著者
三木 千壽 平林 泰明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.518-532, 2007 (Released:2007-07-20)
参考文献数
9
被引用文献数
4 12

製作時に残された溶接欠陥や不適切な溶接などの不具合を原因として鋼製橋脚や鋼橋に生じた疲労損傷の実例を示すとともに,そのような不具合が生じる原因や防止対策を検討している.疲労損傷に至った不具合のほとんどは完全溶け込み溶接を不完全溶け込み溶接で施工するなど示方書の規定に反する施工に起因するものであり,溶接施工が難しい,あるいは品質の確認が困難な継ぎ手ディテールの採用がそのような不具合を引き起こす原因となっている.
著者
別府 万寿博 大野 友則 大久保 一徳 佐藤 和幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.700-716, 2010 (Released:2010-12-20)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究は,火薬庫や重要構造物などのコンクリート構造物の耐爆設計法の確立に資するため,カーボンおよびアラミド繊維で裏面を補強したコンクリート板の接触および近接爆発荷重に対する耐爆性能(損傷および飛散物の低減)について実験的に検討したものである.実験では,C4爆薬を接触・近接爆発させ,繊維の方向,補強枚数がコンクリート板の耐爆性能に与える影響と補強の効果を調べている.また,繊維シートによるコンクリート板の耐爆補強効果について,応力波理論および繊維シートによる押し抜きせん断耐力増加の観点から考察した.
著者
片岡 正次郎 佐藤 智美 松本 俊輔 日下部 毅明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.740-757, 2006 (Released:2006-10-20)
参考文献数
62
被引用文献数
2 19

大規模地震を含むマグニチュード5以上の地震の強震記録約11,000波を用いて,地震動の最大加速度,最大速度,SI値,計測震度及び加速度応答スペクトルの距離減衰式を作成した.この距離減衰式は,モーメントマグニチュードと震源距離のほか,スペクトルインバージョンにより推定された加速度震源スペクトルの短周期レベルをパラメータとした回帰式である.短周期レベルをパラメータとした場合には,そうでない場合と比較して,顕著にばらつきの小さい距離減衰式が得られた.また,短周期レベルと地震モーメントとの関係を整理し,その地域性を考察するとともに,地震のタイプごとの関係式を提案した.
著者
西川 隼人 宮島 昌克
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.784-796, 2009 (Released:2009-08-20)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

本論文では計測震度と最大加速度のみ収集している自治体観測点を想定して,これらの地震動指標から地震動の周期特性を把握するために,実効加速度と最大加速度の比(最大加速度比)と地震動の卓越周期の関係を調べた.まず,最大加速度比と地震動スペクトルの関係を調べ,スペクトル形状と最大加速度比が関連していることを明らかにした. 続いて,地震観測記録からフーリエスペクトルと速度応答スペクトルのピーク周期を求め,最大加速度比との対応を調べたところ,最大加速度比の変化が震度フィルターの形状と概ね対応していることが分かった.最後に最大加速度比と実効加速度をパラメータとする周期1~2秒の速度応答スペクトル評価式を提案し,単一の地震動指標の場合に比べて高い精度で応答スペクトルを評価できることを明らかにした.
著者
中山 太士 木村 元哉 池田 学 北 健志 長嶋 文雄 松井 繁之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.467-476, 2010 (Released:2010-08-20)
参考文献数
25

道路上を立体交差する鋼鉄道橋では,道路を走行するクレーン車等に衝突される事故が報告されている.この事故が発生した場合,現場技術者は即座に列車を抑止させ,鋼鉄道橋の損傷状況を調査し,抑止継続あるいは運転再開を判断している.軌道や支承部,主桁等に著しい損傷が発生した場合,抑止継続の判断は容易であるが,主桁下フランジの局部的な変形や面外変形のみが残留した場合,明確な運転再開評価法がなく,現場技術者の判断に委ねられているため,この評価法の策定が課題となっている.本研究は,この課題解決を目的に,過去の損傷事例の調査結果および鋼材の材料特性,鋼桁の耐荷力特性を検討した.その結果,下フランジの局部変形および面外変形の限界量を明らかにし,運転再開評価法を策定した.
著者
丸山 喜久 山崎 文雄 用害 比呂之 土屋 良之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.582-594, 2006 (Released:2006-07-20)
参考文献数
20

高速道路で重大事故や大規模災害等が発生した場合,その負傷者が重傷である可能性が高く,ドクターヘリを活用することにより高い救命効果が期待できる.一方,ヘリコプターの離着陸に伴うダウンウォッシュと呼ばれる吹き下ろし風が原因となり,対向車線の走行車両が二次的な事故を起こしてしまうことが懸念されている.そこで,本研究では,建設中の第二東海自動車道(第二東名)においてドクターヘリのダウンウォッシュ風速の観測を行った.さらに,実車を用いた走行実験と数値解析により,ドクターヘリのダウンウォッシュが車両の走行安定性に与える影響について評価した.
著者
近藤 明雅 山田 健太郎 小野 彰之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.434-443, 2007 (Released:2007-07-20)
参考文献数
12

