著者
大野 祥子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.287-297, 2012-09-20

本研究は男性のワークライフバランスから抽出した「生活スタイルのタイプ」ごとに,夫婦間での職業役割と家庭役割の分担のしかたが彼らの生き方満足度にどのように影響するかを検討し,男性にとっての家庭関与の意味を再考することを目的とする。調査対象は3〜4歳の子どもを持つ育児期男性332名であった。仕事を生活の最優先事項とする2タイプ(「仕事+余暇型」・「仕事中心型」)と,仕事と家庭に同等のエネルギーを傾注する「仕事=家庭型」の下位分類2タイプ(「二重基準型」・「平等志向型」), 計4タイプについて,男性の生き方満足度を基準変数とする階層的重回帰分析を行った。「仕事+余暇型」の満足度は家庭関与の変数によっては説明されなかった。「仕事中心型」では休日家族と過ごす時間がとれ育児に関わる余裕のあることが満足度と関連していた。家庭志向の高い2タイプのうち「平等志向型」は自身の家事分担率の高さが生き方満足度を高める共同参画的な結果が見られたが,「二重基準型」では妻が性別役割分業に賛成であることのみが有意な効果を持っていた。これまで男性の家庭関与は妻子や男性本人の適応・発達にプラスの効果を持つとされてきたが,タイプごとに異なる意味を持つことが明らかになった。男性の家庭関与の議論は夫婦関係や労働環境など,より広い文脈の中で捉え,稼得や扶養は男性の役割とする男性性役割規範の見直しを伴うことが必要であろう。
著者
大野 祥子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.287-297, 2012-09-20 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1

本研究は男性のワークライフバランスから抽出した「生活スタイルのタイプ」ごとに,夫婦間での職業役割と家庭役割の分担のしかたが彼らの生き方満足度にどのように影響するかを検討し,男性にとっての家庭関与の意味を再考することを目的とする。調査対象は3〜4歳の子どもを持つ育児期男性332名であった。仕事を生活の最優先事項とする2タイプ(「仕事+余暇型」・「仕事中心型」)と,仕事と家庭に同等のエネルギーを傾注する「仕事=家庭型」の下位分類2タイプ(「二重基準型」・「平等志向型」), 計4タイプについて,男性の生き方満足度を基準変数とする階層的重回帰分析を行った。「仕事+余暇型」の満足度は家庭関与の変数によっては説明されなかった。「仕事中心型」では休日家族と過ごす時間がとれ育児に関わる余裕のあることが満足度と関連していた。家庭志向の高い2タイプのうち「平等志向型」は自身の家事分担率の高さが生き方満足度を高める共同参画的な結果が見られたが,「二重基準型」では妻が性別役割分業に賛成であることのみが有意な効果を持っていた。これまで男性の家庭関与は妻子や男性本人の適応・発達にプラスの効果を持つとされてきたが,タイプごとに異なる意味を持つことが明らかになった。男性の家庭関与の議論は夫婦関係や労働環境など,より広い文脈の中で捉え,稼得や扶養は男性の役割とする男性性役割規範の見直しを伴うことが必要であろう。