著者
金井 隆典 渡辺 守 日比 紀文
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.39-45, 2002 (Released:2003-01-28)
参考文献数
34

最近,潰瘍性大腸炎とクローン病の分子免疫学的な病態メカニズムが徐々に明らかにされるにつれ,従来の治療法とは異なった,より病態に特異的な治療法,サイトカインや免疫担当細胞に着目した治療法が開発,研究されるようになった.特に,抗TNF抗体によるクローン病治療に代表されるように,実際の臨床現場に応用され,優れた成績が報告されつつある.潰瘍性大腸炎とクローン病といった生涯にわたり治療を余儀なくされる疾患に対して,副作用が問題となる長期副腎皮質ステロイド投与に替わる,より効果的な治療法の開発は本病が若年で発症することを考え合わせ,社会的にも重要な問題である.免疫学の進歩の恩恵を受け,数年後の炎症性腸疾患治療は従来とは全く異なった新たな局面からの治療法が開発されることも考えられている.本稿では,現在までに明らかとされた炎症性腸疾患の免疫学的病態と,サイトカインに関連した知見に基づいた治療法の開発状況について概説した.
著者
小林 拓 日比 紀文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.5-11, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
13
被引用文献数
4

炎症性腸疾患とは通常潰瘍性大腸炎とCrohn病を指す.いまだ根本原因は解明されていないが,近年の研究の成果により,遺伝的素因,環境因子,免疫学的異常が絡み合って発症すると考えられている.わが国でも患者数は増加の一途を辿っており,潰瘍性大腸炎は9万人超,Crohn病も2万人超が罹患している.若年者が多いことから,患者本人だけでなく社会的損失も見逃すことはできず,今後さらなる病態解明,治療の進歩が待たれる.
著者
金井 隆典 松岡 克善 久松 理一 岩男 泰 緒方 晴彦 日比 紀文
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.109, no.3, pp.364-369, 2012 (Released:2012-03-05)
参考文献数
20

インフリキシマブ治療はクローン病治療に革命をもたらしたといっても過言ではない.しかし,治療経過中に効果が減弱するいわゆる二次無効について国内外で活発に議論がなされている.本邦でも,2011年,インフリキシマブの10mg/kgへの増量が承認され,二次無効症例に対して直接的な対処が可能になった.しかし,10mg/kg増量ですべての二次無効症例が再び8週間隔の維持治療で寛解を維持できるまで効果が回復するとは限らない.また,本邦では2番目に登場したアダリムマブとの治療優先に関する議論,アダリムマブ増量の議論,さらには本邦オリジナルな白血球除去療法,栄養療法との併用など,長期の寛解維持を達成させるための適切な薬剤選択,適切な増量のタイミングを明らかにすることが重要である.
著者
原 歩 吉岡 政洋 伊藤 貴 西澤 雅彦 市川 雅 高橋 重人 緋田 めぐみ 竹森 政樹 石原 直毅 日比 紀文
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.1379-1383, 2001-12-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
20

症例は71歳,女性.他院での種々の検査の結果,特発性再発性アフタ性口内炎と診断されていた.本症例は約2年6カ月の間,再発するアフタ性口内炎に対して副腎皮質ホルモンの投与を受けていた.著者らは本症例のアフタ再発時にマレイン酸イルソグラジンを投与した.アフタは1週間で消失し,継続投与にて1年6カ月の間,アフタは再発していない.本症例はアフタ性口内炎に対するマレイン酸イルソグラジンの有効性を示唆した.
著者
藤井 効 石井 裕正 日比 紀文 奥野 府夫 水野 嘉夫 土屋 雅春
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.901-911, 1981-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
105

今回,著者らは低血糖発作を反復して死亡した原発性肝癌2症例を経験した.症例1は62歳の男性で,就寝後の発汗と体重減少を呈し,肝腫大と空腹時低血糖を認め,精査の結果,両葉にわたる原発性肝癌と診断され,数ヵ月の経過にて死亡した.症例2は57歳の女性で,肝腫大を主訴に入院精査し,原発性肝癌と診断され,肝腫大の増強と共に低血糖昏睡を反復しつつ比較的早期に死亡した.両症例とも癌組織中のIRI, ILA活性は陰性であった.原発性肝癌に伴う低血糖の本邦報告例は,1979年までに著者らの調べた範囲では112例あったが,成因に関してはまだ定説は認められていない.著者らの経験した2症例は,それぞれMacFadzeanの提唱するtype A, Bの低血糖症に相当すると考えられ,低血糖発生機序について一元的には説明し得ないと考えられた.
著者
鎌田 信彦 日比 紀文
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.133, no.4, pp.186-189, 2009 (Released:2009-04-14)
参考文献数
12

消化管は腸内細菌との共生関係にある特殊な臓器であり,他の組織とは異なり,常に抑制性の免疫が優位になっている.近年,この腸管特異的抑制性免疫システムにおいて,腸管マクロファージ(Mφ)が重要な役割を担っていることが明らかになってきた.一方で,腸管Mφの抑制能の破綻は腸内細菌に対する過剰な免疫応答を惹起し,炎症性腸疾患のような腸管慢性炎症の引き金となる.著者らは,クローン病の腸管粘膜において自然免疫関連受容体であるCD14を高発現した特殊なMφを同定した.本細胞は腸内細菌刺激により過剰なIL-23産生することで,腸管T細胞の過剰な活性化を誘導することが明らかになった.さらにIFN-γは腸管Mφの分化に影響を及ぼし,IFN-γ存在下で分化誘導されたMφはIL-23高産生炎症性Mφとなる.その結果,異常分化を遂げた腸管MφはIL-23を介してさらにIFN-γ産生を亢進さる.このように,クローン病腸管粘膜局所では,腸管Mφを中心とし構築された炎症性フィードバックサイクルが病態形成に深く関与していると考えられる.