繰返し荷重を受ける耐候性鋼無塗装橋では,その疲労挙動が問題になる.本研究では,約25年間大気暴露した十字すみ肉溶接継手32体と面外ガセット溶接継手8体を疲労試験し,筆者らが,過去に行った無暴露材,2, 4, 10年大気暴露材の試験結果と比較した.十字すみ肉溶接継手のうち15体は,暴露前に疲労寿命の約25%の繰返し荷重を載荷した後に暴露したものである.その試験体で,比較的大きい疲労き裂が発生していたものは,無暴露材,2, 4, 10年暴露材の疲労強度から低下したが,疲労き裂が小さいか認められない場合には,疲労強度の低下はみられなかった.溶接したままで約25年間大気暴露した十字すみ肉試験体17体と面外ガセット溶接継手では,疲労強度の低下は見られなかった.
著者
大野 友則 大山 浩代 別府 万寿博 塩見 昌紀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.875-888, 2008 (Released:2008-11-20)
参考文献数
24

煙火工場等の火薬類を貯蔵する火薬庫の建設においては,万が一の爆発に際しても周辺への安全を確保する必要性から保安距離が定められている.保安距離は自由空間中における爆発事象を基準として定められているが,堅固な鉄筋コンクリート造の周囲を覆土した覆土式火薬庫の内部爆発事象は自由空間での爆発とは異なるはずである.本研究は,爆発実験室で模型火薬庫を用いた爆発実験を行い,構造物の破壊や爆風圧の大きさに及ぼす覆土の効果について検討を行っている.模型火薬庫試験体は実規模の約1/20の縮尺とし,C4爆薬を試験体内部で爆発させた.実験では,覆土の厚さおよび爆薬量をパラメータとした.実験結果に基づいて覆土の有無や厚さが爆風圧に及ぼす効果を考察し,換算距離と最大爆風圧の関係を求め,現行の保安距離に係る規定との比較を行った.
著者
山本 泰幹 半野 久光 藤野 陽三 矢部 正明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.13-30, 2010 (Released:2010-01-20)
参考文献数
26

首都高速道路における長大吊構造系橋梁である横浜ベイブリッジ,レインボーブリッジ,鶴見つばさ橋は,現在耐震補強工事が進められている.ここでは,3橋梁の内,長大斜張橋の横浜ベイブリッジを対象にダブルデッキ形式の主桁の下層に位置する鋼製トラス桁,および鋼製主塔を対象とした耐震性能の照査について示した.鋼製下路トラス桁と鋼製主塔は,その耐力や非線形特性に関する実証的な研究成果がないため,3次元シェル要素で当該構造をより実態に近い形でモデル化し,着目する損傷箇所に生じる地震応答が最大となる時刻における慣性力分布を地震力とするプッシュオーバー解析を行い,その耐震性能を照査した.
著者
川島 一彦 高橋 良和 葛 漢彬 呉 智深 張 建東
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.825-843, 2009 (Released:2009-09-18)
参考文献数
11
被引用文献数
3

本論文は2008年5月12日に中国で発生した中国四川地震(汶川地震)による橋梁被害を示すものである.現地調査は2008年8月9日∼15日を基本とし,この他,複数回の個別調査も行った.本地震による主要な強震記録とその特性,中国における橋梁の耐震設計の概要と設計地震力,被害との関連も検討する.最後に,本文に示す橋梁被害から得られた四川汶川地震による橋梁被害の特徴及び原因について示す.
著者
丸山 喜久 山崎 文雄 用害 比呂之 土屋 良之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.208-216, 2008
被引用文献数
1

2004年10月23日に発生した新潟県中越地震では,関越自動車道と北陸自動車道の一部区間でとくに盛土部に震動が原因となった被害が多数発生した.そこで,本研究では,詳細な高速道路被害データと250mメッシュ単位で細密に推定した地震動強度分布をもとに,盛土部の被害程度と地震動強さの関係について統計的な分析を行い高速道路盛土部の被害関数を構築した.その結果,車両の走行に支障のある被害は,計測震度が5.1∼5.2のとき0.05∼0.1件/kmの被害率を示すと推定された.走行に支障のない軽微な被害も含めると,計測震度4.5∼4.6のとき0.05∼0.1件/kmの被害率を示した.
著者
宮下 剛 藤野 陽三
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.561-575, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

