著者
大髙 崇
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.34-51, 2022-06-01 (Released:2022-07-27)

教育のICT活用が本格化する中、放送局に保存される膨大な数の放送アーカイブを、授業等で利用するニーズが高まりつつある。本稿の主眼は、放送局等から教育機関に放送アーカイブを提供するうえで課題となる権利処理の問題に注目し、著作権法の新たな権利制限規定の私案を提示ながら、その妥当性を検討することにある。私案は、放送アーカイブのうち権利処理が難しく、一般の市場で入手困難なものを、「絶版」として再定義し、それらを授業等の目的と限定的な範囲での配信であれば権利制限とするものだ。国際的な手法「スリー・ステップ・テスト」にもあてはめ検討し、私案の妥当性を確認した。併せて検討した拡大集中許諾制度の効果と課題も示す。また、仮に私案が実現しても、学校のネットワーク環境や認証システムなど、ほかにも課題はある。しかし、それらの課題を克服すれば、放送アーカイブが多くの社会的ニーズに貢献する可能性を指摘する。
著者
大髙 崇
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.s2, pp.s86-s90, 2022 (Released:2022-06-13)
参考文献数
2

放送局がアーカイブとして保存する放送済みの番組の大半が「死蔵」状態にある。また、ICT活用が進む教育現場からは、放送アーカイブの授業での活用を望む声が多い。このため本稿では、著作権法に新たな権利制限規定を設ける私案を設定し、検討する。著作権法35条と授業目的公衆送信補償金制度に基づき、31条3項の国会図書館による「絶版等資料」の公衆送信の規定と運用を参照しながら、市場に流通していない放送アーカイブをアウトオブコマース(OoC)と仮定し、各番組に関わる権利者の許諾なく、授業等での利用に限定した配信を行えるという私案である。「死蔵」状態の放送アーカイブは事実上、OoCの定義に適い、私案はスリーステップテストにも適合することを確認した。私案の実現によって期待される効果と求められる取り組み、また、拡大集中許諾制度などの可能性と課題を示した。
著者
大髙 崇 吉澤 千和子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.74-83, 2018 (Released:2018-03-21)

放送で使用される大量の音楽。その使用料を権利者に分配するために、放送局はJASRAC等の「著作権等管理事業者」に対して使用する楽曲を報告する義務がある。インターネット時代の到来や権利意識の高まりもあり、正確な全曲報告がより一層求められている。今、この報告のため、楽曲の特徴を自動検知する「フィンガープリント技術」の導入が放送局で進んでいる。技術導入までの経緯を辿ると、著作物の利用者(放送局)と権利者・管理事業者の間で、課題の解決と新たなルール作りに向けて粘り強い議論がなされたことがわかる。著作権法が目指す「権利の保護」と「文化の発展」。このバランスを保ちながら放送コンテンツをさらに展開させるための課題と展望を考える。
著者
大髙 崇
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.34-39, 2020-01-07 (Released:2020-03-02)
参考文献数
4

放送局に保存される膨大な数の過去のニュースや番組など「放送アーカイブ」は映像資産としてその価値が注目されるが、どのように活用すればよりよい社会還元になるのか、模索が続いている。本稿では、最近の活用での成功事例として「NHKアーカイブス 回想法ライブラリー」の内容や、活用する現場の様子、コンテンツ制作の経緯などを報告し、今後の放送アーカイブ活用のために求められる課題を提示する。アーカイブ活用は、所有者(放送局)だけで完結することは困難であり、外部有識者の知見も交えて多角的な視点が必要であることが、今回の研究での発見となる。
著者
大髙 崇
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.443-448, 2023-10-01 (Released:2023-10-01)

NHKの放送番組アーカイブの保存と整備の経緯を振り返り,今後に向けた課題解決に向けて,地域放送局の一人の職員の取り組み事例を報告する。NHKは,1980年代まで,体系的・組織的なアーカイブ保存がなされなかった。その後,資料部(後のアーカイブス部)が一元的に保存と整備を担い,デジタル化も進捗したが,現在もメタデータ整備や,未編集のフィルムやテープの映像素材の扱いなどの課題が存在する。NHK金沢放送局のアーカイブ企画『懐かしの映像』の成功事例から,放送局におけるアーカイブ人材の育成と,地域や専門機関などとの連携・協働の必要性という教訓が浮上する。
著者
大髙 崇
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.2-23, 2021 (Released:2021-04-16)
被引用文献数
1

再放送に対する視聴者への意識調査(WEBアンケート,グループインタビュー)の結果を詳述する2回シリーズの前編。第1章で‚政府の緊急事態宣言が発出された2020年4月以降のテレビ番組の「再放送化」を概観。5月下旬には夜間プライムタイムでも多くの番組が再放送‚ないし‚過去映像素材の再利用による放送であった。意識調査の結果からは‚主に以下の傾向が抽出できた。 ●再放送に対しては概ね好意的であり‚時間帯も平日のゴールデンタイムなどでも構わないという傾向が強い。●見たい番組であれば再放送であるか否かはあまり気にしない。番組表の表示も特段のこだわりは感じられず‚放送のタイミングでも「季節感」などは重要視していない。●再放送へのニーズの中には,最近の放送番組に対する物足りなさも含まれている。●特に‚積極的な視聴者層は‚再放送番組に対して様々な付加価値を求めている。●再放送の情報は‚若年層がインターネットで‚高齢層が新聞で得る傾向がある。●不祥事を起こした芸能人の出演する番組の再放送には概ね寛容。調査の分析・考察は後編に続く。
著者
大髙 崇
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.2-23, 2021

再放送に対する視聴者への意識調査(WEBアンケート,グループインタビュー)の結果を詳述する2回シリーズの前編。第1章で‚政府の緊急事態宣言が発出された2020年4月以降のテレビ番組の「再放送化」を概観。5月下旬には夜間プライムタイムでも多くの番組が再放送‚ないし‚過去映像素材の再利用による放送であった。意識調査の結果からは‚主に以下の傾向が抽出できた。●再放送に対しては概ね好意的であり‚時間帯も平日のゴールデンタイムなどでも構わないという傾向が強い。●見たい番組であれば再放送であるか否かはあまり気にしない。番組表の表示も特段のこだわりは感じられず‚放送のタイミングでも「季節感」などは重要視していない。●再放送へのニーズの中には,最近の放送番組に対する物足りなさも含まれている。●特に‚積極的な視聴者層は‚再放送番組に対して様々な付加価値を求めている。●再放送の情報は‚若年層がインターネットで‚高齢層が新聞で得る傾向がある。●不祥事を起こした芸能人の出演する番組の再放送には概ね寛容。調査の分析・考察は後編に続く。