著者
吉村 英哉 仁賀 定雄
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.391-398, 2020-04-01

要旨:ハムストリング近位肉ばなれⅢ型損傷は,股関節屈曲膝関節伸展位の特徴的な肢位で受傷する。このうち完全剝離損傷は,ハイレベルアスリートにおいてパフォーマンス回復が困難な場合が多い。一方,不全剝離損傷は坐骨結節と仙結節靱帯の連続性が保たれ,損傷した筋腱の短縮は生じない。スポーツ継続可能な例も多いが,診断されないままパフォーマンスレベルを落としていることが多い。完全剝離損傷11例および不全剝離損傷7例に対して腱修復術を行い,それぞれ術後平均8カ月および7カ月で全例競技復帰した。受傷から2カ月以上経過した完全剝離損傷の例で腱断端が遠位へ転位し手術操作が困難であった。ハイレベルアスリートのⅢ型完全剝離損傷は,受傷後2週以内に診断,手術を行うことが肝要である。また不全剝離損傷は存在自体が周知されておらず,このような病態があることを念頭に置く必要があり,パフォーマンス低下のみられる例に対して手術は有効な治療法である。
著者
早川 光 小笹 泰宏 成田 有子 射場 浩介 山下 敏彦
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1041-1043, 2017-07-01

野球歴のある7 歳男児のPanner 病を経験した。初診時は上腕骨小頭骨端核の骨透亮像は限局しており,離断性骨軟骨炎と診断した。その後の経過で,骨端核全体の分節化が出現したためPanner 病との診断に至った。安静,生活指導による保存加療を行い症状は消失し,7 カ月後より投球練習を開始,最終経過観察時には制約なく野球が可能となった。
著者
岩田 久 松山 幸弘 加藤 文彦 千葉 一裕
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.269-282, 2019-03-01

要旨:椎間板ヘルニアは椎間板中の髄核が線維輪を穿破し脊髄などの神経を圧迫し,下肢痛,腰痛を発症する疾患である。その治療において,保存療法として,非ステロイド性消炎鎮痛剤,ステロイドなどの薬物療法,理学療法,硬膜外仙骨ブロック,神経根ブロック,運動療法などで効果がみられないとき,コンドリアーゼ(C-ABC)化学的髄核融解術(chemonucleolysis)が,手術的治療に至る前の最後の手段として考えられる。このC-ABCは50年前,Proteus vulgarisを培養,その菌体成分から抽出・精製し,そしてFlavobacterium heparinum由来のC-AC酵素とともに駆使しコンドロイチン硫酸異性体の分析に使用した。その過程でコンドロイチン硫酸-デルマタン硫酸ハイブリッド構造の存在を半月板軟骨内に発見した。この酵素が種々の動物実験,臨床治験を通し,腰椎椎間板ヘルニア治療のための椎間板注射剤として純国産で,世界で初めて開発され,今回日本で認可が得られた。C-ABC,C-ACを用いた種々軟骨,尿などのコンドロイチン硫酸異性体の特徴,C-ABCの臨床応用に向けての基礎的研究,使用方法,適応,今後の展望について検討した。
著者
大坪 英則 鈴木 大輔 神谷 智昭 鈴木 智之 山下 敏彦 史野 根生
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.1481-1488, 2018-11-01

要旨:近年,膝前十字靱帯(ACL)再建術では,形態的にも機能的にも正常靱帯に近い靱帯を再建するために,正常靱帯付着部に骨孔を作成し自家腱を移植固定する解剖学的再建術が行われている。われわれは,新鮮屍体膝を用いた解剖学的研究を行い,ヒト正常ACLは,前内側線維束(AM束)と後外側線維束(PL束)の2線維束に分けられ,さらにAM束は内側部分(AM-M束)と外側部分(AM-L束)に分けられ,3線維束を構成することを明らかにした。さらに,線維束の配列と断面積計測,付着部位置および面積計測,MRIによる生体内画像解析,透過型電子顕微鏡(TEM)によるコラーゲン線維の微細構造についての詳細な検討を行い,ACL 3線維束の解剖学的な特徴を明らかにした。これの結果は,各線維束が力学的に異なる役割を担っていることを示しており,靱帯再建術式の決定や移植腱の選択においては,これらの線維束構造の機能解剖学的特徴を十分に考慮すべきである。