スキャニングレーザードップラー速度計を三台連動させ,対象物の三次元挙動を高精度かつ空間的に高密度に計測可能な振動計測システムを開発する.計測原理としては,三方向から振動計測を行い,計測された速度成分を対象物に設定された直交座標系の成分にレーザー照射角度に基づく座標変換を用いる.まず,計測原理を検討するために基礎的なシステムを構築し,その妥当性を検証した.次に,現場計測への適用を想定して,任意の配置を許すスキャニング計測可能な三次元振動計測システムを構築し,屋内実験からその妥当性を検証した.本システムを用いて実構造物や実地盤を計測することで,常時微動や列車・交通荷重による三次元局所変形・振動特性を明らかにし,既存の社会基盤施設に対する予防保全・機能性向上に貢献することが期待される.
著者
森下 政浩 阿曽沼 剛 栗木 茂幸 竹本 憲介 齊藤 和伸 松尾 啓
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.865-876, 2006 (Released:2006-10-20)
参考文献数
19

本研究では,爆発荷重を受ける鉄筋コンクリート構造物の設計法及び防護法の確立に資するため,豊浦標準砂を用いた覆土の有無,ペントライト爆薬の質量及びスタンドオフ距離をパラメータとして鉄筋コンクリート版試験体の近接爆発試験を実施し,試験体に生じたクレータ,スポール及び貫通孔の発生状況に着目して検討を行った.その結果,爆発荷重に対する覆土の緩衝効果が明確に認められること,McVayのスポール損傷予測法を基に本研究で提案した方法により,覆土のない場合の鉄筋コンクリート版の損傷をより精度よく予測できることなどが明らかとなった.
著者
野津 厚 山田 雅行 長尾 毅
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.891-905, 2006 (Released:2006-10-20)
参考文献数
38

地下構造の情報が十分でなく,差分法等による地震動の評価が困難な地域において,周期数秒の帯域での強震動評価の精度向上を図ることは重要な課題である.本研究は,既往の研究で短周期地震動への適用性が示されている経験的サイト増幅・位相特性を考慮した強震動評価手法について,周期数秒の盆地生成表面波への適用性を検討したものである.まず,九州地方の強震観測点における経験的サイト増幅特性を評価し,これを利用して,1997年3月26日鹿児島県北西部地震に対し,同手法による強震動シミュレーションを実施した.その結果,カルデラ内で卓越する周期数秒の盆地生成表面波を良好に再現できることがわかり,周期数秒の帯域における強震動評価手法としての同手法の有用性を示すことができた.
著者
野津 厚 宮島 正悟 中西 豪 山田 雅行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.877-890, 2006 (Released:2006-10-20)
参考文献数
35

想定東海地震のような,陸地の極近傍で発生する海溝型の巨大地震による震源近傍の強震動については,強震記録が存在しないため,不明な点が多い.本研究では,経験的サイト増幅・位相特性を考慮した統計的グリーン関数法により,想定東海地震の震源近傍における強震動の評価を実施している.強震動の評価に必要なサイト増幅特性はスペクトルインバージョンにより推定し,2001年4月3日静岡県中部の地震(MJ5.3)の強震記録を利用して強震動評価手法の妥当性を検証した上で,想定東海地震に対する強震動評価を実施している.その結果,震源近傍における地震動はサイト増幅特性に大きく依存し,サイト増幅特性の特に大きい場所では,1995年兵庫県南部地震の観測波を上回る地震動も想定されることがわかった.
著者
柴沼 一樹 宇都宮 智昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.108-121, 2007 (Released:2007-02-20)
参考文献数
14
被引用文献数
5 5

本論文では,均質材の二次元線形破壊力学問題に対し,曲線き裂を含むX-FEMの一般的なモデル化の提案及びそれらを用いた解析結果の総合的な評価を行った.モデル化として(1)曲線き裂と分割された積分領域のモデル化,(2)C属性節点領域の範囲のモデル化,(3)C及びJ属性節点領域で構成された曲線き裂モデルの写像変換手法を提案した.その解析結果の検証より,写像変換の有効性も含め,提案したモデル化の有効性が示された.また,曲線き裂に関してM積分の経路独立に関する制限を明確にした.さらに,き裂進展シミュレーションからき裂進展方向とM積分経路内部のき裂の角度変化を用いた精度評価方法を適用し解析結果の信頼性を確認した.
著者
岡林 隆敏 中 忠資 奥松 俊博 Hao JIEXIN
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.474-487, 2008 (Released:2008-06-20)
参考文献数
33
被引用文献数
3 2 2

本論文では,常時微動自動計測システムの核となる算法を確立するために,常時微動多点観測により得られたデータに基づき多次元ARモデルから構造物の振動特性(振動数,モード減衰定数,振動モード)を高精度に自動推定する算法を提案した.橋梁の状態方程式で表した運動方程式を多次元ARMAモデルへ変換する構成法を明確にし,ここから誘導される多次元ARモデルから振動特性を自動推定する手法を示した.さらに,多点観測による多次元ARモデルと1点観測の1次元ARモデルの関係を示した.ランガー桁橋常時微動シミュレーション,5自由度系模型の常時微動実験,ランガートラス橋の常時微動実測に本手法を適用し,振動特性の自動推定の有効性を確認し,推定精度の検討を行った.