著者
奥松 俊博 岡林 隆敏 永田 正美
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、高精度振動特性推定法による橋梁構造物の健全度診断とリアルタイムモニタリングの確立を目指したものである。移動体通信による可搬型動態観測・データ転送システムを用いて、実現場対応型のシステムへと発展させた。橋梁動特性や温度などの各種データの統合、高機能携帯端末による遠隔モニタリングにより、橋梁維持管理のためのユビキタス環境の構築を行なった。一方で、本研究で開発したシステムを実橋梁長期モニタリングに適用し、橋梁健全度診断を行うための基礎データの蓄積、すなわち気温等の環境変動に伴う、橋梁振動特性の年間変化を明らかにした。以下に研究実績を示す。(1)構造同定理論を用いた高精度振動特性推定法およびプログラム開発:健全度診断のための構造同定理論を用いた高精度振動特性推定法を適用し、実構造物の挙動から固有振動数の推定を行った。(2)リアルタイム計測システムの開発:小型センサを導入し、多点計測の有効性を確認した。その一方で橋梁構造物の健全度診断を行なうためには、長期モニタリングが必要となるため、現状では電源供給等に問題があることを認識した。よって本研究期間内の実橋長期モニタリングを行なう上では、従来の加速度計を適用した。(3)データ抽出等に関する検討:多機能携帯端末を利用したデータブラウジング、および実時間モニタリングシステムについて、必要情報の効率的抽出について検討および処理ソフトの開発を行なった。さらに遠隔地の管理事務所において統合化した情報を効率的に閲覧するためのモニタリングシステムを構築した。(5)実橋梁長期モニタリングの実施:実橋梁の長期遠隔振動モニタリング実験を行なった。固有振動数は季節的な温度変化により変化することを確認した。
著者
岡林 隆敏 中 忠資 奥松 俊博 Hao JIEXIN
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.474-487, 2008 (Released:2008-06-20)
参考文献数
33
被引用文献数
3 2 2

本論文では,常時微動自動計測システムの核となる算法を確立するために,常時微動多点観測により得られたデータに基づき多次元ARモデルから構造物の振動特性(振動数,モード減衰定数,振動モード)を高精度に自動推定する算法を提案した.橋梁の状態方程式で表した運動方程式を多次元ARMAモデルへ変換する構成法を明確にし,ここから誘導される多次元ARモデルから振動特性を自動推定する手法を示した.さらに,多点観測による多次元ARモデルと1点観測の1次元ARモデルの関係を示した.ランガー桁橋常時微動シミュレーション,5自由度系模型の常時微動実験,ランガートラス橋の常時微動実測に本手法を適用し,振動特性の自動推定の有効性を確認し,推定精度の検討を行った.