著者
赤石 記子 太田 菜 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.91, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】食物アレルギーに悩む患者は多く、幼児期や成人期で新たに発症するものとして果物があげられる。原因食品の中でもバナナは安価で通年入手しやすく、離乳食や給食での出現頻度が高い。生食のほかケーキやジュースに加工されることが多く、種々の加熱法が施される。加熱により一部の抗原が低下するといわれているが、実際の調理事例に当てはめた報告は少ない。そこで今回は加熱条件を変えて調製したバナナを対象に、低アレルゲン化と抗酸化性に及ぼす影響について検討した。【方法】外皮を除いた市販のフィリピン産バナナを5mm厚さの輪切りにした。未加熱(生)を対照に100gずつに分け、バナナを使用した菓子類の加熱条件を想定し、フライパンによる板焼き加熱法(中火、両面各5分)、オーブン加熱法(180℃、20分)、蒸し加熱法(中火、12分)、電子レンジ加熱法(500W、4分)とした。これら加熱法別試料の重量変化率、糖度、テクスチャー、及び化学発光法による抗酸化能を測定した。また試料中のたんぱく質を抽出し、電気泳動分析による分子量分布から、加熱条件別の抗原の変化を比較した。【結果】重量変化率は、オーブン加熱法で大となり蒸し加熱法で小となった。糖度は、重量変化率が大で濃縮されているオーブン加熱法で高くなった。抗酸化能は、未加熱に対し焼き加熱法とオーブン加熱法で有意に高く、これは加熱によるメラノイジン生成が多く生じたことが原因と考えられた。一方蒸し加熱法や電子レンジ加熱法は、未加熱との有意差がみられなかった。電気泳動分析の結果、電子レンジ加熱法で全てのバンドが消失しその他の加熱法でもバンドが薄くなったことから、加熱によるアレルギーの低減化の可能性が期待できた。