著者
貝 健三 小峯 優美子 小峯 健一 浅井 健一 黒石 智誠 小堤 知行 板垣 昌志 太田 實 熊谷 勝男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.873-878, 2002-10-25
被引用文献数
6 23

乾乳早期のブドウ球菌性乳房炎に罹患したホルスタイン種の乳牛に対して,ウシラクトフェリンの臨床効果を評価した.3農場でブドウ球菌性乳房炎を発症した41分房から無作為に選定した12分房にはウシラクトフェリンを投与し,29分房には対照として抗生剤を投与した.その結果,ウシラクトフェリン投与区では91.7%の乳房炎分房が分娩後7日目までに治癒し,対照区では48.3%が治癒した.別の分房を用いて乳汁の変化を調べたところ乳房炎分房における乳汁中のブドウ球菌数は,ウシラクトフェリンを投与した5分房および抗生剤を投与した対照の5分房において,投与後,有意に減少した(p<0.05).この乳汁における全細胞数は,ウシラクトフェリンを投与した分房では増加したが,対照分房では変化が認められなかった.また,健康な乳房においてもウシラクトフェリンを投与した6分房に限って,乳汁中全細胞数が増加し,これらの細胞の多くは多形核白血球および補体受容体であるCD11bの陽性細胞といった食細胞群であった.乳房炎分房における乳汁中C3濃度はウシラクトフェリンを投与した5分房で有意に増加したが(p<0.05),対照の5分房では投与後の有意差は認められなかった.以上の結果より,ウシラクトフェリンによる治療には乾乳早期のブドウ球菌性乳房炎に対して宿主の自然免疫を誘導し,乳房炎の治癒率が高まる可能性が示唆された.
著者
平山 琢二 大城 政一 加藤 和雄 太田 實 Hirayama Takuji Oshiro Seiichi Katoh Kazuo Ohta Minoru
出版者
日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 = Animal Science Journal (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.J258-J263, 2000-04

雑種雄ヤギ3頭(平均体重:22±3Kg)を用いて,適温環境下(温度20℃,相対湿度80%)および暑熱環境下(温度33℃,相対湿度80%)において,飼料摂取量を等しくした場合における,消化率,第一胃内VFA濃度,第一胃収縮の頻度・振幅,総咀嚼回数および消化管通過速度を測定した.消化率は,暑熱環境で高い傾向にあり,粗タンパク質とNDF消化率で有意差が認められた(P< 0.05).第一胃内VFA濃度は,暑熱環境下で高い傾向を示し,特にn-酪酸濃度で有意差が認められた(P< 0.05).摂取飼料の体内滞留時間は,暑熱環境下で延長される傾向にあった.第一胃収縮の振幅および頻度は,暑熱環境で低い傾向にあり,採食時で有意差が認められた(P< 0.05).これらの結果から,ヤギを暑熱環境下へ暴露することで,第一胃内収縮運動が低下して摂取飼料の体内滞留時間が延長され,第一胃内における摂取飼料片の分解が活発に行われたという一連の生理反応に対する因果関係が示唆された. A study was undertaken to determine the effect of heat exposure (33°C,80%) on the rumen volatile fatty acids (VFA) concentration and passage rate of feeds through the digestive tract of goats. Goats initially housed in thermoneutral environment (20°C,80%) were fed once daily with equal amounts of sudan grass hay (2cm-cut) in both environments. The digestibilities of crude protein and neutral detergent fiber (NDF) were higher in heat exposure (P<0.05). The concentration of VFA, particularly n-butyric acid, in the rumen tended to increase in beat exposure. Also, the passage rate of feeds through the digestive tract of goats tended to decrease. The amplitude and frequency of contract in internal pressur of the rumen were higher in heat exposure (P<0.05).