被引用文献数
6

本研究では首都圏在住の男性勤労者の歩数とbody mass index (BMI)との関係を検討することを目的とした.対象者は310名(30〜59歳)である.連続7日間の歩数および生活時間調査を行なった.歩数は歩数計を用いて測定した.また,生活時間調査の結果からエネルギー消費量を推定した.食物摂取頻度調査によりエネルギー摂取量を求めた.身長,体重は自記式の質問紙により調査した.BMI25以上の者は81名(26.1%)であった.出勤時の歩数は平均10,682±4,365歩,休日の歩数は7,135±4,536歩であった.エネルギー消費量は2,259±378kcal,身体活動レベル(physical activity level: PAL)は1.5±0.1であった.エネルギー摂取量は1,974±488kcalであった.出勤日,休日の歩数はPALと有意な正の相関関係を示した(出勤日r=0.301,休日r=0.296,いずれもp<0.001.)また,出勤日の歩数はBMIと有意な負の相関関係を示した(r=-0.188,p<0.01).出勤日の歩数とエネルギー摂取量の中央値を用いて対象者をI群(9,894歩以上,1,901kcal未満),II群(9,894歩以上,1,901kcal以上),III群(9,894歩未満,1,901kcal未満),IV群(9,894歩未満,1,901kcal以上)に分類した.IV群の平均BMIは24.7で,他の3群よりも有意に高値を示した.III群は生活習慣病の者の割合が最も多かった.
著者
縄田 敬子 石田 裕美 山下 直子 上西 一弘
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.176-182, 2006 (Released:2006-10-24)
参考文献数
23
被引用文献数
2 6 4

首都圏在住の男性勤労者における歩数とBody Mass Indexの関係:縄田敬子ほか.女子栄養大学給食・栄養管理研究室―本研究では首都圏在住の男性勤労者の歩数とbody mass index(BMI)との関係を検討することを目的とした.対象者は310名(30~59歳)である.連続7日間の歩数および生活時間調査を行なった.歩数は歩数計を用いて測定した.また,生活時間調査の結果からエネルギー消費量を推定した.食物摂取頻度調査によりエネルギー摂取量を求めた.身長,体重は自記式の質問紙により調査した.BMI25以上の者は81名(26.1%)であった.出勤時の歩数は平均10,682±4,365歩,休日の歩数は7,135±4,536歩であった.エネルギー消費量は2,259±378 kcal,身体活動レベル(physical activity level:PAL)は1.5±0.1であった.エネルギー摂取量は1,974±488 kcalであった.出勤日,休日の歩数はPALと有意な正の相関関係を示した(出勤日r=0.301,休日r=0.296,いずれもp<0.001.)また,出勤日の歩数はBMIと有意な負の相関関係を示した(r=-0.188,p<0.01).出勤日の歩数とエネルギー摂取量の中央値を用いて対象者をI群(9,894歩以上,1,901 kcal未満),II群(9,894歩以上,1,901 kcal以上),III群(9,894歩未満,1,901 kcal未満),IV群(9,894歩未満,1,901 kcal以上)に分類した.IV群の平均BMIは24.7で,他の3群よりも有意に高値を示した.III群は生活習慣病の者の割合が最も多かった. (産衛誌2006; 48: 176-182)