著者
細井 淳 天野 一男
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.8, pp.493-498, 2012-08-15 (Released:2012-12-19)
参考文献数
23
被引用文献数
1

海底噴火に伴う巨大軽石の種類は,海底火山活動の種類や形成環境に左右される.そのため巨大軽石の解析は過去の海底火山活動や噴火環境の推定に役立つ.今回,奥羽脊梁山脈に分布するグリーンタフ中から発見した巨大軽石は気泡が伸長した跡が残されており,グリーンタフ中で初めて材木状軽石と認定できた.材木状軽石は水深約1000 m以深で形成される気泡がパイプ状に伸長した巨大軽石である.本発見は本研究地域のグリーンタフを噴出した古海底火山活動の場を制約する重要な鍵になる.材木状軽石は琉球弧や伊豆・小笠原弧の背弧リフト帯から発見されている.現在の背弧リフト帯における材木状軽石と海底熱水鉱床の存在は,本研究地域の材木状軽石と黒鉱鉱床の存在という点で類似する.この事実は本研究地域が背弧リフト帯と同様のテクトニクスや火山活動下にあった可能性を示唆している.
著者
天野 一男 松原 典孝 及川 敦美 滝本 春南 細井 淳
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.Supplement, pp.S69-S87, 2011-09-01 (Released:2013-02-20)
参考文献数
46
被引用文献数
6

棚倉断層は新第三紀に日本列島形成に大きく関わって活動した大規模な横ずれ断層であり,断層沿いに多くの横ずれ堆積盆が発達する.その堆積盆内では断層の活動と海水準変動により堆積環境は,湖沼→河川→浅海→深海へと変化した.また,日本海の拡大と関連して活動したデイサイト質水中火山も存在する.本地域は日本列島の新生代テクトニクスを考える上での要の地域の一つである.本見学旅行では,横ずれ断層の運動に伴って形成された堆積盆内の堆積環境の変遷と火成活動を中心に観察する.
著者
細井 淳 天野 一男
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.119, no.9, pp.630-646, 2013-09-15 (Released:2014-02-07)
参考文献数
88
被引用文献数
4 5

グリーンタフの研究は1990年頃,層序に基づいて総括された.しかし近年,グリーンタフの模式地である男鹿半島の層序が大幅修正された.また,堆積学的研究があまり行われていないため,グリーンタフを形成した当時の具体的な火山活動や堆積環境は不明である.本研究は奥羽脊梁山脈に位置する岩手県西和賀町周辺のグリーンタフを対象とし,堆積相解析を行った.結果,具体的な堆積場とその変遷,古火山活動(非爆発的噴火を2タイプ,爆発的噴火を3タイプ)を解明した.これらの結果を総合して,本研究地域の堆積盆発達史を5つのステージに区分して議論した.本地域は約20 Ma頃にハーフグラーベンを形成し,堆積盆内では成層火山型の海底火山を形成した.その後泥岩が堆積する静穏な時期を挟み,約15~14 Ma頃にテクトニックな急激な沈降と連続的な爆発的噴火が起こり,最終的に溶岩ドームを形成した.
著者
田切 美智雄 青井 亜紀子 笠井 勝美 天野 一男
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.6, pp.300-313, 2008-06-15 (Released:2009-03-22)
参考文献数
39
被引用文献数
5 6

大子地域に分布する新第三系中新統に産する火山岩類の化学組成とK-Ar放射年代を求めた.火山活動はカルクアルカリ系列および島弧型ソレアイト系列から海洋性ソレアイト系列へと変化した.放射年代は18.0~15.5 Maを得た.大子地域の浮遊性有孔虫化石帯の結果と火山活動の化学的特徴を茂木地域の結果と比較した.大子地域の早期中新統の地層は茂木層に対比されること,男体山火山角礫岩のアイスランダイトは茂木層のアイスランダイトと対比できることが示された.さらに,大子-茂木地域では,日本海拡大に関係する2度の海洋性ソレアイト系列の火山活動があることが示された.
著者
松原 典孝 天野 一男
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.3, pp.134-150, 2010 (Released:2010-10-13)
参考文献数
66
被引用文献数
5

南部フォッサマグナ東部を構成する丹沢地塊には,古伊豆-小笠原弧所属の海洋性島弧を形成していた中新世の水中溶岩類や水中火山砕屑岩類が広く分布している.この島弧火山活動に伴って形成されたペペライトが随所で認められる.ペペライトの存在は堆積作用と火成活動が同時に起こっていた証拠として極めて重要である.本論文では丹沢地塊の4箇所において,4つの岩相のペペライトを記載し,古火山体中での位置づけと,その形成メカニズムを推定した.ペペライトは火山岩片の形状から流体状のペペライト(fluidal peperite)とブロック状のペペライト(blocky peperite)に分けられる.従来,ペペライトのタイプは未固結堆積物の粒径に左右されるとされてきたが,丹沢地塊においては必ずしも堆積物の粒径に左右されてはいないことが分かった.これらのペペライトは,丹沢地塊がかつて所属した古海洋性島弧の火山体中核部附近において,水中火山活動に伴って形成されたものと考えられる.