著者
大鶴 任彦 加藤 義治 森田 裕司
出版者
南江堂
雑誌
臨床雑誌整形外科 (ISSN:00305901)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.1135-1139, 2012-10-01

単純性股関節炎(TS)は自然軽快する予後良好な疾患であるが、化膿性股関節炎(SA)との鑑別が困難な症例や再発例・遷延例またはPerthes病(PD)との関連が推測される症例報告もある。今回、TS50例(男児31例、女児19例)53股を対象に、臨床像、SAとの鑑別、歩行能力別の病態について検討した。その結果、1)発症年齢は2~13歳(平均6.7歳)で、先行病歴は感染性疾患が40%と最も多く、次いで転倒や激しい運動14%、アレルギー疾患9.0%の順であった。2)発症~初診の日数は平均3.1日(0~30日)、発症~症状消失の日数は7.4日(1~35日)であり、再発を1例に同側で認めた。また月別発症数は2月、3月、10月、11月に多かった。3)全例で初診から3ヵ月後まで経過観察したところ、49例52股は症状が自然軽快して関節内水腫は消失したが、1例1股では初診3ヵ月後に骨頭壊死を認め、PDに進展したと考えられた。4)TS群とSA群では体温:38.3℃、CRP:1.23mg/dl、赤沈:45.5mm/時を境界に鑑別が可能と考えられた。尚、TS群の歩行可能例では体温・CRP・赤沈・WBCは相互に正の相関を、年齢とWBCでは負の相関を認め、歩行不能例では相互の相関は認められなかった。
著者
大鶴 任彦 加藤 義治 櫻井 裕之 中塚 栄二 嶋田 耕二郎 久保田 元也 森田 裕司
出版者
南江堂
雑誌
別冊整形外科 (ISSN:02871645)
巻号頁・発行日
vol.1, no.57, pp.135-138, 2010-04-10

難治性化膿性股関節炎(SA)に対する筋皮弁移植術の有用性について検討した。対象は2000年以降に手術的治療を行うも再燃を繰り返し、最終的に筋皮弁移植術を行ったSA 5例(男性2例、女性3例、平均年齢54.6歳)であった。起炎菌はメチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)2例、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メチシリン感受性ブドウ球菌(MSSA)、Bacteroides fragilis 各1例で、診断から筋皮弁移植術まで平均20.7ヵ月、筋皮弁移植術までの既往手術回数は平均4.4回、使用筋弁は腹直筋1例、外側広筋2例、外側広筋+大腿筋膜張筋1例、外側広筋+大腿直筋1例であった。その結果、術後経過観察期間平均37.2ヵ月の最終時における股関節は全例がGirdlestoneであり、対麻痺の1例以外は捕高靴と杖使用にて自立歩行が可能であった。1例に感染再発が認められたが、抗生物質の点滴投与で軽快した。以上、成人の難治性SAに対する筋皮弁移植術は有効な手術方法と考えられた。
著者
大鶴 任彦 森田 康介 堀内 悠平 島本 周治 森田 裕司 加藤 義治
出版者
金原出版
雑誌
整形・災害外科 (ISSN:03874095)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.111-115, 2016-01-01

発育性股関節形成不全の診断では臼蓋側被覆だけでなく前方被覆の評価も重要である。そこで今回、著者らはトモシンセンス(TS)立位矢状断像を用いて臼蓋前方被覆を計測して、その有用性をfalse profile(FP)像と比較検討した。対象は前、初期変形股関節症で隣接関節に障害がない34例(男性7例、女性27例、平均年齢55.8歳)および健康成人ボランティア30例(男性25例、女性5例、平均年齢36.5歳)であった。これらを対象にTS像とFP像を撮影してvertical center anterior margin(VCA)角を測定し、臼蓋前方被覆を評価した。その結果、1)TS-VCA角はFP-VCA角より有意に大きく、TSの方の再現性が高かった。また、TS-VCA角とFP-VCA角は高い正の相関を示し、臼蓋前方被覆の計測ツールとしてTSは極めて有用であると考えられた。その理由として撮影時の体位設定が容易であること、臼蓋縁の変形があっても臼蓋前縁を明瞭に撮影できることが考えられた。以上より、トモシンセシスは立位で撮影が可能なため骨盤傾斜も考慮でき、放射線の実効線量も低く、汎用性の高いことが長所と考えられた。