著者
太田 保世
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.819-823, 1995-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10

宇宙飛行に際して人間が経験するのは,引力圏を脱する時の大きな重力加速度(G)と,宇宙空間での無重力状態である.前者は戦闘機の訓練などに関連して早くから研究が進んできた.後者は,航空機の放物線飛行による無重量状態が本格的な研究の出発点であった.宇宙ステーションあるいはスペース・シャトルの誕生によって,真の無重量状態での医学的研究が大きく進歩した.本稿は,その無重量状態での呼吸機能の変化について,筆者らの睡眠と上気道抵抗に関する研究を含めて解説を加える.睡眠中の上気道抵抗には重力の影響がきわめて大きいこと,機能的残気量が減少すること,循環血液の再分布で,肺内血液量が増加し,肺拡散能力およびその膜成分(Dm)の増加することなど,多くの変化が確認されている.ある意味で宇宙医学は,地球上で重力の影響に適応をしてきた形態や機能の再順応,再適応の医学である.
著者
太田 保世
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.1-3, 1999-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1
著者
廣川 豊 近藤 哲理 太田 保世 金沢 修
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.940-946, 1995-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
21

誘発によらない自然発症時の過換気症候群 (HVS) の病態を解析する目的で, 過去11年間に当院を受診したHVS患者508名の病歴を検討し, さらに, 質問票を郵送して緩解期の症状と予後の調査を行った. 急性HVSは10歳代女性に多かったが, 5~85歳と幅広く分布していた. 主症状は呼吸困難やしびれが多く, 誘発試験の症状 (胸痛, 動悸等) と異なっていた. 誘因の多くは不安や悩み, 発熱, 嘔気・嘔吐で, 約20%の患者が不安神経症を併発していた. 約半数の症例は, 疾患の説明のみで症状の軽快を得ていた. 以上の結果は血液ガスを確認した群と臨床所見のみで診断した群で大きな差はなかった. 慢性HVSの頻度は約2%で, 中年女性に多かった. 急性・慢性のHVSの約半数で発作を反復しており, 約10%で反復期間は3年以上であった. 長期間急性発作を反復する症例では, 緩解期に空気飢餓感やため息を認めた. 以上より, HVSの診断における臨床所見の重要性を強調したい.
著者
近藤 哲理 田崎 厳 廣川 豊 谷垣 俊守 小野 容明 太田 保世
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.621-625, 1999
被引用文献数
8

1998年末に,わが国にドライパウダー(DPI)ステロイドが導入された.本研究では,DPI未導入時に以下の群のディスクヘラーの吸気気流(PIF)を検討した:器具に習熟した医薬情報担当者(EX群,5名),原理のみを理解している呼吸器科医(RP群,19名)および一般人(NM群,31名),ビデオテープによる簡易指導後の患者(TP群,93名).50l/min以下のPIFではブリスター内に高頻度に薬剤の残留を認めた.EX群のPIFは96.1±12.6l/m(平均±標準偏差)であった.PIFとマウスピース内圧(Paw)にはPIF=√^<16.3><Paw-1.19>,(r=0.97)の関係があったため,他の群では市販の気圧計を改造した携帯型圧力計により,Pawを測定してPIFを計算した.RP群のPIFは77.0±30.1l/mで,不適切と考えられるPIF(100l/m以上および50l/m未満)の者が36.8%存在した.NM群のPIFは53.5±20.4l/mでRP群より有意(t検定)に低く,不適切PIF者が54.8%存在した.TP群のPFは64.9±24.5lmでRP群よりも有意に低く,不適切PIF者は43.2%存在した.適切な吸入気量を効率よく達成するためには,PIFの定量的な表示が必要と思われる.