著者
平田 昌弘 板垣 希美 内田 健治 花田 正明 河合 正人
出版者
日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.175-190, 2013-05-25
参考文献数
28

本研究は,BC1200~BC300年頃に編纂されたVeda文献/Pāli聖典をテキストに用い,古代インドの乳製品を再現・同定し,それらの乳加工技術の起原について推論することを目的とした.再現実験の結果,dadhi/dadhiは酸乳,navanīta/navanīta・nonītaはバター,takra/takkaはバターミルク,ājya/—はバターオイル,āmikṣā/—はカッテージチーズ様の乳製品,vājina/—はホエイと同定された.sarpiṣ/sappihaはバターオイル,sarpirmaṇḍa/sappimaṇḍaはバターオイルからの唯一派生する乳製品として低級脂肪酸と不飽和脂肪酸の含有量が多い液状のバターオイルであると類推された.Veda文献・Pāli聖典は,「kṣīra/khīraからdadhi/dadhiが,dadhi/dadhiからnavanīta/navanītaが,navanīta/navanītaからsarpiṣ/sappiが,sarpiṣ/sappiからsarpirmaṇḍa/sappimaṇḍaが生じる」と説明する.再現実験により示唆されたことは,この一連の加工工程は「生乳を酸乳化し,酸乳をチャーニングしてバターを,バターを加熱することによりバターオイルを加工し,静置することにより低級脂肪酸と不飽和脂肪酸とがより多く含有した液状のバターオイルを分離する」ことである.さらに,ユーラシア大陸の牧畜民の乳加工技術の事例群と比較検討した結果,Veda文献・Pāli聖典に記載された乳加工技術の起原は西アジアであろうことが推論された.
著者
高橋 健一郎 堀 武司 波 通隆 本間 稔規 小高 仁重 口田 圭吾
出版者
日本畜産学会
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.237-244, 2006-05-25
参考文献数
8
被引用文献数
1

高精細牛枝肉横断面撮影装置(以下,新型撮影装置)により得られた牛枝肉画像を複数の画像形式に変換し,BCSナンバーの推定に最適な方法を検討した.材料には新型撮影装置を用いて撮影された黒毛和種肥育牛46頭の第6-7肋骨間の鮮明な画像を用いた.画像はロース芯をその輪郭で抽出したJPEG形式とTIFF形式の画像,ロース芯の一部を矩形で切り取ったJPEG形式とTIFF形式の画像および輝度ムラを補正し,上記と同様の処理をしたJPEG画像(ロース芯,矩形)の計6種類の画像を用意した.その6種類の画像よりロース芯全体,ロース芯の筋肉および脂肪交雑部分のR(赤),G(緑),B(青)各階調値および輝度の平均値など,計108変数を算出した.格付員によるBCSナンバーを従属変数,画像解析で得られた形質を説明変数候補とする重回帰分析を行ったところ,輝度ムラ補正を行い,ロース芯をその輪郭で抽出した画像において決定係数がもっとも高かった(R<SUP>2</SUP>=0.793).推定されたBCSナンバーと格付員によるそれとの差が&plusmn;0であったサンプルの割合は95.7%となった.以上のことから高精細撮影装置による圧縮画像からでも非常に高い精度でBCSナンバーを判定可能であることが示された.
著者
平山 琢二 大城 政一 加藤 和雄 太田 實 Hirayama Takuji Oshiro Seiichi Katoh Kazuo Ohta Minoru
出版者
日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 = Animal Science Journal (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.J258-J263, 2000-04

雑種雄ヤギ3頭(平均体重:22±3Kg)を用いて,適温環境下(温度20℃,相対湿度80%)および暑熱環境下(温度33℃,相対湿度80%)において,飼料摂取量を等しくした場合における,消化率,第一胃内VFA濃度,第一胃収縮の頻度・振幅,総咀嚼回数および消化管通過速度を測定した.消化率は,暑熱環境で高い傾向にあり,粗タンパク質とNDF消化率で有意差が認められた(P< 0.05).第一胃内VFA濃度は,暑熱環境下で高い傾向を示し,特にn-酪酸濃度で有意差が認められた(P< 0.05).摂取飼料の体内滞留時間は,暑熱環境下で延長される傾向にあった.第一胃収縮の振幅および頻度は,暑熱環境で低い傾向にあり,採食時で有意差が認められた(P< 0.05).これらの結果から,ヤギを暑熱環境下へ暴露することで,第一胃内収縮運動が低下して摂取飼料の体内滞留時間が延長され,第一胃内における摂取飼料片の分解が活発に行われたという一連の生理反応に対する因果関係が示唆された. A study was undertaken to determine the effect of heat exposure (33°C,80%) on the rumen volatile fatty acids (VFA) concentration and passage rate of feeds through the digestive tract of goats. Goats initially housed in thermoneutral environment (20°C,80%) were fed once daily with equal amounts of sudan grass hay (2cm-cut) in both environments. The digestibilities of crude protein and neutral detergent fiber (NDF) were higher in heat exposure (P<0.05). The concentration of VFA, particularly n-butyric acid, in the rumen tended to increase in beat exposure. Also, the passage rate of feeds through the digestive tract of goats tended to decrease. The amplitude and frequency of contract in internal pressur of the rumen were higher in heat exposure (P<0.05).