著者
藤井 効 石井 裕正 日比 紀文 奥野 府夫 水野 嘉夫 土屋 雅春
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.901-911, 1981-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
105

今回,著者らは低血糖発作を反復して死亡した原発性肝癌2症例を経験した.症例1は62歳の男性で,就寝後の発汗と体重減少を呈し,肝腫大と空腹時低血糖を認め,精査の結果,両葉にわたる原発性肝癌と診断され,数ヵ月の経過にて死亡した.症例2は57歳の女性で,肝腫大を主訴に入院精査し,原発性肝癌と診断され,肝腫大の増強と共に低血糖昏睡を反復しつつ比較的早期に死亡した.両症例とも癌組織中のIRI, ILA活性は陰性であった.原発性肝癌に伴う低血糖の本邦報告例は,1979年までに著者らの調べた範囲では112例あったが,成因に関してはまだ定説は認められていない.著者らの経験した2症例は,それぞれMacFadzeanの提唱するtype A, Bの低血糖症に相当すると考えられ,低血糖発生機序について一元的には説明し得ないと考えられた.
著者
土屋 雅春 石井 裕正 宮本 京 荒井 正夫 奥野 府夫 山内 浩 海老原 洋子 高木 俊和 神谷 知至 陶山 匡一郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1606-1613, 1980-12-25 (Released:2010-01-19)
参考文献数
13
被引用文献数
2

肝細胞固有の機能の一つとして重要視されている糖新生能を,糖原性アミノ酸であるL-Alanine (以下Ala)を負荷したときの血糖上昇度および糖代謝調節諸因子の動態を観察することにより判定し,本検査の肝細胞予備能判定法としての有用性につき検討した.対象は慶大内科において確診した肝硬変症17例(代償期8例,非代償期9例)および健常対照例6例の計23例である.15時間絶食後に10% Ala溶液300mlを30分間で静注し経時的に180分まで血糖, IRI,乳酸,アラニン,IRG値を測定した.Ala負荷後,対照群では,点滴終了直後に約10mg/dlの血糖上昇を認め,以後速やかに下降したが肝硬変代償期群では血糖上昇度は7mg/dlと低下傾向をみたが有意差はなかった.これに対して非代償期群では血糖上昇度は全くみられず,むしろ低血糖傾向すら示した.この非代償期群ではAla負荷後の血中乳酸・アラニン値も停滞しAlaの利用障害が示唆された.Ala負荷後血糖上昇のみられなかった群の予後は不良であり,本試験は肝細胞予備能判定の手段として有用であることが示唆された.