1 0 0 0 OA 2. Crohn病

著者
日比 紀文 岩男 泰 細田 泰雄 渡辺 守 土屋 雅春
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.663-668, 1993-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

Crohn病の病因はいまだ不明で,遺伝的素因,感染,食事因子,血流障害,免疫学的異常といった観点から研究がなされてきた.特に,単球・マクロファージ系細胞の機能異常および管腔より侵入した外来抗原に対する免疫反応の異常が,肉芽腫や潰瘍,瘻孔などの病変を形成するという考えが有力となっている.初期治療として栄養療法が有用であるが,再燃や進展を防ぐには,免疫学的異常をふまえた適切な免疫統御療法が必要となる.
著者
碓井 真吾 中村 公子 齋藤 義正 山岸 由幸 海老沼 浩利 鈴木 秀和 今枝 博之 橋本 志歩 金 善惠 峰岸 一博 中塚 誠之 橋本 統 緒方 晴彦 齋藤 英胤 日比 紀文
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.56-57, 2010-12-10 (Released:2013-07-25)
参考文献数
3

A 34-years-old woman, who had received Kasai operation due to congenital bile duct atresia at the age of 0, was pointed out esophageal varices and liver cirrhosis at one year and a half before pregnancy. At 25 weeks pregnancy, the esophageal varices was ruptured and she received endoscopic variceal ligation after emergent admission. Although the variceal bleeding was well controlled, the fetus grew up slowly and its growth arrest was recognized by ultrasound examination at 29 weeks pregnancy. Caesarean section was performed and a boy of 842g was delivered. Genital bleeding, however, continued postoperatively because of poor uterine contraction, and a large amount of blood transfusion was necessary. Both of uterine arterial embolization was performed by interventional radiology and she was discharged on the postoperative 15th day. The newborn grew up and was also discharged on the 92nd day of his birth.
著者
鈴木 秀和 西澤 俊宏 日比 紀文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.63-69, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
33

機能性ディスペプシア(FD)では,器質的疾患がないにもかかわらず,食後の胃もたれ,早期飽満感,心窩部痛,心窩部灼熱感などの症状を呈する.FDの原因には,胃の運動機能異常・内臓知覚過敏・心理社会的因子などが想定されている.Rome III基準では,FDはさらに,食後の胃もたれや早期飽満感を呈する食後愁訴症候群(PDS)と心窩部痛や心窩部灼熱感を呈する心窩部痛症候群(EPS)の2つの症候群に亜分類される.なお,H. pylori陽性例に対しては,特にアジア諸国では,H. pylori感染症として除菌療法をファーストチョイスとすべきであるというコンセンサスが優勢である.
著者
阿部 正紀 半田 宏 日比 紀文
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

1.粒径を制御したフェライト・ナノビーズの開発:10-100nmの範囲で粒径を制御したFeフェライト(Fe_3O_4-γFe_2O_3固溶体)ナノ微粒子を作製する共沈法、部分酸化法、種成長法を開発した。2.ポリマー被覆ポリマー被覆フェライト・ナノビーズの開発:フェライト・ナノ微粒子を、たんぱく質の非特異的吸着が少ないポリGMAで被覆する共重合法および、乳化剤を用いない重合法を開発した。3.ポリマー被覆Feナノビーズの開発:フェライトより2倍も強い磁化を持つ金属Fe微粒子(粒径7-20nm)をポリGMAで被覆して、バイオスクリーニングに適した磁性ビーズを作製した。4.バイオスクリーニングによる分析の応用展開:ポリGMA被覆フェライト・ナノビーズ表面に、抗ガンや、タグ付きプロテインGを含む組み替えたんぱく質などを固定し、それらと相補的に結合するレセプターや抗体を高効率で単離することによって、我々のビーズが高速・高収率バイオスクリーニングに適している事を示した。5.ホール・バイオセンシングによる診断への応用展開:ポリGMA被覆フェライト・ナノビーズ表面にNA単鎖を固定し、これをホールセンサー表面に固定した相補的DNA単鎖と結合させて検出し、我々のビーズがDNA診断に活用できる事を示した。6.MRI造影剤による診断への応用展開:フェライト・ナノ粒子表面を多彩に修飾・加工する技術を開発した。その結果、粒径が約20nmで、表面が特定組み換えたんぱく質で被覆された新たなMRI造影剤候補物質を開発した。7.抗ガン磁気ハイパーサーミアへの応用展開:フェライト粒子を用いて、大腸癌細胞を非侵性の周波数180Hzの交流磁界によって誘導加熱してその殺傷効果を確認し、非侵性抗がんハイパーサーミアへの応用の可能性があることを明らかにした。