著者
加藤 光裕 米谷 民明 大川 祐司 菊川 芳夫 風間 洋一 奥田 拓也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

H29年度は、当初計画の最終年度であったので、これまでの研究のまとめも兼ねて、駒場研究会「弦・場・素粒子」を開催し、他機関の研究者との情報交換と討論等、研究交流を行った。各分担研究に関しては、以下の通り。■加藤は、N=2超対称SYK模型の格子化に成功し有限自由度の場合について解析を進めている。また、N=4超対称SYK模型の構成についても取り組みを開始した。■米谷は、前年度の研究成果(共変的行列理論、および南部力学のハミルトン・ヤコビ理論の定式化)に基づき、さらに発展させるべく考察を進めた。■風間は、ブラックホール時空の地平線近傍における、代表的な異なる観測者によって量子化されたスカラー場のヒルベルト空間の構造の詳しい比較研究を行い、等価原理が量子論的にも成り立つことを示した。■菊川は、H28年に引き続き、フェルミオン行列式のゼロ点を境界にもつ,複数のLefschetz thimbleの経路積分への寄与を有効的に取り組む手法の検証と開発に取り組んだ。■大川は、プリンストン高等研究所の大森氏との共同研究により超リーマン面の超モジュライ空間の分割に基づく開いた超弦の場の理論の構成法を開発し、ボソンを記述する弦の場の4次までの相互作用を具体的に構成した。■奥田は、2次元の超対称性をあらわに保つ繰り込みの処方を定式化し、分配関数や vortex 演算子の相関関数の局所化計算に適用した。結合定数が空間的に変化する2次元理論のインターフェースを構成し期待値の局所化計算を行った。
著者
設楽 悦久 安島 華子 奥田 拓也 堀江 利治
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第34回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.5011, 2007 (Released:2007-06-23)

【目的】薬剤によるミトコンドリア障害は、細胞障害の引き金となり、有害事象の原因の一つとなりうる。これまでに一部の非ステロイド性抗炎症薬、スタチン系高脂血症治療薬およびtroglitaozoneが、ミトコンドリアにおける透過性遷移(mitochondrial permeability transition; MPT)を引き起こすことが報告されている。一方で、一部の培養細胞株においてP-糖タンパク (P-gp)がミトコンドリアに局在していることが最近報告されており、これが薬剤性ミトコンドリア障害に影響する可能性が考えられる。実際に、troglitazoneによるMPTに対して、P-gp阻害剤であるketoconazoleやverapamilを添加したところ、効果を減弱した(奥田ら, 日本薬学会第127年会)。そこで、各種スタチンによるミトコンドリア障害を観察し、P-糖タンパク阻害剤の影響について検討を行った。【方法】ラット肝および心筋より調製したミトコンドリア画分に薬剤を加えたときの540 nmにおける吸光度の低下により、ミトコンドリア膨潤を評価した。【結果】各種スタチンにより、ラット肝および心筋から調製したミトコンドリアにおいて膨潤が観察された。その効果は、simvastatin, cerivastatinおよびfluvastatinが特に強く、lovastatinがそれに続き、atorvastatin, rosuvastatinおよびpravastatinでは非常に弱かった。この順序は、筋障害の程度の順序と類似していた。Simvastatinによる膨潤に対するP-gp阻害剤の影響を見たところ、MPT阻害剤にもなるcyclosporin Aで抑制されたものの、ketoconazoleやverapamilの効果は小さかった。これはtroglitazoneとは異なる結果であった。