著者
奥田 佑子 平野 隆之
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.101-116, 2017-09-30

本論文は,地域福祉権利擁護事業の再評価が生活困窮者自立支援事業や社会福祉協議会における総合相談体制の充実につながるのではないかという仮説から出発している.本論文の目的は,1)地域福祉権利擁護事業が本来持っていた地域福祉的要素の再確認,2)総合相談体制の形成のプロセスとその中での地域福祉権利擁護事業の役割の明確化,3)生活困窮者自立支援事業との関係から,今日的に地域福祉権利擁護事業が果たす機能の明確化の3 点である.方法として,文献研究,滋賀県内3 市社協を対象とした体制整備に関する事例研究,相談実績分析を行っている.研究の結果,幅広い相談を受け止め制度利用につなげる「前さばき」の機能を地域福祉権利擁護事業が持っており,それが総合相談や生活困窮者自立相談の基盤となっていることが明らかとなった.また,社会的孤立や権利侵害の状態に置かれた人への相談への対応が,地域や他機関・多職種との連携・ネットワークづくりにつながっていることが分かった.
著者
平野 隆之 奥田 佑子
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.134, pp.91-106, 2016-03

生活困窮者自立支援制度の「自由な運用」を推進する方法として,東近江市でのモデル事業の研究で明確となった「実施体制」と「体制整備」との相互関連性を,大津市と高島市のなかにも見出すという研究方法を用いて,かかる推進枠組みの有用性と運用面での活用方法を検討した.その結果,実施体制のなかでも入口の相談強化や出口のプログラム創出には,体制整備として,①庁内・庁外を問わず連携会議の場の創出に加え,その場のマネジメントが重要であること.また,通常の会議とは異なった場の設定も有用であり,②手引きの作成や地域福祉計画等の委員会が相当すること.国のマニュアルにある「資源の開発」は各自治体においてハードルが高いことから,民間組織が先行する取り組みを評価し制度運用に活用することが有効な方法であり,そのための体制整備としては,③資源の開発における公民協働の方式が有効である.実施体制とその体制整備の概念化は,運用上の指針として,また比較分析の枠組みとして有用である.