1 0 0 0 肩甲骨骨折

著者
松村 昇
出版者
金原出版
雑誌
整形・災害外科 (ISSN:03874095)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.1331-1337, 2017-09-01

肩甲骨骨折は比較的まれな外傷であるが,大部分は多発外傷を合併する。肩甲骨は周囲を筋組織に包まれているため,骨折が生じた場合でも比較的安定性が保たれる。また豊富な血流により骨癒合も良好であることから,骨折例の多くは保存的に加療され,おおむね良好な治療成績が期待できる。一方で骨折部位や転位の有無により臨床症状は異なる。肩峰骨折のうち遠位骨片が下方へ偏位もしくは転位した症例では,術後の偽関節や変形癒合により二次性の肩峰下インピンジメントを生じる可能性がある。烏口鎖骨靱帯より近位での烏口突起骨折は肩鎖関節部の不安定性を生じることが多い。肩甲骨体部骨折後に変形が残存すると,肩甲胸郭関節が不適合となり肩甲帯の易疲労感や怠感,筋力低下が残存することがある。肩甲帯部複合損傷では不安定性により肩甲帯機能低下につながる。これらの症例では観血的手術も選択肢の一つとなる。
著者
大鶴 任彦 森田 康介 堀内 悠平 島本 周治 森田 裕司 加藤 義治
出版者
金原出版
雑誌
整形・災害外科 (ISSN:03874095)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.111-115, 2016-01-01

発育性股関節形成不全の診断では臼蓋側被覆だけでなく前方被覆の評価も重要である。そこで今回、著者らはトモシンセンス(TS)立位矢状断像を用いて臼蓋前方被覆を計測して、その有用性をfalse profile(FP)像と比較検討した。対象は前、初期変形股関節症で隣接関節に障害がない34例(男性7例、女性27例、平均年齢55.8歳)および健康成人ボランティア30例(男性25例、女性5例、平均年齢36.5歳)であった。これらを対象にTS像とFP像を撮影してvertical center anterior margin(VCA)角を測定し、臼蓋前方被覆を評価した。その結果、1)TS-VCA角はFP-VCA角より有意に大きく、TSの方の再現性が高かった。また、TS-VCA角とFP-VCA角は高い正の相関を示し、臼蓋前方被覆の計測ツールとしてTSは極めて有用であると考えられた。その理由として撮影時の体位設定が容易であること、臼蓋縁の変形があっても臼蓋前縁を明瞭に撮影できることが考えられた。以上より、トモシンセシスは立位で撮影が可能なため骨盤傾斜も考慮でき、放射線の実効線量も低く、汎用性の高いことが長所と考えられた。
著者
辻井 雅也
出版者
金原出版
雑誌
整形・災害外科 (ISSN:03874095)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.655-663, 2018-04-30

要旨:舟状大菱形・小菱形骨間関節(scaphotapeziotrapezoidal joint,以下STT関節)の関節症は,手関節の変形性関節症では頻度の高い疾患であるが,有症状性のものは少なく,報告も少ないために治療に一定の見解はない。その中で本邦においては関節固定術が一般的に用いられている方法と思われるが,固定術では手技が困難な上に手関節の可動域制限が必発である。また海外では母指CM関節症の治療に用いられる大菱形骨切除に第1中手骨基部を安定化させる関節形成術が好んで用いられている。しかし靱帯形成術にも多くの合併症が報告されており,またSTT関節症に対する有用性を示した研究は少ない。そこでより簡便で安全な方法に舟状骨遠位部切除術があり,良好な除痛効果,筋力の回復だけでなく,可動域の改善も示されている。われわれは鏡視下に舟状骨遠位部切除を行っており,その手術方法や術後成績についても述べた。
著者
出澤 真理
出版者
金原出版
雑誌
整形・災害外科 (ISSN:03874095)
巻号頁・発行日
vol.59, no.13, pp.1749-1758, 2016-12
著者
冨田 恭治 高倉 義典 宮崎 潔
出版者
金原出版
雑誌
整形・災害外科 (ISSN:03874095)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.1069-1072, 2005-08
被引用文献数
1 2