著者
吉田 澪奈 山内 浩文 佐久本 真梨夢 吉見 昭秀
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.646-653, 2023 (Released:2023-08-04)
参考文献数
40

様々な腫瘍においてスプライシング因子をコードする遺伝子の変異が繰り返し見られ,グローバルなミススプライシングを受けた遺伝子が新規の蛋白質アイソフォームの産生やRNA分解による蛋白質喪失を通して発がんにつながる機序が近年の研究で一部明らかになってきた。ミススプライシングを受けた遺伝子の一部は,その発現の変化を通して発がんに関わるシグナル伝達や細胞内プロセスに影響を与え,また他の遺伝子発現制御機構の異常と協調的に働くことにより発がんを誘導する。スプライシング異常を有する腫瘍への治療戦略として,薬理学的なスプライシングの阻害が合成致死の機序により腫瘍の抑制に有効であることが期待されており,薬剤開発と臨床試験が進められている。本稿ではスプライシング変異の特徴,細胞内機構への影響と発がん機構,また標的治療について概説する。
著者
盛岡 頼子 佐藤 弘 代田 文彦 山内 浩
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.845-849, 1999-03-20
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

肝硬変による腹水の治療は困難なものが多いが, 腹部症状を目標に大建中湯を用いて腹水が消失した症例を経験した。症例は67歳, 女性, 胃癌手術の際にC型慢性肝炎が発見され, 胃癌の術後より腹水が出現し, 利尿剤を投与されたが, 腹水貯留は著明で, 腹壁瘢痕ヘルニアのため2回手術が行なわれた。開腹時の肉眼所見では肝硬変像を呈していた。食欲不振, 易疲労が改善しないため, 漢方外来を受診した。補中益気湯, 五苓散, 小建中湯などを投与したが, 効果はみられなかった。しかし腹部の冷え, 腹鳴を目標に大建中湯を投与したところ, 腹部症状は改善し, 腹水が徐々に減少し, 腹部超音波検査でも消失し, 利尿剤も中止することができた。大建中湯による腹水消失の報告は調査した範囲ではみられず, 興味ある症例と考えられ報告した。漢方では患者の訴える症状や所見を注意深く観察し処方を決めていくことが重要と思われた。
著者
盛岡 頼子 佐藤 弘 代田 文彦 山内 浩
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.845-849, 1999-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

肝硬変による腹水の治療は困難なものが多いが, 腹部症状を目標に大建中湯を用いて腹水が消失した症例を経験した。症例は67歳, 女性, 胃癌手術の際にC型慢性肝炎が発見され, 胃癌の術後より腹水が出現し, 利尿剤を投与されたが, 腹水貯留は著明で, 腹壁瘢痕ヘルニアのため2回手術が行なわれた。開腹時の肉眼所見では肝硬変像を呈していた。食欲不振, 易疲労が改善しないため, 漢方外来を受診した。補中益気湯, 五苓散, 小建中湯などを投与したが, 効果はみられなかった。しかし腹部の冷え, 腹鳴を目標に大建中湯を投与したところ, 腹部症状は改善し, 腹水が徐々に減少し, 腹部超音波検査でも消失し, 利尿剤も中止することができた。大建中湯による腹水消失の報告は調査した範囲ではみられず, 興味ある症例と考えられ報告した。漢方では患者の訴える症状や所見を注意深く観察し処方を決めていくことが重要と思われた。
著者
木田 光広 長谷川 力也 松本 高明 三島 孝仁 金子 亨 徳永 周子 山内 浩史 奥脇 興介 宮澤 志朗 岩井 知久 竹澤 三代子 菊地 秀彦 渡辺 摩也 今泉 弘 小泉 和三郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.3, pp.456-463, 2015-03-05 (Released:2015-03-05)
参考文献数
26
被引用文献数
1

胆嚢腺筋症は,1960年にJutrasによりRASの増殖とそれにともなう胆嚢壁の肥厚を引きおこす病態として報告され,武藤らにより胆嚢壁1 cm以内にRASが5個以上存在し,壁が3 mm以上に肥厚したものと定義された.病変の広がりにより胆嚢全体に瀰漫性に存在するびまん型(G型)diffuse type,胆嚢頸部や体部あるいは両方にまたがり輪状に存在し,胆嚢を2つに分節する分節型(S型)segmental type,胆嚢底部に限局的に存在する底部型(F型)fundal typeの3つに分類される.画像診断では胆嚢癌との鑑別が重要で,胆嚢腺筋症は胆嚢壁の肥厚と,拡張したRASが診断の決め手であり,簡便な腹部超音波検査でスクリーニングされ,診断能の高い検査は超音波内視鏡(EUS)とMRIである.胆嚢腺筋症は,40~60歳代の男性に多く診断される.胆嚢癌との関係は疑われているがコンセンサスは得られていない現状では,定期的な経過観察が必要と思われる.
著者
土屋 雅春 石井 裕正 宮本 京 荒井 正夫 奥野 府夫 山内 浩 海老原 洋子 高木 俊和 神谷 知至 陶山 匡一郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1606-1613, 1980-12-25 (Released:2010-01-19)
参考文献数
13
被引用文献数
2

肝細胞固有の機能の一つとして重要視されている糖新生能を,糖原性アミノ酸であるL-Alanine (以下Ala)を負荷したときの血糖上昇度および糖代謝調節諸因子の動態を観察することにより判定し,本検査の肝細胞予備能判定法としての有用性につき検討した.対象は慶大内科において確診した肝硬変症17例(代償期8例,非代償期9例)および健常対照例6例の計23例である.15時間絶食後に10% Ala溶液300mlを30分間で静注し経時的に180分まで血糖, IRI,乳酸,アラニン,IRG値を測定した.Ala負荷後,対照群では,点滴終了直後に約10mg/dlの血糖上昇を認め,以後速やかに下降したが肝硬変代償期群では血糖上昇度は7mg/dlと低下傾向をみたが有意差はなかった.これに対して非代償期群では血糖上昇度は全くみられず,むしろ低血糖傾向すら示した.この非代償期群ではAla負荷後の血中乳酸・アラニン値も停滞しAlaの利用障害が示唆された.Ala負荷後血糖上昇のみられなかった群の予後は不良であり,本試験は肝細胞予備能判定の手段として有用であることが示唆された.